Project/Area Number |
22H02027
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山口 祥一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60250239)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
|
Keywords | 水 / 表面 / 界面 / 和周波発生 / 振動分光 / HD-SFGスペクトル / アモルファス氷 / 水表面 / ラマンスペクトル / 氷 |
Outline of Research at the Start |
分子性物質の界面の研究は実験と理論の両面において近年急速に進展している.その研究対象のうち,とりわけ重要なものとして,水や氷の界面を挙げることができる.水と氷のバルクの構造と物性は長い間徹底的に研究され詳しく理解されているが,それと同じ水準にまで界面の研究を引き上げることは,基礎科学として極めて重要である.特に興味深い系として純物質の水のみから成る界面を取り上げる.純物質だけでも多種多様な界面が形成されることは水の特徴であり本質でもある.それらの界面に独自のレーザー分光法を適用し,理論との緊密な連携を通して,純水界面の構造とダイナミクスについて全く新しい知見を得る.
|
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は研究を順調に進めることができた.まず,自分の研究室内で Skinnerの量子古典混合アプローチによる水の凝縮相の振動スペクトルの理論計算を実施できるようになった.それによって論文3報を報告することができた.(1) アモルファス氷のラマンスペクトルの実験と計算 高密度および低密度アモルファス氷のラマンスペクトル測定をNIMSの鈴木芳治博士の研究室で行い,量子古典混合アプローチによる理論計算と比較した.計算は実験を非常によく再現し,伸縮振動の帰属について明快な結論を得た.(2) 水表面のHD-SFGスペクトルの実験と計算 水表面のHD-SFGスペクトルの同位体希釈依存性を測定し,その理論的な説明に世界で初めて成功した.より具体的には以下の通り.水面の2次非線形光学感受率(χ(2))スペクトルは,数十年前から議論されてきた問題である.我々は,χ(2)スペクトルの同位体希釈依存性を実験的に測定し,アーティファクトを差し引くという新しい発想で量子・古典混合アプローチを採用することにより,理論的に再現した.この理論的枠組みにより,水のOH伸縮振動スペクトルに及ぼす分子内,分子間,フェルミ共鳴結合の影響を,バルクだけでなく表面でも明らかにすることができた.(3) 氷VIのラマンスペクトルの実験と計算 水の高圧相である氷VIのラマンスペクトルを測定し,量子古典混合アプローチによる理論計算と比較した.計算は実験を非常によく再現し,伸縮振動の帰属について明快な結論を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は研究が順調に進みました。まず、自分の研究室でSkinnerの量子古典混合アプローチを用いた水の凝縮相の振動スペクトルの理論計算を実施できるようになりました。それにより、3つの論文を報告することができました。アモルファス氷のラマンスペクトルの実験と計算では,高密度および低密度アモルファス氷のラマンスペクトル測定をNIMSの鈴木芳治博士の研究室で行い、量子古典混合アプローチによる理論計算と比較しました。計算は実験を非常によく再現し、伸縮振動の帰属について明確な結論を得ました。水表面のHD-SFGスペクトルの実験と計算では水表面のHD-SFGスペクトルの同位体希釈依存性を測定し、その理論的な説明に世界で初めて成功しました。より具体的には、水面の2次非線形光学感受率(χ(2))スペクトルは、数十年前から議論されてきた問題でした。我々は、χ(2)スペクトルの同位体希釈依存性を実験的に測定し、新しい発想であるアーティファクトを差し引くことで量子・古典混合アプローチを採用し、理論的に再現しました。この理論的枠組みにより、水のOH伸縮振動スペクトルに及ぼす分子内、分子間、フェルミ共鳴結合の影響を、バルクだけでなく表面でも明らかにすることができました。氷VIのラマンスペクトルの実験と計算では水の高圧相である氷VIのラマンスペクトルを測定し、量子古典混合アプローチによる理論計算と比較しました。計算は実験を非常によく再現し、伸縮振動の帰属について明確な結論を得ました。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は量子古典混合アプローチによる水の凝縮相の振動スペクトルの理論計算をさらに推し進めたいと思います.量子・古典混合アプローチの鍵は,Skinnerグループが量子化学計算によってTIP4PやE3Bモデルに対して開発した分光マップにあります.なお,E3Bは,TIP4Pから分子形状や電荷分布を変えずに,三体相互作用を明示的に考慮した彼らのオリジナルモデルです.分光マップでは,OH伸縮周波数,双極子微分,位置・運動量演算子の行列要素と,関連するOH基の水素原子に周囲の分子から発生する静電場を関連付け,各時間ステップで振動ハミルトニアンを構築することができます.量子・古典混合アプローチは,一般的なTIP4P/2005やTIP4P/Iceモデルで検討されたことはありません.なぜならこれらのモデル用に調整された分光マップがまだ準備されていないためです.Skinnerグループが開発した分光マップにより,TIP4P/2005とTIP4P/IceのMD軌道でもOH-stretch振動スペクトルを計算することができ,TIP4Pよりもさらに実験データを再現できることを報告したいと考えてます.TIP4P,TIP4P/2005,TIP4P/Iceを用いて液体および固体の水の単相MDシミュレーションを行いたいと思います.そして,各MD軌道に同じ分光マップを適用して,液体のIRスペクトル,ラマンスペクトル,SFGスペクトル,結晶のラマンスペクトルを算出します.液体の水の振動スペクトルはTIP4P/2005を用いることで最もよく再現され,結晶相はTIP4P/Iceを用いることで最も優れた結果が得られることが予想されます.このことは,TIP4P用に設計された分光マップが,力場パラメータの違いにもかかわらず,TIP4Pに似たモデルにも移植可能であることを意味しています.
|
Report
(1 results)
Research Products
(5 results)