Project/Area Number |
22H04916
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沈 建仁 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (60261161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (00593550)
長尾 遼 静岡大学, 農学部, 准教授 (30633961)
秋田 総理 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (50751418)
菅 倫寛 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (60634920)
山口 兆 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (80029537)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥627,640,000 (Direct Cost: ¥482,800,000、Indirect Cost: ¥144,840,000)
Fiscal Year 2024: ¥101,400,000 (Direct Cost: ¥78,000,000、Indirect Cost: ¥23,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥132,340,000 (Direct Cost: ¥101,800,000、Indirect Cost: ¥30,540,000)
Fiscal Year 2022: ¥191,100,000 (Direct Cost: ¥147,000,000、Indirect Cost: ¥44,100,000)
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Keywords | 光化学系II / 水分解反応 / 時分割X線結晶構造解析 / クライオ電顕構造解析 / 理論計算 / 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / エネルギー移動 / 高精度量子力学計算 / Coupled-Cluster (CC)計算 / 人工光合成 |
Outline of Research at the Start |
酸素発生型光合成における光誘導水分解・酸素発生反応の機構、及び光エネルギーの吸収・変換を担う各種生物由来光化学系I、光化学系IIと光捕集アンテナタンパク質の超分子複合体等の構造・機能・進化過程を解明する。水分解反応機構の解明では、X線自由電子レーザーを利用したポンプ-プローブ構造解析法を行い、各種変異体の構造・機能解析や理論計算の結果と組み合わせて、O-O結合の形成機構や水の進入経路、プロトンの排出経路を明らかにする。各種超分子複合体の構造解析では、クライオ電子顕微鏡を利用して構造未知の複合体の構造を解明する。得られた結果は、光エネルギーの高効率人工利用にも道を開くものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、光合成における光誘導水分解反応の機構と光エネルギーの高効率利用機構の解明である。光誘導水分解反応の機構解析では、時分割ポンプ-プローブシリアルフェムト秒X線結晶構造解析法(SFX法)を用いて、光化学系II(PSII)のマイクロ結晶に1または2閃光照射で得られたS2, S3中間状態の形成について、nsec-msecの時間範囲でデータを収集し、解析した。その結果、S3状態で新たな酸素原子(O6)が挿入される前にMn4CaO5クラスター及びその周辺で様々な構造変化が起き、特にD1-Glu189近傍で新たな酸素原子(O6*)が出現し、それがO6の前駆体であることを発見した。これらの発見は、PSIIによる水分解・酸素発生反応の機構解明に重要な意味を持っている。それらの実験結果を検証するため、高精度量子化学計算を実施するための専用計算機システムを筑波大学計算科学研究センターに設置し、MnクラスターでのCoupled Cluster(CC)計算が実行できることを確認し、まずはS1状態の計算、大規模モデル、スピン状態の検討を行った。さらに基質である水の挿入経路、産物であるプロトンの排出経路に寄与する水素結合ネットワークを理論的に検討した。プロトンの排出経路を特定するため、D1タンパク質のアミノ酸置換体を作成し、それらが水分解反応の活性に対する影響を解析した。 光エネルギーの高効率利用機構の解明においては、クライオ電子顕微鏡を用いて灰色藻Cyanophora paradoxa由来光化学系I(PSI)四量体、始原的シアノバクテリアであるGloeobacter violaceusのPSI三量体構造及び珪藻由来PSII-FCPIIの高分解能構造等を解析した。また、光捕集アンテナでの励起エネルギー移動効率について、理論モデルを構築し、そのダイナミックス研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、水分解反応の機構解明に関しては、計画通りポンプ-プローブシリアルフェムト秒結晶構造解析法を用いてデータを収集し、解析して、それらを取りまとめて出版する準備ができた。理論計算では、専用計算機システムを設置し、Coupled Cluster法を用いた計算のための準備を進めた。また、アミノ酸置換体の作製・解析も計画通りに進めた。さらに光エネルギー高効率利用機構の解明では、異なる生物から異なるPSI複合体やPSII-FCPII複合体の構造を解析し、それらに関する理論計算の準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画通りに研究を進める予定です。まずPSIIの水分解反応機構の解析では、S1→S2、およびS2→S3遷移に伴う時間分割シリアルフェムト秒のデータの構造解析を終了させ、研究結果を発表する。また、ナノ秒以下の短い時間帯で、光照射により誘導される色素やタンパク質の構造変化を解析するため、時間分割ポンプ-プローブシリアルフェムト秒実験を行い、データを収集する。そして前年度に着手した、励起された状態のみを強調して可視化するための電子密度マップを計算する手法の開発を継続する。また、これまで解析したS1, S2, S3状態の構造について、専用計算機システムを利用してCoupled Cluster(CC)計算を系統的に実施し、それぞれの状態でのプロトン化状態、Mnのスピン状態について大規模モデルで定量的に評価する。さらに上記のCC計算結果を出来るだけ再現出来るようにDFT汎関数を改良し、PSIIの大きい(350原子以上)クラスターモデルのQM、QM/MM計算に適用する。また、クライオ電子顕微鏡を用いて収集したPSII二量体の高分解能データについては、電子線によるダメージの無い外挿マップの計算を終了させ、水素原子の有無を特定し、論文にまとめる。 光エネルギーの高効率利用機構解析については、様々な藻類の野生株および変異株から光化学系-集光性色素タンパク質超複合体を精製し、生化学および分光学的特性を明らかにすると同時に、得られた試料を用いて、クライオ電子顕微鏡単粒子構造解析により立体構造を明らかにする。得られた分子構造に基づき、それぞれの複合体における光捕集アンテナ色素から光化学系反応中心への光エネルギーの移動経路や強光条件に適応するための光エネルギー逸散機構、及び光合成生物の光捕集機構の進化を明らかにする。
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