Project/Area Number |
22K00091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | マキァヴェッリ / ルネサンス / 都市共和国 / フィレンツェ / 啓蒙 / 世俗化 / ルソー |
Outline of Research at the Start |
モンテスキュー、ルソー、ヒュームの理論的特徴の一つは、世俗性であり、神学的・宗教に基づかない政治的説明こそがマキァヴェッリの著作の魅力の一つであったと推測される。もちろん、啓蒙期における政治思想の世俗性それ自体は、従来から指摘されてきた特徴であるが、2世紀以上も前に展開されていたマキァヴェッリの世俗的理論との直接的な関係についてはほとんど検討されてこなかった。そこで本研究では、世俗的価値を重視するマキァヴェッリ政治学の伝播のあり方を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の一つは、共著『マキァヴェッリと宗教――社会形成に〈神〉は必要か』石黒盛久編著/鹿子生浩輝・厚見恵一郎・横尾祐樹・村木数鷹著(論創社、2024年)を公刊したことである。担当は、第2章「統治体・腐敗・回復――人間本性に関するマキァヴェッリの想定」39-79頁部分であり、本論では、マキァヴェッリの人間観がもっぱら邪悪なものであり、現実主義的・個人主義的であると解釈されてきたが、彼の主要著作『ディスコルシ』を丹念に読み込むならば、共同体全体の利益を重視する市民、つまり政治的徳を具えている善良な人間が頻繁に登場していることがわかる。実のところ、同著は、まだ腐敗していない古代ローマを想定しているのであり、マキァヴェッリは、その健全な状態への回帰を理想としていたのである。その点で彼の理想主義的な側面を浮き彫りにすることができた。 さらに言えば、マキァヴェッリのこの想定によれば、人間は腐敗堕落する以前は善良であり、原初的人間像という点ではキリスト教の共通している。とすれば、中世とルネサンス期の思想の型をうかがい知ることができる。この解釈は、マキァヴェッリのような古代共和国の理想を失った啓蒙時代の思想家たちが政治思想において彼といかに異なっているのか、という新しい問いを生じさせるだろう。 もう一つの研究実績は、『ディスコルシ』(全3巻)の第1巻の翻訳であり、その出版は2024年度になると考えられる。すでに第2巻に着目したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、マキァヴェッリの政治理論が特にモンテスキュー、ルソー、ヒュームのような啓蒙時代の思想家たちにいかに影響を与えたのかを明らかにすることを主要な目的としている。だが、いわばその中間にいる人物ジェイムズ・ハリントンの政治思想を検討する必要が生じた。ハリントンは、啓蒙時代とは言えないものの、「新マキァヴェッリ派」と類型化される人物であり、啓蒙時代の思想家たちに対する影響力も少なくない。そこでハリントンについても研究のテーマから著しく脱線しない程度に研究する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策としては、第一に、すでに触れたように、マキァヴェッリの『ディスコルシ』の翻訳を続けることである。特に同著の第2巻は、古代ローマの対外政策を扱うものであり、マキァヴェッリ以前の時代、つまり中世にはこの分野の政治理論がほぼ存在しなかったため、啓蒙時代の思想家たちに強い影響を与えたと考えられる。しかも、ルソーなどの啓蒙時代の思想家たちの多くは、マキァヴェッリの場合とは異なり、対外拡張に積極的な理論を打ち出そうとはしなかった。そのため、マキァヴェッリからの一定の知的影響を受けつつも、彼らはこの点では新しい政治理論を展開せざるをえなかった。この視点から啓蒙時代の思想家たちの特に外交に関する政治理論を明確にすることが今後の課題・方策となる。 第二に、啓蒙時代の思想家たちは、政治的営為に対する世俗的説明という点でマキァヴェッリの著作に啓発されていたと考えられる。すでに述べたように、彼らは、古代ローマを模倣するという試みに諸手を挙げて賛同することはなかったし、また、キリスト教の教義を安易に否定することもできなかった。そこでは宗教をいかに扱うかという重要な問題が意識されたと推測される。今後の研究のテーマの一つは、この問題への理論的な対応を明らかにすることである。
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