Project/Area Number |
22K00033
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 幸男 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (70160075)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
|
Keywords | 問答論理学 / 問答意味論 / 問答語用論 / 認識論 / 科学哲学 / 問答推論 / 公理体系 / 実質推論 / 命題の合成 / デフレ的自由論 |
Outline of Research at the Start |
従来の哲学は、主張にばかり注目し、問いについてあまり考えてこなかった。しかし、認識は、問いを立てそれに答えることとして成立するのであり、学問の出発は、問いの設定にあると考える。そうすると、知識は、(命題としてではなく)問答関係として成立するのであり、真理とは、(命題の性質ではなく)問答関係の性質であると考え、知識の体系は、(命題の体系ではなく)問答の体系であると考えることになるだろう。科学理論における経験命題と理論命題の関係など種々の命題の関係を、「二重問答関係」という問答の入れ子関係を用いて分析できることを示したい。この「二重問答関係」を用いて「パラダイムの共約不可能性」を解明したい。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、主として次の3点に取り組んだ。 第一は、昨年日本フィヒテ協会で口頭発表したものに手を加えて論文「自由意志に対するスピノザの批判とフィヒテの擁護」『フィヒテ研究』31号、2023年11月, pp.5-19. pp. 5-19. (http://fichte-jp.org/2023FichteStudien31/04Irie.pdf)にまとめたことである。 第二は、認識が問いに答えることであるとすると、認識を論じるためには「問いに対する答えが真であるとはどういうことか」という問いに答えなければならないので、これに取り組んだ。その結果を短くまとめれば、<答えの真理性は、使用する語の意味(使用法)に依拠し、語の意味(使用法)の学習は、語の意味(使用法)の定義に依拠する。その定義は宣言発話であり、それ自体は真理値を持たないが、定義の後、同じ文の発話が反復され時、それは記述となり、その真理性は定義に依拠する>となる。 第三に行ったことは、上の真理性の説明は、全体論的意味論をとる推論的意味論と矛盾するように見えるかもしれないので、「実質推論」について再考し、矛盾しないことを明らかにした。<語と文の意味(使用法)の規定(定義)は、実質推論によって与えられ、実質推論の設定は問答によって行われること>を示した。まず、論理学の公理系における語と文の意味は、公理と推論規則によって与えることができること、そしてどのような公理と推論規則を設定するべきであるかは、問答関係のなかにすでに与えられていることを示した。(現在取り組んでいるのは、この実質推論の理解を、公理系を持つ特定科学や公理系を持たない特定科学や日常世界での言語使用に拡張することである。)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、特に、認識の最少単位が(命題ではなく)問答として成立することを証明した、言い換えると、命題の合成は、命題が問いに対する答となることによって成立することを証明した。これまで、知は命題形式で表現されるとされてきたが、厳密に言えば知は問答形式で表現されることになる。 「矛盾」は認識にとって重要な論理的関係の一つであるが、認識が(命題ではなく)問答として成立するならば、矛盾もまた命題の関係ではなく、同一の問いに対する答えとしての命題の関係として成立することになる。認識は互いに矛盾してはならず、矛盾する場合には、修正しなければならないのだが、そのような修正もまた、二つの命題が同一の問いに対する答えであることを前提条件とすることを明らかにした。この背景には、基本的な論理法則である同一律と矛盾律、基本的な推論規則である分離則(MP)が、問答関係のなかに暗黙的に含まれているということがある。 2023年度は、知が真であること、言い換えると問いに対する答えが真であるとは、どういうことかを考察し、<答えの真理性は、使用する語の意味(使用法)に依拠し、それは語の意味(使用法)の学習に依拠し、それはさらに語の意味(使用法)の定義に依拠すること、その定義は宣言発話であり、宣言発話それ自体は真理値を持たないが、定義の後、同じ文の発話が反復され時、それは真なる記述となること>を明らかにした。これを「真理の定義依拠説」と呼ぶことにした。この「真理の定義依拠説」が、<語の意味(使用法)は、実質推論によって与えられる>とみなすブランダムの「推論的意味論」と両立可能であることを明らかにした。 (これらの成果は『問答の理論哲学』(執筆中)としてまとめる予定であるが、ブログ「哲学の森」(https://irieyukio.net/blog/)にその都度発表している。)
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、認識の最小単位が(命題ではなく)問答として成立すること、真理を(命題の性質としてではなく)問答関係の性質として捉えること、科学研究における諸命題の関係を「二重問答関係」の関係として解明すること、パラダイムの共約不可能性がもたらす困難を「二重問答関係」の観点から解明すること、であった。 問答の観点からの「真理」概念の捉え直しについてはこの二年間取り組んできたが、「二重問答関係」の解明という課題がのこっている。「二重問答関係」というのは、<Q2を解くためにQ1を設定し、Q1の答えA1を得て、A1を前提にして、そこからQ2の答えA2を得る>という二つの問答の入れ子型の関係である(これを<Q2→Q1→A1→A2>と表記する)。 この二重問答関係を、日常的な事実認識の分析、科学研究における経験命題と理論命題の関係の分析、「パラダイムの共約不可能性」の分析に利用することが課題である。 「パラダイムの共約不可能性」については、この二年間「真理性」についての考察する中で、<問答関係に注目することによってそれをどうやって克服すべきか>ということだけでなく、むしろ<科学研究に自由度と多様性を与えるもの>として積極的にとらえたいと考えるようになった。パラダイムの共約不可能性に対するこの二つの方向をどのように関係づけるかを考えたい。
|