Project/Area Number |
22K00036
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 一馬 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 准教授 (70284015)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2026: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | 嘘をつく / 相手のためになる / パターナリズム / 合理性 / 自律 / 見え透いた嘘 / 主張 |
Outline of Research at the Start |
相手のためになると思いその相手に嘘をつくことは、「相手のためになることをする」という元々の意図にどれほど適うものだろうか。本研究は、嘘をつくことの正邪やパターナリズムの妥当性に関する従来の倫理学的な議論を参照しつつ、あくまでも「相手のために嘘をつくことの、行為主体にとっての合理性」に焦点を当て、上記の問いに答えを与えることを目的としている。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究実施の2年目として、2022年度に引き続き、嘘やパターナリズムに関する先行研究を収集し、そのうち主に「見え透いた嘘 bald-faced lie」の位置づけを巡る議論に関する文献を読み込んだ。 「見え透いた嘘」は相手を欺く意図を伴っていないとされ、それゆえ、嘘をつくことの定義が議論される際、「欺く意図の存在」を定義に含めるべきか否かを考察しようとする上で、中心的なトピックとなっている。 「見え透いた嘘は、そもそも嘘であるのか?」という問いの解明において重要な論点となるのが、「主張 assertion」概念である。嘘をつくときに人が何ごとかを主張しているということを論者たちは概ね認める。その上で、見え透いた嘘をつく人が(欺く意図を有していないけれども)何ごとかを主張していると言えるとすれば、その人はやはり嘘をついていることになるかもしれない。他方、見え透いた嘘によって人が何ら主張をしていないのだとすれば、その人はそもそも嘘をついておらず、したがって見え透いた嘘は実は嘘でないことになる。実際、従来の議論においても、「主張するとはどのような行為か?」という問いに何と答えるかが、二つの見解のうちいずれを取るかを大きく左右しているのであった。 主張の本性に関するこの問いの解明は、もちろん、「嘘をつくとはどのような行為か?」という問いの、またひいては「嘘をつくことはどのようないみで合理的(でない)か?」という(本研究のテーマと直結する)問いの解明につながるものである。主張という行為の特性が嘘をつくことの合理性(のなさ)にどのような内実を与えていると言えるかについて、従来の議論の内容を踏まえ、確認する必要があると考えるに至っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2023年度は当初、2022年度実施状況報告書「現在までの進捗状況」欄に記したように、欺こうとする意図を伴わない形で嘘をつく場合がある(つまり、見え透いた嘘は嘘の一種である)という見通しの下で作業を進め、その線で論文の作成に当たっていた。ところが、年度の後半に至って、この見通しの維持を困難にするように思われる先行研究に行き当たり、論文の方向性の再検討を余儀なくされた。結果として、2023年度中に論文を公にすることができなかった点は、計画実施の遅れであると言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの進捗状況」欄で触れた論文の方向性の再検討により、主張概念に着目することの重要性を確認することができた。執筆中の論文については、この点を踏まえ再構成し、年度内のできるだけ早いうちに、島根大学法文学部言語文化学科紀要『島大言語文化』への掲載を実現する。それと同時に、2023年度に予定していながら十分に進められたなかった「パターナリスティックな嘘と自律との関係」に関する先行研究の読み込みも、おこなっていく。そのために必要な時間の確保については、本務校における(教養教育科目の精選をねらいの一つとする)教育改革などによって可能である。
|