Project/Area Number |
22H04997
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section I
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石川 文彦 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (30403918)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥168,480,000 (Direct Cost: ¥129,600,000、Indirect Cost: ¥38,880,000)
Fiscal Year 2024: ¥31,200,000 (Direct Cost: ¥24,000,000、Indirect Cost: ¥7,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥34,970,000 (Direct Cost: ¥26,900,000、Indirect Cost: ¥8,070,000)
Fiscal Year 2022: ¥39,910,000 (Direct Cost: ¥30,700,000、Indirect Cost: ¥9,210,000)
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Keywords | 白血病 / 個別医療 / 免疫細胞治療 / 免疫 / 分子標的 / 脂質 / エネルギー / 治療 |
Outline of Research at the Start |
血液がんとして知られる白血病には、白血病細胞が無秩序に増えることに加え、疾患から身を守るための「正常白血球=免疫」が減弱することが特徴である。さらに、骨の中で発生してがん細胞が増えきると、血液に乗って体中の骨へ浸潤する。 私たちは、患者細胞を用いることで白血病の生体内での振る舞いを再現する。正常から悪性へと変容する原因となる遺伝子異常をDNA解析で、変容した結果の遺伝子発現をRNA解析で、悪性の性質を維持するエネルギーを脂質解析で、患者ごとの特徴を捉える。患者体内に減弱化した免疫について、標的への結合、骨への集積、長期の機能という3つを備えるエンジニアリングを含め、白血病細胞の駆逐を実現する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現在の医療でも救命が困難な白血病患者検体を用いて、1.遺伝子の異常の中でも、特にTP53変異の治療抵抗性との関係を理解し、2.エネルギー産生の特徴から、その悪性度を維持している機構の一つを将来の治療に供すること、3.骨や脾臓と呼ばれる組織で白血病がいかなる振る舞いをしながら、正常な機能を失うかを捉える、3つを目的として研究を進めている。白血病の発生を抑制するべき白血球=免疫が損なわれ、数・質共に低下することを、白血病細胞や白血球1個ずつから遺伝子を取り出して解析する技術で、その証拠を得た。計測して捉えられたことを治療へ還元する取り組みを、患者病態を再現したモデルマウスで検証した。中でも、患者体内でその数と機能を喪失したT細胞を中心とした免疫細胞について、CD25を最初の標的として開始した免疫のエンジニアリングについては、CD96, CD7, CD180という3つの分子を次なる標的にできることが確認された。これらの異常タンパクは、どの遺伝子異常の場合に存在するかについては、DNAとRNAとタンパクを患者検体から抽出して、情報を結合/統合することができた。白血病を急性と慢性、骨髄性とリンパ性に大別するが、急性骨髄性のみならず、リンパ性や慢性の白血病にもこれらの標的が発生しており、広く白血病に使うことができる免疫治療として確立できる。エネルギー産生については、糖、アミノ酸、脂質のうち、脂質について、世界をリードする測定・解析技術を同じ施設の有田誠博士らが開発したことから、このシステムを用いて、92名の患者から得られた白血病の脂質を、12名の健常者検体を対照賭して測定した。その結果、リン脂質と呼ばれるタイプの脂質を多く作り出す白血病細胞が、特に炎症を引き起こすこと、また、救命が難しい白血病として知られるTP53という遺伝子に変異を持つ場合と相関があることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫細胞のengineeringと治療というでは、移植医療を受けた患者検体の細胞を解析したことで、白血病に対して免疫が勝つ時・負ける時の分岐点を見出せた。CD25という一つの治療標的に限らない、免疫が治療上成功するための発見であると評価を受けつつあるため、順調に進展していると自己評価した。また、CD96, CD7という次なる標的の発見に展開できてもいる。CD25については、タンパク質の構造が、白血病細胞と正常な免疫細胞で異なることもわかり、研究を後押ししている。 代謝の三要素の中で脂質に注目した白血病細胞の特徴についても、最新の解析法で白血病、炎症、治療抵抗性の3つをつなぐことができている。疾患を超えて、非常に多くの症例と判断できる計92症例の患者検体と12の正常血液・免疫細胞由来脂質を網羅的に解析した。また、多種類の白血病、急性の骨髄性、B細胞、T細胞白血病、慢性の骨髄性白血病という4つを評価することで、困難と考えてきた数十種類の脂肪の中でも、多価不飽和脂肪酸のリン脂質という脂質で白血病細胞の特徴を見出すことができたのは、2年間で順調な進捗にある。 TP53の遺伝子異常については、遺伝子からタンパク質を作らない部分の特徴も含めて研究を進められたのが進展の理由の一つである。生存の鍵を壊して白血病細胞を死滅させる方法については、上記同様、リンパ性白血病と慢性白血病まで含めてTP53の遺伝子異常を見つけており、白血病の一部にリン脂質の過剰産生と炎症の発生を通して治療抵抗性を獲得する結果が得られている。 研究課題を通して、組織、細胞、遺伝子という複数の階層をつなぎ合わせ、最終目標である白血病細胞を殺すという機能に結果が得られるように進められた。白血病の多様性と複雑さに迫り、同様の遺伝子異常を持つ固形癌にもアプローチできる結果と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
CD25を含め、白血病細胞の膜に存在する多くのタンパクは、何かしら正常の血液細胞にも存在することが多い。そのため、二つ、例えばCD33, CD25の両者を認識して初めて機能を発揮するような新しい細胞医療の調整を進め、次の2年間に完成させる。同時に、これまでに発見した、次なる標的分子についても、白血病細胞を殺す上での有効な細胞治療を確立して、実際の医療へ還元する準備を整える。 TP53という遺伝子異常、脂質のエネルギー代謝、いずれにおいても、リンパ性白血病にまで対象を拡大して、脂質については、エネルギーを遮断することで白血病細胞の治療をさらに有効にできるかの検討を加える。また、脂質はエネルギーのみならず、白血病細胞の構造やシグナルにも貢献している。脂質を作る酵素を遺伝子操作することにより白血病細胞の生死や増殖速度に影響があるかを評価する。長年、タンパクを標的に創薬が進められたが、タンパクを作らない遺伝子にも白血病細胞と正常細胞の違いを見出した。これらを編集することも可能なテクノロジーが次々と報告されていることから、多様な白血病患者細胞を用いて評価できる研究チームの強みを生かして、今後の研究をさらに発展させる。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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