Project/Area Number |
22H00281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 28:Nano/micro science and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 正輝 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (40362628)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,860,000 (Direct Cost: ¥32,200,000、Indirect Cost: ¥9,660,000)
Fiscal Year 2024: ¥12,870,000 (Direct Cost: ¥9,900,000、Indirect Cost: ¥2,970,000)
Fiscal Year 2023: ¥12,870,000 (Direct Cost: ¥9,900,000、Indirect Cost: ¥2,970,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,120,000 (Direct Cost: ¥12,400,000、Indirect Cost: ¥3,720,000)
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Keywords | 量子干渉 / 1分子識別 / DNA / トンネル電流 / 量子コンピュータ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、電極―1分子―電極構造を用いて、量子ゲートによる量子計算を用いた量子干渉1分子識別法を開発し、電子的な電極―分子間相互作用と電流経路の量子干渉を同時に解明する。量子干渉1分子識別法は、1分子コンダクタンスを、量子コンピュータで高速・高精度に解析することを可能にするため、生物、医科学、および創薬に革命的なインパクトを与える高精度・高速な化学修飾ゲノム解析法の基盤技術を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
1分子内におけるプロトンの量子干渉効果を調べるため、まず、プロトンの付加・脱離に伴う1分子コンダクタンスの変化を調べた。具体的には、水酸基、カルボン酸、およびアミノ基を持つL-ドーパと、水酸基とアミン基を持つドーパミンを計測対象とした。これらの分子は、pHにより、プロトンの付加・脱離を制御することが可能である。pH=7.6で、機械的破断接合法を用いて、L-ドーパとドーパミンを計測したところ、スパイク状の電流―時間波形が得られた。最大電流値のヒストグラムから、ともに、最頻値が19pAであった。電流―時間波形の機械学習を行っても、識別精度は57%であった。pH=3では、L-ドーパとドーパミンの最頻電流値は、それぞれ、29pAと16pAであった。得られた電流―時間波形の機械学習から、識別精度が向上し、86%となった。量子化学計算の結果、プロトン付加により、L-ドーパのHOMOのエネルギーが高くなり、ドーパミンのHOMOのエネルギーが低くなることが示唆された。電極―分子間相互作用の大きさが同程度であると仮定すると、1分子コンダクタンスの変化は、HOMOのエネルギー変化が原因である考えられる。この結果は、プロトンの付加・脱離により、1分子コンダクタンスが制御されることを示している。 プロトンの量子干渉が生じる場合、プロトンの付加・脱離による1分子コンダクタンス状態は確率的に観察され、一義的に決定されないと考えられる。そのような状態では、プロトン付加体、または脱離体のみを単離して計測することが不可能となり、単離できない2種類の分子を識別する手法が必要である。そこで、2種類の分子の異なる混合比における波形を学習して、2種類の分子を識別する機械学習法を導入した。グアノシンとチミジンの混合溶液に適用した結果、2種類の分子の高精度識別に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子内プロトン移動を想定して、プトロンの付加・脱離における1分子コンダクタンスの違いを識別できることを実証した。しかし、プロトンの量子干渉効果が分子内で生じる場合、異なる1分子コンダクタンス状態が単離されることはなく、2つの状態が確率的に存在することになる。一方、これまでの機械学習は、純粋なAとBの分子の電流―時間波形を計測して学習するため、2種類の分子は単離されなければならなかった。決定できるのは2種類の分子の存在比であり、混合状態の波形を用いて、2種類の分子の波形を識別する手法の開発が課題であった。本年度は、新たな機械学習を導入することで、異なる混合状態のサンプル計測から、2種類の分子を識別する手法の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究で、プロトン付加・脱離に伴い、1分子コンダクタンスが変化することを実験とシミレーションの両面から実証した。また、単離できないと予測されるプロトン付加位置が異なる2種の分子を識別する機械学習法の実装に成功した。次年度は、分子内でプトロン付加位置の異なる2種の分子が存在するpH条件下、1分子計測を行い、昨年度、実装した機械学習法を用いて、2種分子の識別と、2種分子の存在比を求める定量解析法を確立する。さらに、pHと分子濃度を変化させて、2種分子の識別と定量解析を行い、プロトン付加・脱離反応速度の導出を行う。1分子計測系は、1nm以下のナノギャップ電極間に形成される強電場環境にあり、電極先端は1原子状態であるため、バルクとは異なる反応が生じると期待される。特に、プトロン付加・脱離反応のポテンシャル障壁をトンネルするプロセスの可能性を、量子化学計算を用いて詳細に検討する。
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