Project/Area Number |
22H00455
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 50:Oncology and related fields
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西川 博嘉 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10444431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
設楽 紘平 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (20730419)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,640,000 (Direct Cost: ¥32,800,000、Indirect Cost: ¥9,840,000)
Fiscal Year 2024: ¥11,310,000 (Direct Cost: ¥8,700,000、Indirect Cost: ¥2,610,000)
Fiscal Year 2023: ¥14,040,000 (Direct Cost: ¥10,800,000、Indirect Cost: ¥3,240,000)
Fiscal Year 2022: ¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫寛容 / 免疫監視 / 制御性T細胞 / 空間的解析 |
Outline of Research at the Start |
がん細胞は免疫系の免疫監視を潜り抜けて発がんに至る。その過程で免疫監視が免疫寛容に陥るが、がん免疫療法は人為的な免疫監視の再起動が可能であることを明らかにした。本研究では、免疫寛容と免疫監視の調節の本態を明らかにして免疫学の長年の課題である免疫寛容と免疫監視の制御機構の解明につなげる。がん患者の遺伝学的多様性、がん細胞の多様性に加えてがん局所の多様性も検討し、生体における1細胞の分子発現および機能変化から組織内での相互作用まで位置情報を含めた空間的マルチスケールで解析を進め、免疫寛容と免疫監視の制御機構を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん抗原に対する免疫寛容状態から免疫監視が再起動される機序の本態解明を進めている。特に免疫細胞と標的細胞(がん細胞)が直接相互作用するがん組織の微小環境に焦点を当てて検討を進めた。免疫寛容に重要な免疫抑制細胞である制御性T細胞は、多様ながん種のがん組織の微小環境で、がん細胞に多数含まれる自己抗原(制御性T細胞は自己抗原を高親和性のT細胞受容体で認識している)に暴露される。これにより活性化、分化し、免疫抑制活性が高まることを明らかにした。具体的には、抗原未感作のナイーブな制御性T細胞が、末梢循環からがん組織内へ移行する過程で活性化する時間的な変化を複数の肺がん患者の末梢血、肺正常組織、肺腫瘍組織を収集して制御性T細胞を抽出し、一細胞レベルで分子発現およびエピゲノム制御の変化について解析した。末梢血中のナイーブ制御性T細胞、末梢血中で抗原により感作された活性化制御性T細胞、がん組織の微小環境に存在する活性化制御性T細胞は、それぞれ異なる特徴的な遺伝子発現プロファイルを示した。特にがん組織に浸潤していた活性化制御性T細胞は、CTLA-4、ICOS、EBI3などの制御性T細胞活性化に関わることが報告されている遺伝子を発現亢進していることが示された。またこれらの分化を調節するキーとなる転写因子を解析し、BATFがキーとなる転写因子であることを解明した。マウスモデルにおいてBATFの分子発現を制御性T細胞で選択的に欠損させると、制御性T細胞ががん組織に浸潤、活性化できないことからがん抗原に対する免疫監視が継続し、腫瘍増殖が抑制されることを明らかにした。 以上より、免疫寛容に重要な働きをする制御性T細胞の活性化機構から免疫寛容調節の一端を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成にむけて,令和4年度に,がん組織の微小環境でがん抗原に対する免疫監視を免疫寛容状態にする上で重要な働きをしている制御性T細胞の活性化の分子機構を解明した。これまで制御性T細胞の活性化には、数々の転写因子の関わりが報告されてきたが、それらの階層性を持った動作機序を明らかにしたことで、がん抗原特異的CD8陽性T細胞をはじめとする抗腫瘍免疫応答が免疫寛容に陥る過程のメカニズムの一端が解明された。今後の展開として、同定されたBATFがどのようにして他の転写因子を階層性を持って作動させるのかの機序解明が重要となるが、そこで重要となるがん患者検体の集積も順調であるとともに、解明に向けた研究機器、手技も確立されている。 現在まで多数の制御性T細胞標的治療の可能性が検討されてきたが、その特異性の問題等から臨床応用には大きな壁が存在したが、我々の検討により新規制御性T細胞標的治療法開発につながる可能性がある。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画で予定していた制御性T細胞の網羅的な分子発現解析および時間変化の解析から制御性T細胞の活性化のキーとなる転写因子BATFの同定に至った。今後は「達成度」にも記載した様に、BATFがどのようにして他の転写因子を階層性を持って作動させるのかの機序解明について研究を進める。この点において、がん患者検体の集積も研究分担者との連携で十分に得られている。さらに、様々ながん免疫療法を受けた患者の治療前後の検体の収集についてもすでに開始しており、免疫監視と免疫寛容の時間的な変化についての解析も進展することが期待される。特に、令和4年度は制御性T細胞側からの解析を進めたが、エフェクター側で免疫寛容に陥っているCD8陽性T細胞側の解析も進めることで、免疫監視と免疫寛容の調節機構の本態解明を達成できると考えられる。 さらにすでにbatf遺伝子を制御性T細胞のみで選択的に欠損したマウスモデルも確立していることから、がん組織のがん抗原特異的CD8陽性T細胞ががん組織の微小環境、所属リンパ節、脾臓などでどの様な状況にあるか、またその際にPD-1阻害剤やCTLA-4阻害剤による介入によりそれがどの様に変化するかを検討する。ここで空間的な解析も重要になるが、すでに病理切片を用いた多重免疫組織化学染色の手技も確立できており、さらに展開していくことが可能と考える。
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