Project/Area Number |
22H00312
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 康裕 東京工業大学, 理学院, 教授 (60213708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水瀬 賢太 北里大学, 理学部, 講師 (70613157)
中村 雅明 東京工業大学, 理学院, 助教 (90909384)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,380,000 (Direct Cost: ¥32,600,000、Indirect Cost: ¥9,780,000)
Fiscal Year 2024: ¥10,010,000 (Direct Cost: ¥7,700,000、Indirect Cost: ¥2,310,000)
Fiscal Year 2023: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
Fiscal Year 2022: ¥14,560,000 (Direct Cost: ¥11,200,000、Indirect Cost: ¥3,360,000)
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Keywords | 分子分光 / フェムト秒化学 / 振動量子波束 / 大振幅振動 / 異性化反応 |
Outline of Research at the Start |
電子基底状態での単分子異性化に着目して、反応座標に直接相関する大振幅振動についての量子波束を精密に制御して生成し、その時間発展を詳細に観測する「大振幅振動量子波束の造形学」の構築を目指す。始状態を厳密に選択した上で、高強度極短パルス光やマイクロ波を用いたコヒーレントカップリングにより、高度に制御された大振幅振動波束生成を実現する。その上で、時間分解イオン画像観測により振動波束の時空間発展を直接イメージングするとともに、量子状態選択的なプローブによる振動波束分光により反応障壁近傍のエネルギー準位構造を詳細に特定し、「形を変えつつある分子の姿」を捉えるという化学者の究極目標に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の本年度は、以下の成果があった。 1)インパルシブ励起によれば、単一の極短パルス光との相互作用によっても多段のラマン過程が実現され、通常は実現が困難な量子数変化が大きな励起も可能である。そのためにダブルチャープパルスを用いたインパルシブラマン励起法を開発し、一酸化窒素分子の回転準位間の遷移に適用した。最低準位J = 1/2から、J = 3/2, 5/2に対して90%を超える分布移動を実現した。さらに高い回転状態への選択的励起も可能であることを実証した。 2)量子準位選択的なプローブによる振動波束分光により、ビフェニル誘導体における大振幅なねじれ振動の観測と制御を実現した。振動量子波束の時間発展に対する分子回転の効果について理論定式化を行い、実測結果を良く再現することを確認した。また、長時間の時間発展計測を行い、その結果をフーリエ変換することによって高い周波数分解能でねじれ振動準位を決定した。 3)2つの大振幅ねじれ振動モードを持つジフェニルメタンについて、量子準位選択的なプローブによる振動波束分光を行った。励起パルス対間隔を調整することによって、特定のねじれ振動モードのみを励起可能であることを実証した。 4)量子準位選択的なプローブによる振動波束分光ならびに2色のナノ秒レーザーによる誘導放出分光を併用して、ベンゼン-メタン錯体における分子間振動の観測を行った。電子基底状態における6つの分子間振動準位の特定を実現できた。さらに、分子間力に対する多自由度ポテンシャルを解析的に表現する新規なモデルを開発し、高精度の量子化学計算の結果をフィットすることにより、モデルポテンシャルを構築した。このモデルポテンシャルに対する振動エネルギー準位を数値的に求めて実験結果と比較することにより、実測のバンドの帰属を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に記載した通り、 1)ダブルチャープパルスを用いたインパルシブラマン励起法を開発し、高い状態選択性を持った回転励起を実現できた、 2)ビフェニル誘導体、ジフェニルメタン、ベンゼン-メタン錯体などを対象として、量子準位選択的なプローブによる振動波束分光により大振幅振動の実時間観測と制御を実現できた、 3)分子間力に対する多自由度ポテンシャルを解析的に表現する新規なモデルを開発し、実験結果と比較して実測の分子間振動バンドの帰属を実現した、 という順調な成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ダブルチャープパルスを用いたインパルシブラマン励起法を大振幅振動へ適用する。対象分子系としては、豊富な実験データの蓄積があるビフェニル誘導体を考えている。 2)回転量子波束の詳細な可視化に威力を発揮してきている時間分解クーロン爆発イメージングを、振動波束の時空間発展の直接イメージングに展開する。すでに予備的な結果が得られているN2の2量体について研究を継続し、分子間振動量子波束の実時空間追跡を実現する。さらに、N2-Arのような異なる分子種から構成される2量体へと対象を拡大し、本手法の有効性を検証する。 3)量子準位選択的なプローブによる振動波束分光、ならびに、2色のナノ秒レーザーによる誘導放出分光を用いて、分子錯体における分子間振動の実験的観測を行う。ベンゼン-メタン錯体に対する研究を継続し、より高エネルギーの振動準位の検出を実現する。その上で、実験データを直接フィットすることにより、分子間ポテンシャルを決定する。また、ベンゼンと他の小分子との錯体へと研究を展開する。 4)多数の回転準位に分布していると、観測される波束干渉信号は不均一広がりの効果によって早い減衰を示す。この効果は、分子の配向分布を能動的に制御することによって抑制が可能であることが、昨年度の研究により明らかになった。本年度は、極短パルスによる分子配向制御により実際に波束信号の減衰を抑制し、エネルギー領域での高い分解能を実現することに取り組む。
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