Project/Area Number |
22H00329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 35:Polymers, organic materials, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陣内 浩司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20303935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 晃鏡 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60357803)
佐藤 浩太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70377810)
千賀 亮典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80713221)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥43,160,000 (Direct Cost: ¥33,200,000、Indirect Cost: ¥9,960,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥11,960,000 (Direct Cost: ¥9,200,000、Indirect Cost: ¥2,760,000)
Fiscal Year 2022: ¥22,100,000 (Direct Cost: ¥17,000,000、Indirect Cost: ¥5,100,000)
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Keywords | 高分子物性 / 電子顕微鏡 / 一本鎖の直接観察 / 高分子一本鎖観察 / 高分解能電子顕微鏡観察 / カーボンナノチューブ / 高分子鎖の組成・ブロック性 / 高分子物理 |
Outline of Research at the Start |
単分子の構造・性質を知ることは、広範なサイエンスの基礎である。単量体(モノマー)が多数連結した高分子においても、高分子一本鎖の形態・柔軟性(剛直性)・共重合組成・モノマーの連鎖性などの一次構造が、材料の様々な性質を支配する重要な因子であることは間違いない。多数の高分子鎖が複雑な相互作用の上に形成する凝集体(構造)の物性論を論じるためには、まず、高分子一本鎖を精確に規定する必要がある。 そこで、本研究では、先端の電子顕微鏡の物理と高分子化学を融合させ、高分子一本鎖の原子・分子レベルで直接可視化を実現することで、これまで高分子科学分野に欠けていた単分子の科学という視点での学問体系の構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の研究実施計画の大きな柱は、前年度に達成した「カーボンナノチューブ(CNT)への高分子の確実な導入とTEMによる形態観察の基礎確立」に基づいて、東工大グループで合成したカーボンナノチューブ(CNT)内部の高分子の高分解能透過電子顕微鏡観察を引き続き行った。まず、令和4年度に問題となったロータリーポンプの油による試料の汚損について、ポンプの改良を行い、その結果、汚損が生じないことを確認した。また、ハロゲンをマーカーとしたハロゲン化高分子の観察では、電子エネルギー損失分光法(EELS)による元素分析によって、ターゲットとなるハロゲン原子の存在を確認した。さらに、CNTへの導入を行うために高分子に導入しているフラーレン(C60)分子についても、内殻励起損失スペクトルの微細構造を検討し、その構造安定性について確認した。他方、CとHのみから構成される高分子については、高分子に起因するEELSスペクトルがCNTのそれと重畳し高分子からのシグナルの同定が困難となる可能性があることがわかったため、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を用いてCNTと同様の分散・高分子の内包が可能かどうか検討を行った。 また、合成面では、令和4年度に引き続き、原子移動ラジカル重合(ATRP)とクリック反応の組み合わせを用いて、片末端および両末端C60導入高分子の合成を行った。特にモノマーとして、クロロスチレンを用いた高分子に注力して検討した。また、制御型ラジカル重合(RAFT)による片末端C60高分子の合成に成功し、分子量制御について多少課題はあるもののポリスチレン(PS)やケイ素を有するPSの合成にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では予定している3年間の研究期間で、(i) カーボンナノチューブ(CNT)への高分子の確実な導入と透過型電子顕微鏡(TEM)による形態観察の基礎確立、(ii) フラーレン(C60)末端各種共重合体の精密合成とTEMによる一本鎖の組成・ブロック性の観察、の2項目の検討を行う。 研究第2年目である今年度は、前年度に引き続き(i)を進めながら、この項目を進める過程で生じた問題を解決した。まず、前年度に発覚したロータリーポンプの油による試料の汚損については、ポンプを改良することで解決を見た。次に、CNTがTEM用グリッド上で凝集しやすくTEM観察に適した視野を見つけることが困難という問題については、分散剤として無機塩(炭酸アンモニウム)を用いることでCNTの分散を改善することができ、結果的にCNTのTEM観察が容易となった。また、CとHのみから構成される高分子について、高分子の電子エネルギー損失分光法(EELS)スペクトルがCNTのそれと重畳しシグナルの同定が困難となることが実験的に示された。そのため、CNTの代わりに窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を用いて高分子内包実験を行ったところ、BNNTにおいても高分子が内包できるという予備的結果を得た。 合成面では、原子移動ラジカル重合(ATRP)とクリック反応を組み合わせ、片末端および両末端フラーレン導入高分子の合成、特にクロロスチレンを用いた高分子に成功した。これまでの末端へのC60の導入が定量的に行えなかった原因が、エステル含有フラーレンの純度であると考え、無置換C60を原料としたアルキン含有フラーレンの新たな合成法についても検討した。また、制御型ラジカル重合(RAFT)によるケイ素を含むC60末端ポリスチレンの合成も成功し、次年度に予定しているC60末端ブロック共重合体の合成への足がかりを作った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では予定している3年間の研究期間で、(i) カーボンナノチューブ(CNT)への高分子の確実な導入と透過型電子顕微鏡(TEM)による形態観察の基礎確立、(ii) フラーレン(C60)末端各種共重合体の精密合成とTEMによる一本鎖の組成・ブロック性の観察、の2項目の検討を行う。 研究第1年目と第2年目は、上記(i)について取り組み、東工大(合成)、東北大(統括)、産総研(高分解能観察)各グループの間で、(1)高分子合成、(2)高分子一本鎖のCNTへの導入、(3)数百本あるCNTの中から高分子を含有したもののスクリーニングによる最適観察場所の抽出、(4)スクリーニングされたCNTを高分解能透過型電子顕微鏡(高分解能TEM)で詳細観察、という一連の連携手順を確立した。また、CNTの(グリッド上での)分散状態の改善、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)への高分子の内包に関する予備実験、などについて検討を行ってきた。合成面については、C60を複数(両末端)に付加した高分子、CやH以外の元素を含む末端C60修飾高分子などについて、重合法を開発しながら合成してきた。C60をもつブロック共重合体の合成についても予備検討を進めた。 来年度は、当科学研究費の最終年度であることから、これまでの知見を最大限に活かして、複数個のC60を導入し窒素など電子損失エネルギー分光(EELS)で位置同定を行いやすい元素を含む高分子鎖の合成とCNTやBNNTへの内包を進め、高分子一本鎖の直接観察を実現する。また、その結果を基に、高分子科学分野での単分子の科学という視点での学問体系の構築への可能性について総括する。
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