Project/Area Number |
22K00077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
村松 晋 聖学院大学, 人文学部, 教授 (40383301)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | キリスト教 / 神学 / 宗教学 / 思想史 / 日本近代史 / 近代の超克 日本基督教 / 桑田秀延 北森嘉蔵 有賀鐵太郎 松村克己 / 大木英夫 住谷一彦 井上洋治 遠藤周作 / 近代の超克 / 桑田秀延 北森嘉蔵 / 有賀鐵太郎 松村克己 |
Outline of Research at the Start |
アジア・太平洋戦争期の日本で展開された「日本的基督教」は、戦時体制への迎合と見なされてきたが、当時の日本を代表し戦後も活躍した神学者が積極的にかかわった以上、そこには同時代の神学者が主体的に参画するに足る関心が息づいていたと考えられる。そこで本研究では、「日本的基督教」の試みに含まれていた諸要素~日本人の生活世界に根ざしたキリスト教創出への志向や、西欧キリスト教の問題を乗り越えようとする意図等~を精査し、現代において共有可能な神学的可能性として摘出する。あわせて、「日本的基督教」を媒介に日本プロテスタント史における戦前・戦後の関係性を究明することで、戦後日本キリスト教思想史への視角を更新する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、研究の目的・研究計画に基づいて以下6点を明らかにした。 ①桑田秀延の「日本基督教」は、庶民の生活世界とは無縁な「国体」という観念を、「日本の伝統」と措定して立論し、この点で致命的な弱さを有するが、1960年代の「キリスト教土着化論」を先取りする一面を携えていた。②北森嘉蔵の「日本基督教」も、「日本的思惟」の絶対化への志向から自由ではないが、西欧キリスト教の直面した「アポリア」解決を画策したその関心は、「現代プロテスタント思想史の西田ルネサンスと呼んでもよいような状況」を支える課題意識と通底するといってよい。③有賀鐵太郎の「日本基督教」も、「国体」への強いとらわれが見られるが、しかしその言説は、キリスト教の多元的な発現形態を承認し、各々を対等に評価しようとする開かれた視点を含んでおり、「正統」とされた西欧キリスト教をはじめ、既存のキリスト教を特定の歴史的文脈の所産と見なす「アジア神学」にも接続し得る先駆性を有していた。④戦後初期における関根正雄の「無教会」論は、「無教会」=「日本的基督教」との課題設定が象徴するように、戦前の「日本的基督教」を意識しその克服を目指したものであった。その主眼は「信仰のみ」に自閉することを戒め、現実世界に働きかけようとする社会的な射程と実践性にあり、キリスト者固有の「社会的実践」を志向するものだった。⑤南原繁の思想の根幹をなす「日本的キリスト教」を、彼が体現した信仰共同体(日曜家庭集会および白雨会)から問い直し、そのあり方を、明治初期プロテスタントにおける教会形成の伝統ならびに、庶民の生活世界で親しまれた「講」に接続する存在として位置づけた。⑥大島正健の札幌独立基督教会における伝道・牧会は、留岡幸助・原胤昭等との交流をふまえて行われ、かつ、1930―40年代における「日本的基督教」の課題意識を先取りする志向を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、本研究課題に関連する以下6点の学術活動を行った。 ①『キリスト教史学』77集(キリスト教史学会、2023年7月)に論文「桑田秀延の『日本基督教』とその可能性―アジア・太平洋戦争期の日本におけるキリスト教への一視角」が掲載された(査読有)。②『日本の神学』62号(日本基督教学会、2023年9月)に論文「アジア・太平洋戦争期『日本基督教』の射程―その神学的可能性の検討」が掲載された(査読有)。③『無教会研究』26号(無教会研修所、2024年1月)に論文「戦後初期における関根正雄の『無教会』論―その歴史的位相」が掲載された(査読有)。④南原繁研究会第12回夏期研究発表会(於今井館聖書講堂、2023年8月26日)で「南原繁『日本的キリスト教』再考」と題する学会発表を行った。⑤日本宗教学会第82回学術大会(於東京外国語大学、2023年9月10日)で「戦後初期における関根正雄の『無教会』論―その歴史的位相」と題する学会発表を行った。⑥「石橋湛山に連なる人脈と思想」研究会(於立正大学、2024年3月9日)で「甲府中学校長・大島正健をめぐる精神史―時代における生徒への求心力」と題する学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、以下3点の解明を主要課題とする。 ①「日本的基督教」を媒介に日本プロテスタント史における戦前・戦後の関係性を究明することで、戦後日本キリスト教思想史への視角を更新する。具体的には、「戦中派」キリスト者における〈日本〉をめぐる課題意識を、1925年生の住谷一彦、1928年生の大木英夫の言論活動の内に探求する。研究成果は関連学会で口頭発表し、論文化する。 ②上記の一環として、1923年生の遠藤周作、1927年生の井上洋治の言論活動も「戦中派」キリスト者のそれとして読み直し、「母性原理としてのキリスト教」論をはじめ、〈日本〉をめぐるその課題意識を問い質す。研究成果は関連学会で口頭発表し、論文化する。 ③アジア・太平洋戦争期の日本におけるキリスト教への分析視角を、日本近代史研究・近代神道史研究等の成果をふまえて問い直し、従来支配的であった「抵抗/服従」の単純な二元論や「戦争責任論」を超えた創造的な見方を提示する。研究成果は関連学会で口頭発表し、論文化する。
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