Project/Area Number |
22H04943
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section B
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
坂下 健 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50435616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久世 正弘 東京工業大学, 理学院, 教授 (00225153)
中桐 洸太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10847247)
松原 綱之 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30724992)
市川 温子 東北大学, 理学研究科, 教授 (50353371)
木河 達也 京都大学, 理学研究科, 助教 (60823408)
小汐 由介 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (80292960)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥190,710,000 (Direct Cost: ¥146,700,000、Indirect Cost: ¥44,010,000)
Fiscal Year 2024: ¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2023: ¥47,970,000 (Direct Cost: ¥36,900,000、Indirect Cost: ¥11,070,000)
Fiscal Year 2022: ¥42,770,000 (Direct Cost: ¥32,900,000、Indirect Cost: ¥9,870,000)
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Keywords | ニュートリノ / 素粒子 / 宇宙 / 反粒子 / 物質反物質非対称 |
Outline of Research at the Start |
この宇宙の物質と反物質の非対称の謎を解く鍵は、ニュートリノにおける物質反物質対称性(CP対称性)の破れにあると考えられている。本研究では、加速器ニュートリノ振動実験T2Kにおいて、世界最高強度のニュートリノビームを生成し、捉えることが非常に難しいニュートリノを5%の精度で測定する方法を確立する。これにより、ニュートリノCP対称性が破れていることを信頼度99.7%以上で示し、世界初の発見を目指す。 また、高度化したT2K実験のデータを他のニュートリノ振動実験の測定結果と組み合わせて解析することで、ニュートリノの質量順序を決定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノビームの安定生成 : 次期ミューオンモニター素子として開発してきたEMTについて7個をミューオンモニターの場所に設置し、ニュートリノビーム運転時にデータを取得した。実際にミューオンビームプロファイルを測定することに成功した。 ハドロン生成の高精度測定 : 2022年夏にK中間子のデータ取得を目的とした新たなNA61/SHINE実験を行い、前回の実験の約15倍のデータ取得に成功した。低運動量の陽子やパイ中間子などハドロンビームラインの計画におけるビームモニタの開発では、シリコンストリップ検出器を用いたビーム位置の測定などを進めた。 ニュートリノ反応測定の高精度化 : 1cm^3の立方体型プラスチックシンチレータ約200万個からなるSuper-FGD検出器の建設、試運転を行った。読み出し装置の統合と試運転を経て、2023年11月からニュートリノビームを用いた検出器調整データの取得を行い、多数のニュートリノ反応事象候補を観測することに成功した。 水チェレンコフ検出器応答の精密測定 : 3インチPMTの性能評価試験とガドリニウ含有水に対応する純化装置の設計を進めた。また、東京工業大学で雇用したPD研究員を中心に、事象再構成アルゴリズムの開発を進めた。今後は実験開始に向けて水純化装置の建設とデータ解析の準備を進める。 CP対称性の破れの探索 : T2K実験のデータと、SK実験による大気ニュートリノ観測データを組み合わせた合同解析およびT2K実験と同じく加速器ニュートリノ振動実験である米国NOvA実験との合同解析を推し進めた。T2KとSKの合同解析の結果は、95%弱の確度でCP保存を棄却し、また90%の確度で質量順序が標準順序であることを示すものである。T2K実験と米国NOvA実験の合同解析結果は、逆質量順序を弱く示唆、逆質量順序ならばCP保存を3σの確度で棄却するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は2022年度後半からビーム運転を予定していたところ、J-PARC加速器の機器トラブル、2度のJ-PARCでの火災により本格的なビーム運転が2023年12月からとなり、おおよそ1年遅れた。一方で、ビーム運転再開後にビーム強度750kW以上の運転を達成しており、本研究期間内に1MW超えのビーム運転を達成する目標に変更はない。前置検出器に導入する新型検出器は応募時の研究計画でも、海外グループが担当しているTPCの開発・製造の遅れや、世界的な半導体不足に起因するSuperFGDの読み出しエレクトロニクスの生産の遅れにより、1年程度の遅れが生じた。それでも、2023年度の運転で多数のニュートリノ事象候補を観測することに成功し、十分な統計量のデータ取得が見込まれること、解析手法の開発は順調に進んでいることなどから、2026年度までにニュートリノ反応モデル起因の系統誤差を3%まで削減するという当初の目標に変更はない。水チェレンコフ検出器応答の精密測定では、当初2023年にビームテストを実施する計画であったが、WCTE実験の準備状況とCERNのビームスケジュールをもとに協議した結果、2024年10月にビームタイムが割り当てられている。これまでの研究により、今後のデータ取得とデータ解析に迅速に取り掛かる準備ができている。本研究で実施している課題の中で、J-PARCやCERNのビーム運転の遅れ以外の部分については、当初の計画のとおり研究を実施できており概ね順調に研究が進展できた。ニュートリノ振動の物理解析においても順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
世界最高強度ニュートリノビームの安定生成 : 陽子ビームプロファイルモニターの開発では、これまでに開発した残留ガス蛍光モニターをJ-PARCニュートリノビームラインの1次陽子ビームで性能評価を継続し、ビーム位置の測定性能等をまとめる。耐放射線性能をもつ新型のミューオンモニターでは、EMT素子を全数設置し、大強度ビーム下で使用可能なミューオンモニターとして運用を始める。 ハドロン生成の高精度測定 : 2022年に取得したデータ解析を進める。まず検出器較正を行ったのち、飛跡検出器におけるドリフト速度の決定、またエネルギー損失を用いた粒子識別の手法を確立する。並行して物理データの解析を行い、中性K中間子事象は今年度中に、荷電K中間子の解析は 2025年度中に完了し、その結果を用いたT2K フラックス不定性の見積もりを行う。 ニュートリノ-原子核反応測定の高精度化 : 2024年5月までに前置検出器のアップグレードのための残りの検出器を設置し、6月より本格的な物理データの取得を開始する。ニュートリノビームのデータ取得と並行して検出器の較正、性能評価や物理解析を進め、2025年度に最初のニュートリノ反応断面積測定の物理結果を出す。 ビームテストによる水チェレンコフ検出器応答の精密測定 : CERN WCTE実験の2024年10月からのビームタイムで、電子、ミューオン、パイオン、陽子などの荷電粒子をこれまでに設計・構築した水チェレンコフ検出器に照射して研究に必要なデータを取得する。引き続き、PD研究員が中心となり、研究協力者とも連携して研究を進めていく CP対称性の破れの探索 : 後置検出器スーパーカミオカンデ(SK)の検出器応答など各種系統誤差を改善しつつ2021年以降に取得したデータを加えた振動解析を進める。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A-: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress in research has been made on the whole though a part of it has been delayed.
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