Project/Area Number |
22H00456
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 50:Oncology and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 直樹 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80303816)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,380,000 (Direct Cost: ¥32,600,000、Indirect Cost: ¥9,780,000)
Fiscal Year 2024: ¥12,350,000 (Direct Cost: ¥9,500,000、Indirect Cost: ¥2,850,000)
Fiscal Year 2023: ¥13,910,000 (Direct Cost: ¥10,700,000、Indirect Cost: ¥3,210,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,120,000 (Direct Cost: ¥12,400,000、Indirect Cost: ¥3,720,000)
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Keywords | キナーゼ阻害薬 / アロステリック効果 / 逆説的活性化 / 細胞分子イメージング / 超解像顕微鏡 / 多重細胞マーカー検出 / 分子アンフォールディング / アクチンオリゴマー / 抗体改変技術 |
Outline of Research at the Start |
細胞内分子の動態をリアルタイムに捕捉する先行研究から、生体の分子や構造にはむやみに活性化しない抑制が強くかかっており、その解除ステップががん、神経変性、物理ストレス応答に大きな役割を果たすことがわかってきた。特に、分子標的薬であるキナーゼ阻害薬が標的キナーゼをコンフォメーション上活性化する機構の発見は、がんの薬剤抵抗性の克服に向けて新たに取り組むべき課題を提起している。本研究では、蛍光単分子イメージングや独自の多重超解像顕微鏡IRISを発展させ、生体の分子や細胞構造の崩れから再構成に至る過程を捕捉する手法を開拓し、分子病理の解明および治療薬の作用メカニズム解明と開発への応用を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
生体の多くの分子や構造には、やみくもに活性化しない強い抑制機構が存在し、その解除ががんや神経疾患の進行に重要なステップとなることがわかってきた。先行研究で複数のキナーゼ阻害薬がSrcの自己抑制構造を崩し、SRC遺伝子に薬剤抵抗性変異が入ると治療薬がかえってがんを増殖促進することを見い出している。本研究では、独自の高忠実多重超解像顕微鏡IRISと細胞蛍光単分子イメージングを活用し、薬剤や生体ストレスに反応した生体構造の崩壊・再編成過程を可視化し、病態における役割を解明し、治療薬シーズや診断装置の開発にも取り組む。 がん関連キナーゼの抑制解除については、Erk活性化を指標とする細胞アッセイに加え、キナーゼドメインの形状変化を検出する循環置換GFP挿入型蛍光プローブ開発に成功しつつある。間違った活性化を起こす阻害薬とキナーゼの組合せをスクリーニングする。細胞構造の崩れについては、アクチン線維崩壊でできるオリゴマーアクチンの形成と拡散について新知見を捉えつつある。また、接着斑分子タリンのアンフォールディンが細胞内外の力の伝達装置として必要かつ十分であることを示す成果を報告した。神経ストレスについては、当初予定していたコフィリンGFPのアクチンロッド形成による解析が、非ストレス下でも発現量に依存して強く出ることが判明したため、神経保護への関与が示唆されるアクチン重合因子INF2の単分子イメージングに切り換え研究を進めた。既に、ATP枯渇による応答が見られており、分単位の神経ストレス応答を解析する。多重超解像顕微鏡IRISについて大きな技術的進展があった。個別の可視化用プローブを既存のモノクローナル抗体・ナノボディから迅速に作製する手法を開発に成功し報告した。機器の改良も進めIRISの原理を利用した生体組織標本内で数10種類の細胞マーカーを自動撮像・検出可能な装置開発に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
独自の超解像顕微鏡IRISについて進展があった。既存の超解像を凌駕する多重高精細解析を実現するIRISであるが、個別の可視化プローブ作製が困難であった。モノクローナル抗体・ナノボディを独自の戦略で改良し、高い成功率でプローブに変換可能な手法を開発報告した(Cell Rep. Meth. 2022等)。IRISプローブライブラリーが現在50種近くに拡張し、特にがんや免疫、神経系細胞の分類や機能変化を捉えるためのプローブを増やしつつある。加えて、生体組織標本内で数10種類の細胞マーカーを同時検出する自動化された解析装置の社会実装に向け、予備データ収集が進んでいる。キナーゼ阻害薬によるアロステリックな標的キナーゼ活性化については、循環置換GFPを組み込んだ新規プローブ開発に一定の成功が得られた。インビトロでの大規模スクリーニング用のアッセイに改良予定である。細胞構造の崩壊過程については、細胞内仮足における速いアクチン脱重合に続いて生成されると考えられる中間体であるアクチンオリゴマーの生成の過程や細胞内挙動を解析し、その拡散や移動に関する新知見が得られ、細胞構造改変における生理的意義およびメカニズムを精査中である。さらに、葉状仮足のアクチン求心性流動と接着斑分子動態を単分子イメージングで比較解析し、外力によって引き伸ばされる接着分子タリンが細胞運動力を伝達する、タンパク質のアンフォールディングの新しい生物学的役割を明らかにし論文として報告した。さらに別の接着分子ビンキュリンの細胞外力による分子レベルの制御機構を単分子イメージングで解明しつつある。近年注目されるATP枯渇の細胞応答について、神経ストレス時の保護作用が知られるアクチン重合因子INF2について、細胞内単分子イメージングによって急性のストレス応答が捕捉可能であることを示す予備データが得らつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
キナーゼ阻害薬とアロステリック制御キナーゼとの組合せをスクリーニングするための循環置換GFP挿入コンストラクト構築に成功しており、新たな阻害薬によるキナーゼ下流シグナルの逆説的活性化例の検索を進める。また、アロステリック制御が分子の局在や動態の変化から捕捉できない受容体型チロシンキナーゼでも、同じ戦略のコンストラクトでアロステリック阻害薬とその逆説的活性化作用を検出できるか挑む。細胞構造の崩れについては、細胞内外からの物理ストレスの伝播様式をアクチン、フォルミンタンパク質、接着斑や浸潤突起のタンパク質の蛍光単分子イメージングによって可視化解析する。アクチン線維崩壊後にできるオリゴマーの形成過程とそのラメリポディア内での細胞前方への拡散移動を捉えつつあり、機能的意義の解明を進める。細胞接着での力学伝播について、分子ストレッチが伝達に必要であることが判明したタリンの知見を拡張し、力の感知の性質についてもビンキュリンとの会合を指標に細胞内での制御メカニズムを解明する。神経については、コフィリンでなくフォルミンファミリーの1つINF2に対象を切換え、単分子可視化で急性ストレスシグナルを解析する。加えて、本年度は独自の多重超解像顕微鏡IRISの応用拡張に注力する。前年度発表した既存のモノクローナル抗体・ナノボディからの迅速プローブ開発を応用し、IRISで可視化できる対象分子を多数増やす。生体標本の多重染色超解像による先導的な構造学的解析を遂行し、次世代レベルの生体構造の知見を得ることに挑む。同時に、IRISに最適化された顕微鏡制御や自動還流の追加による装置改良に努め、IRISの原理を応用する細胞・生体組織の固定標本内で数10種類もの細胞マーカーを単一切片で検出可能な装置の開発も進め、網羅的トランスクリプトーム解析の知見を保管固定標本内で補完する、次世代の分子診断への応用を目指す。
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