Project/Area Number |
22H03233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56050:Otorhinolaryngology-related
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 晃治 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40750138)
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 客員講師 (50505592)
中村 圭吾 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50848380)
川北 憲人 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50915121)
新井 宏幸 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (60816627)
湯田 厚司 滋賀医科大学, 医学部, 客員教授 (80293778)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80567347)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,540,000 (Direct Cost: ¥5,800,000、Indirect Cost: ¥1,740,000)
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Keywords | 舌下免疫療法 / スギ・ヒノキ花粉症 / 抗原親和性 / 制御性T細胞 / アポトーシス / スギ花粉症 / IL-10 / IL-35 / メモリーT細胞 / ダニアレルギー性鼻炎 / 末梢血単核球サブセット / 抗原特異的免疫グロブリン |
Outline of Research at the Start |
舌下免疫療法は近年急速に普及しているが、その作用機序については不明な点が多く、スギ花粉とダニ以外に対応する舌下免疫療法が開発されていないこと、効果の乏しい例が10-30%に認められること、など多くの課題が残されている。 本研究では、スギ花粉とダニ舌下免疫療法の治療前と治療後1, 2, 3年の同一患者血液を利用して、その有効例・無効例における、抗原特異的免疫グロブリンや血清中のサイトカインの変化、さらに、抗原提示細胞やTh1,Th2,Th17細胞、濾胞性T細胞、メモリーT細胞、B細胞、制御性T細胞、制御性B細胞など、末梢血単核球サブセットの機能や変化を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スギ花粉とダニ舌下免疫療法の治療前と治療後1, 2, 3年の患者血液を利用して、その有効例・無効例における、抗原特異的免疫グロブリンとその抗原親和性の変化、血清中のサイトカインの変化、さらに末梢血単核球の各種の抗原に対する反応性の変化について検討するとともに、抗原提示細胞やTh1,Th2,Th17細胞、濾胞性T細胞、メモリーT細胞、B細胞、制御性T細胞、制御性B細胞などの機能や変化を明らかにした。 その結果、①スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用として、1年後には非特異的に末梢血単核球からのIL-5, IL-17産生が抑制されること、一方でCry j 1抗原特異的にIL-10産生が増加すること、抗原特異的なIgE抗体とIgG4抗体が産生されるが、ヒノキ花粉との交差反応性が認められること、IL-5産生の減少とIL-10産生の増加、さらに特異的IgG4抗体の上昇が臨床症状の改善と相関することなどを明らかにした。 また、②スギ花粉舌下免疫療法1年後には抑制系サイトカインである血清中のIL-35値が上昇し、IL-35を発現する制御性T・B細胞が増加すること、血清IL-35値が臨床症状の改善と相関すること、③舌下免疫療法の有効例と無効例に分けてメモリーCD4陽性T細胞を分離し、RNAシークエンスによる網羅的解析を行ったところ、有効例でアポトーシス抑制遺伝子DPF2の発現が低下し、舌下免疫療法後には制御性B細胞が誘導されて、メモリーT細胞のアポトーシスを促進すること(Arai H, Clin Exp Allergy 2022)、④抗原特異的IgE抗体の抗原親和性を測定し、舌下免疫療法後には特異的IgE抗体が一時的に増加するが、抗原親和性が低下した抗体が産生されるために、マスト細胞からの脱顆粒が抑制されること、などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、以下の多くの研究成果を得ている。 (1)スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用として、抗原刺激による末梢血単核球からのIL-5産生抑制など非特異的な免疫抑制作用、抗原刺激によるIL-10産生などの抗原特異的反応、ヒノキ花粉特異的抗体の変動にみられる、交差反応性による作用が混在していることを明らかにし、ヒノキ花粉による舌下免疫療法の必要性が明確になった。 (2)スギ花粉舌下免疫療法の作用機序として、制御性T細胞、制御性B細胞から産生される制御系サイトカインIL-35の重要性を明らかにし、舌下免疫療法後には抗原刺激によって、スギ花粉飛散期に血清IL-35値が上昇し、臨床症状の改善に寄与することを明らかにした。 (3)スギ花粉舌下免疫療法の有効例と無効例に分けてメモリーCD4陽性T細胞を分離し、RNAシークエンスによる網羅的解析を行ったところ、有効例でアポトーシス抑制遺伝子DPF2の発現が低下していたことから、メモリーT細胞のアポトーシスについて検討した。舌下免疫療法後にはFas ligandを発現する制御性B細胞が誘導されて、メモリーT細胞に発現するFasに作用して、アポトーシスを誘導する結果、メモリーT細胞のアポトーシスが生じていた。このため舌下免疫治療法は長期にわたって効果が持続すると考えられる(Arai H, Clin Exp Allergy 2022)。 (4)舌下免疫療法1年後には、抗原特異的IgE抗体が一過性に増加するが、臨床症状は改善する。特異的IgE抗体の抗原親和性を測定したところ、1年後には抗原親和性が低下した抗体が産生されるために、マスト細胞からの脱顆粒が抑制されて臨床症状が改善することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、①スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用、②スギ花粉舌下免疫療法1年後には制御系サイトカインIL-35の変化と臨床効果、③メモリーCD4陽性T細胞の機能変化、④抗原特異的IgE抗体の抗原親和性の変化などについて明らかにしてきた。 本年度は、上記の研究テーマをさらに追及して、①交差反応性のメカニズム、②その他制御系サイトカインの変動、③メモリーT細胞の機能変化のメカニズム、④低親和性抗体産生のメカニズムなどを、探索する。 その上で、舌下免疫療法後の末梢単核球サブセット(Th1, Th2, Th17細胞、濾胞性T細胞(Tfh細胞)、メモリーTh2細胞、B細胞、制御性T細胞(Tr1細胞, Foxp3陽性Treg, ST2陽性Treg)、制御性B細胞(BR1細胞)、1型、2型、3型自然リンパ球、NK細胞)の動態とその機能解析の研究をすすめ、また、制御系サイトカイン(IL-10, IL-27, IL-35)の動態と機能解析を行って、舌下免疫療法の作用機序を解明する。 これまで、舌下免疫療法の臨床効果を判断できるバイオマーカーの研究が数多く行われてきたが、有効なバイオマーカーは見つかっていない。おそらく治療開始前に判断できるバイオマーカーは見つからない可能性が高い。そこで、視点を変えて治療開始後早期に判断できるバイオマーカーの検討を行い、早期に臨床効果を判断して、舌下免疫療法の適応を判断できる体制の構築につなげたい。
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