Project/Area Number |
22H00491
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 58:Society medicine, nursing, and related fields
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
浅井 鉄夫 岐阜大学, 大学院連合獣医学研究科, 教授 (10509764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 匡子 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (10466914)
蒔田 浩平 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (40588133)
森部 絢嗣 岐阜大学, 社会システム経営学環, 准教授 (50456620)
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (60639540)
玉村 雪乃 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 主任研究員 (90584384)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,600,000 (Direct Cost: ¥32,000,000、Indirect Cost: ¥9,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,490,000 (Direct Cost: ¥7,300,000、Indirect Cost: ¥2,190,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,010,000 (Direct Cost: ¥7,700,000、Indirect Cost: ¥2,310,000)
Fiscal Year 2022: ¥13,390,000 (Direct Cost: ¥10,300,000、Indirect Cost: ¥3,090,000)
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Keywords | 薬剤耐性 / 野生動物 / 環境 / 危険度分析 / セファロスポリン耐性 / キノロン耐性 / 大腸菌 / ワンヘルス / 社会活動 / 疫学 |
Outline of Research at the Start |
薬剤耐性菌の問題はワンヘルスアプローチに基づいて、教育・企業・行政が医療・獣医療の現場と連携して解決すべき身近な最重要課題である。野生動物や環境においても、薬剤耐性菌の蓄積が進行し、放置すれば将来に深刻な問題となる。これまで、医療で重要な抗菌薬に対する耐性菌(キノロン剤や第3世代セファロスポリン)が野生動物の地域コミュニティに蔓延することを明らかにした。本研究では、野生動物コミュニティに分布する薬剤耐性菌のゲノム解析と細菌学的評価により薬剤耐性菌の蔓延に関連する要因を特定し、人に対する毒性や定着性により薬剤耐性菌の危険度を評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌が高率に分布する野生動物コミュニティを特定するため、DHL培地と抗菌剤含有DHL培地(ナリジクス酸(NA)またはセフォタキシム(CTX))を用いて継続調査した。2023年度に収集した糞便637検体(シカ347検体、カワウ 110検体、キタキツネ 99検体、他14種62検体)中437検体から大腸菌933株を分離し、CTX含有培地では28検体から48株、NA含有培地では31検体53株を分離した。昨年度DHL培地で分離した株を含めて1,888株の薬剤感受性試験により、テトラサイクリン耐性が最も高く2.5%に認められ、アンピシリン耐性(1.6%)、クロラムフェニコール耐性(1.3%)、ST合剤耐性(1.1%)の順であった。その他の薬剤に対する耐性は1%未満であった。一方、抗菌剤含有DHL培地での分離頻度が増加した要因として、カワウからのCTX耐性大腸菌およびNA耐性大腸菌の分離率の上昇が示唆された。カワウの成績を除くとCTX耐性およびNA耐性大腸菌が分離された検体は1.9%(両耐性10/527)で、これまで同様、国内の野生動物は選択培地を用いた調査でも医療で重要な抗菌薬(キノロン剤や第3世代セファロスポリン)に対する耐性菌の分布は低率であった。 これまでの調査で、医療分野でパンデミッククローンとして注目されるST131 O25/H4大腸菌が国内の野生動物から分離され、アクセサリーゲノム解析により、人由来株と関連が深いことを明らかにした(Sato et al,2024)。奈良公園に生息するシカで種内伝播する耐性菌は周辺地域に拡散しないことが示唆された(Ikushima et al., 2023)。このように、野生動物への薬剤耐性菌の伝播は保菌動物の生息域と薬剤耐性菌の性状から人の社会活動に由来することが示唆されることから、詳細な伝播経路(方法)を調査していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生動物コミュニティに分布する薬剤耐性菌のゲノム解析と細菌学的評価により薬剤耐性菌の蔓延に関連する要因を特定し、人に対する毒性や定着性により薬剤耐性菌の危険度を評価することを目的としている。薬剤耐性菌を比較的高率に保菌する野生動物コミュニティとして奈良公園のシカ、金華山のイノシシ、宮島のシカに加え、千本松原のカワウを特定した。これまでの調査で、国内の野生動物から医療分野でパンデミッククローンとして注目されるST131 O25/H4大腸菌が分離されることを報告してきた。野生動物由来ST131株のゲノムデータを用いたアクセサリーゲノム解析により、人由来株と関連が深いことを明らかにした(Sato et al,2024)。奈良公園に生息するシカで医療上重要な抗菌薬に対する耐性菌が種内伝播するが、周辺地域に生息するシカには拡散しない限局的な分布であることを示唆した(Ikushima et al., 2023)。ESBL産生腸内細菌目細菌が分離された河川周辺に生息するヌートリアでは、腸内容物からESBL産生菌は分離されず、腸内細菌叢中の腸内細菌目細菌の割合が極めて低いことから、薬剤耐性腸内細菌目細菌を伝播する可能性は低いことを示唆した(Nakatsubo et al., 2023)。これらの成績をオープンアクセス誌に公表した。野生動物由来薬剤耐性菌の伝播シナリオに基づきフォルトツリーを作成し、リスク評価の準備を終えた。現在、広島県宮島(厳島)のシカにおける医療で重要な抗菌薬に対する耐性菌の分布要因について、作成したフォルトツリーに基づき解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、野生動物コミュニティに分布する薬剤耐性菌のゲノム解析と細菌学的評価により薬剤耐性菌の蔓延に関連する要因を特定し、人に対する毒性や定着性により薬剤耐性菌の危険度を評価することを目的としている。これまでの研究で、野生動物への薬剤耐性菌の伝播に関して、宿主側の要因として雑食動物で見つかる傾向があるものの、キツネの糞便を用いた食性解析では植物食の傾向が強く、食物連鎖の地位に依存していない可能性が考えられる。また、草食動物である観光地のシカは餌付け等により人との関係が疑われている。このように、伝播要因については、生息地ごとに多様であると考え、多面的にアプローチして明らかにしていく計画である。 薬剤耐性菌が蔓延する野生動物コミュニティ(奈良公園と宮島のシカ、千本松原のカワウ)における伝播様式を解明するため、生態情報の収集と生息環境からの薬剤耐性菌の分離を行うと共に、野生動物由来薬剤耐性菌のゲノム解析と野生動物の食性解析を実施する。また、環境材料から分離した遺伝子型が共通の細菌株を選定して環境ストレスに対する抵抗性など細菌学的評価により自然界での維持様式を明らかにする。さらに、野生動物由来薬剤耐性菌の伝播シナリオに基づき作成したフォルトツリーを利用して、薬剤耐性プロファイルと病原因子プロファイルの評価を開始する。
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