Project/Area Number |
22H00443
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 48:Biomedical structure and function and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 和彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00250738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 浩貴 東北大学, 大学病院, 講師 (50801677)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2024: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
Fiscal Year 2023: ¥13,390,000 (Direct Cost: ¥10,300,000、Indirect Cost: ¥3,090,000)
Fiscal Year 2022: ¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
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Keywords | 膵臓癌 / 転移 / 上皮間葉転換 / 鉄 / BACH1 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、鉄に応答し鉄を制御する転写因子BACH1が膵臓癌細胞の上皮間葉転換と転移を促進すること、そして鉄代謝に関わる多彩な遺伝子の転写を抑制することに着目し、「BACH1が鉄代謝系を介して癌転移を促進する仕組みの全体像とその病理的意義を解明する」ことを目的とする。項目1ではBACH1-鉄制御系が膵臓癌細胞でモバイル鉄上昇を担うことを明らかにする。項目2では、転移に寄与する鉄応答遺伝子や鉄結合タンパク質の同定も含めて解明する。項目3ではBACH1を標的とする新しい治療法治療戦略の開発を試みる。そして癌における鉄の機能を鉄結合タンパク質の機能として理解し、鉄腫瘍生物学という概念を作る。
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Outline of Annual Research Achievements |
BACH1の発現を操作する実験系としてAIDを用いる系を予定したが、Tet repressorを使う系が順調に進んだことから、これを用いた実験系を優先的に進めた。線維芽細胞株にてBACH1を誘導発現できる系を開発した。この実験をBACH1ノックアウト細胞を用いて実施したところ、BACH1再発現により効率的にフェロトーシスが誘導されることが判明した。この実験系を用いることで、フェロトーシスが細胞間で伝播するという自身らによる論文報告の再現性を確認することができた。さらに、フェロトーシス時には細胞外に細胞老化や増殖などを制御する活性を有する物質が分泌されることを見いだし、その候補因子の1つとして増殖因子の機能解析を進めた。個体レベルではフェロトーシス分泌成分が老化形質を抑制すること、早老マウスの寿命延長に作用することなど、興味深い知見を得た。一方、BACH1自体の制御についても理解が進んだ。タンパク質キナーゼTBK1がBACH1をリン酸化し分解を促進すること、その結果、鉄関連遺伝子群の発現が誘導されることが判明した。このTBK1の作用はそのリン酸化活性に依存したものと依存しないものとがあり、リン酸化活性に依存した分解促進はプロテアソームにもリソソームにも依存しないのに対して、リン酸化活性に依存しない分解促進はプロテアソームとリソソームによることが判明した。BACH1と鉄と増殖の関係について、ある種の癌細胞でBACH1をノックダウンすると増殖が低下し細胞死が生じること、この時、遊離鉄が低下し、ミトコンドリア電子伝達系の活性低下、リソソームの機能障害が生じることを見いだした。一方膵臓癌では、BACH1ノックダウンで鉄が低下し、これが接着分子の発現上昇を引き起こすことを見いだした。さらに、B細胞でもBACH1が鉄代謝を制御することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BACH1発現をドキシサイクリンで制御できる細胞系を確立したが、これはフェロトーシス誘導剤を使うことなくフェロトーシスを誘導できる数少ないモデル系になることを実証した。さらに、このモデル系を用いてフェロトーシスの細胞間伝播現象を確立することができた。また、この時、フェロトーシスを誘導する過酸化脂質だけでなく、細胞増殖促進、細胞老化抑制に作用する分子群が分泌されること、これはマウス個体レベルでも抗老化、寿命延長に作用することを示すことができた。新しいBACH1制御系として、タンパク質キナーゼTBK1がそのリン酸化酵素活性依存的、非依存的という2つの異なる仕組みでBACH1の分解を促すことを見いだし、その下流では鉄代謝が制御されることも見いだした。TBK1は自然免疫系の重要なシグナル伝達因子であることから、自然免疫応答の中で鉄代謝が制御される可能性が浮かび上がってきた。このように当初予想していなかった新しい研究領域も拓かれつつあり、さらなる発展が期待される。がん細胞における鉄代謝制御の重要性についても複数の癌種で研究が進展した。さらに、BACH1やその関連因子BACH2による鉄代謝と関連代謝系の制御が免疫応答に重要であることを示唆する知見を得ることができた。また、膵臓癌のフェロトーシス感受性に関する共同研究を進め、脂肪酸の中でもリノール酸やリノレン酸が効率よくフェロトーシスを誘導すること、担癌モデルマウスでも一定の治療効果を示すことを見いだし、論文発表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、以下の研究を進める。 項目1 BACH1発現誘導系をBACH1ノックアウト線維芽細胞や膵臓癌細胞株へ導入し安定発現細胞株を作成した。これら細胞株におけるBACH1標的遺伝子の発現、鉄代謝の変化、鉄依存性細胞死フェロトーシスの変化を比較する。 項目2 遊離鉄(mobile Fe)も含めて、BACH1ノックアウトが鉄含量におよぼす影響をICP-MSを用いて定量し、Fe代謝変動を確定する。BACH1ノックダウン膵臓癌細胞にて鉄代謝に関わることが予想される遺伝子(前年度までに候補を抽出済み)のノックダウンを行い機能を評価する。さらに、BACH1による鉄代謝制御と細胞増殖の関係について、その機能的相互作用の全体像を理解するために、全遺伝子ノックアウトライブラリースクリーニングを行い、BACH1ノックアウトと合成致死をもたらす遺伝子を同定する。B細胞でもBACH1による鉄代謝制御が免疫応答に重要であることを示す知見を得たことから、B細胞におけるBACH1の機能についても、癌細胞での知見を参照しながら研究を進める。これらの結果をとりまとめ、複数の論文発表を目指す。 項目3 共同研究先で開発されたBACH1阻害剤の誘導剤の評価を進める。
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