Project/Area Number |
22H04993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section I
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小川 佳宏 九州大学, 医学研究院, 主幹教授 (70291424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 健史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (10432444)
馬場 崇 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40435524)
馬越 洋宜 九州大学, 医学研究院, 助教 (40741278)
小川 誠司 京都大学, 医学研究科, 教授 (60292900)
諸橋 憲一郎 九州大学, 医学研究院, 主幹教授 (30183114)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥194,610,000 (Direct Cost: ¥149,700,000、Indirect Cost: ¥44,910,000)
Fiscal Year 2024: ¥34,710,000 (Direct Cost: ¥26,700,000、Indirect Cost: ¥8,010,000)
Fiscal Year 2023: ¥34,710,000 (Direct Cost: ¥26,700,000、Indirect Cost: ¥8,010,000)
Fiscal Year 2022: ¥55,770,000 (Direct Cost: ¥42,900,000、Indirect Cost: ¥12,870,000)
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Keywords | 副腎 / 副腎腫瘍 / ステロイドミクス / 統合オミクス解析 / 機械学習 |
Outline of Research at the Start |
内分泌細胞は高度に分化した細胞群であるが、様々な環境要因により分化形質が変化し、腫瘍化すると腫瘍性増殖とホルモン産生能の有無を考慮する必要がある。副腎は整然とした皮質3層と発生起源が異なる髄質より構成される内分泌臓器であり、ストレス応答の司令塔として生体の恒常性維持に不可欠である。本研究は、加齢や慢性ストレスにより変容する副腎組織とその結果生じる副腎由来ホルモンの不均衡による破綻病態の統合的理解を目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
コルチゾール産生腫瘍(CPA)の前駆病変としてsteroids-producing nodule(SPN)の同定に世界に先駆けて成功した。SPNにおいてPKA経路を恒常的に活性化するGNAS変異が認められ、SPNの形成・維持にはPKA経路が関与することが明らかになった。SPNは束状層様構造と網状層様構造の2層構造を呈することが明らかになり、束状層様構造は強い細胞増殖活性を有すること、網状層様構造はアンドロゲン依存性の抗腫瘍効果を有することが示唆された。両者の相反する作用のバランスにより、CPAの腫瘍が生じることが明らかになった(eBioMedicine In press, 2024)。一方、CPAでは骨粗鬆症が高率に併存するが、腫瘍に由来する11-デオキシコルチコステロンの過剰状態と萎縮した付随副腎皮質に由来するアンドロゲン欠乏が骨粗鬆症リスクに関与することを見出した。特に、アンドロゲン代謝産物であるアンドロステロン・グルクロニドは網状層の活性を反映するため、副腎年齢(副腎老化)の指標となることが示唆された(eBioMedicine 95:104733, 2023)。アルドステロン産生腫瘍(APA)については、機械学習により新たなサブタイプを同定し、ステロイドプロファイルの相違と予後の関連を明らかにした(論文投稿中)。 空間トランスクリプトーム解析により、高齢者では副腎皮質3層の不連続化が生じ、球状層では Wnt/β-cateninシグナルの減弱、束状層では炎症・老化関連遺伝子の発現上昇とAP-1活性化が認められ、副腎皮質全層においてグルココルチコイド生合成にシフトすることが示唆された(論文投稿中)。 網羅的ステロイドミクス解析を含む生理活性脂質の一斉分析が可能な包括的分析系の構築に成功した(J. Lipid Res. 65:100492, 2024)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ストレス応答の司令塔である副腎を全身疾患の責任臓器として位置付け、様々な環境要因により変容する副腎組織の分子基盤とその結果生じる副腎由来ホルモンの不均衡による破綻病態の統合的理解を目指すものである。 2023年度には、2022年度のアルドステロン産生腫瘍(APA)の前駆病変とされるAPCCのシングルセルトランスクリプトーム解析に引き続き、コルチゾール産生腫瘍(CPA)の前駆病変としてSPNの同定に世界に先駆けて成功した。以上により、APAとCPAの2種類の副腎皮質腫瘍においては、正常副腎皮質組織がドライバー遺伝子変異を獲得し、前駆病変を経て発生することが示唆された。一方、空間トランスクリプトーム解析により、加齢により変容するヒトの副腎組織(副腎老化)の分子機構に関する基盤データを得ることができた。マウスを中心とした齧歯類とヒトの副腎皮質には著しい種属差があるため、本研究成果により、ヒトの副腎皮質3層構造の形成・維持機構と副腎皮質腫瘍の発生機構を理解する上で重要な基盤データを得ることができたと考えられる。 本研究を推進する上で不可欠な網羅的ステロイドミクス解析の開発に成功し、血液あるいは副腎皮質組織などの臨床検体の網羅的ステロイドミクス解析が可能になった。実際にCPAでは腫瘍部分と萎縮した非腫瘍部分に由来するステロイド中間代謝産物の不均衡が骨粗鬆症リスクに関与することを見出し、CPAにおけるホルモン産生の多様性と不均一性の分子機構とともに併存疾患としての骨粗鬆症の発症・親展における臨床的意義が明らかになった。 以上のように、加齢や慢性ストレスにより変容するヒトの副腎皮質組織に関する新しい知見と今後の研究基盤を得ることができ、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
A. 臨床症例・検体を用いる臨床研究 A-1 副腎組織の可逆的変化と腫瘍化に関する検討:副腎皮質の3層構造の加齢性変化におけるAP-1の機能的意義に焦点を当てる。APAの腫瘍発生過程において活性化される転写調節因子のエピゲノム制御を検討する。培養細胞実験により腫瘍化に関連する細胞内代謝経路を検討する。CPAの腫瘍発生機構として、SPNを対象としたscRNA-seq解析により、腫瘍細胞と免疫細胞・線維芽細胞などの細胞間相互作用を検討する。副腎髄質腫瘍については、レーザーマイクロダイセクション法による多部位サンプリングと網羅的遺伝子解析により、様々な進展段階の病変のクローン構造を比較検討する。 A-2 副腎腫瘍におけるホルモン産生の多様性・不均一性に関する検討:CPAについては、腫瘍組織におけるWnt/β-cateninシグナルの活性化とステロイド代謝産物の関連を検討する。APAについては、腫瘍微小環境におけるマクロファージと腫瘍細胞の細胞間相互作用とステロイド合成能や細胞増殖の関連を検討する。 A-3 副腎由来ホルモンの不均衡の病態生理的意義に関する検討:副腎腫瘍患者の血液検体の網羅的ステロイドミクス解析により、従来の分類にはないステロイドプロファイルを有する腫瘍群を見出し、腫瘍組織のデータも統合して副腎腫瘍を再分類する。健常者の網羅的ステロイドミクス解析を実施する。 B. 動物実験・培養実験による基礎研究 男性ホルモンがAd4BP/SF-1の遺伝子発現を抑制する分子機構を検討する。Ad4BP/SF-1の遺伝子発現に対する男性ホルモン作用を増強・阻害する低分子化合物を開発し、Ad4BP/SF-1によるエピゲノム制御機構を検討する。一方、DEX投与よる副腎萎縮における浸潤マクロファージの機能的意義を検討し、ACTHの同時投与による副腎萎縮の回復機構と予防法の開発を目指す。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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