ソ連における集合住宅の変遷とそのメディア上の表象の分析
Project/Area Number |
22K00125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本田 晃子 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (90633496)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ソ連建築 / 団地 / 住宅政策 / 住宅表象 / 住宅論 / ソ連映画 / 映画 / 集合住宅 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、スターリン時代からブレジネフ時代におかけてのソ連における住宅政策、住宅をめぐる公的言説、住宅に関する設計思想、そして映画を中心とするマスメディア上における住宅表象を論じる。 まず前提として、革命後の時期からブレジネフ時代までの間に、ソ連の標準的な集合住宅がどのように推移していったのかを、公的メディア、特に当時刊行された建築雑誌を参照しつつ検証する。その上で、より一般的・大衆的なメディアである映画において、それぞれの時期に住宅がどのように描写されたのか、どのようなメカニズムによって住宅表象が決定されてきたのかを、具体的な作品の分析を通じて明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の主たる成果は、下記の通りである。 まず、ウェブ媒体に連載していたソ連(ロシア)の住宅に関するエッセイをまとめ、『革命と住宅』(ゲンロン)を刊行した。同書では、1917年の革命直後に出現した共同住宅コムナルカから、ロシア・アヴァンギャルド建築家らによって考案されたドム・コムーナ、スターリン時代のエリート層向け住宅「スターリンカ」、フルシチョフ時代のいわゆる団地「フルシチョーフカ」、ブレジネフ時代に大規模化した団地「ブレジネフカ」までを論じ、ソ連住宅が共同体像や家族観の変化とも呼応しつつ変遷していった過程を論じた。本書はこれまでの研究内容を広く一般読者に向けて公開する試みでもあり、建築界をはじめすでに多数の反響を得ている。 また3月には、シンポジウム「各国映像メディアにおける団地表象の比較研究」を企画・開催した。同シンポジウムは特に「団地」に着目し、各国におけるマスメディア上の表象やそれらの受容を論じるもので、既に3回目となる。今回はロシアによるウクライナ侵攻を受けて、「団地が戦場になるとき」という副題を設け、2度の世界大戦からの復興の中で、いわば平和や日常性の象徴として建設された団地が、映画のようなメディアにおいてどのように戦争や集団的な暴力と関係づけられてきたのかを、日本、韓国、フランスの専門家らとともに議論した。団地は各国で比較的よく似た構造・間取り・住人を有するが、各報告では団地のイメージの周縁に残された戦争の傷跡や、団地で繰り広げられる階級やジェンダーをめぐる闘争、さらには非常時に要塞化することを念頭に設計された韓国の団地など、多岐にわたる視点が提示され、団地という共通項を国際的に比較することで有意義な議論を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査の面では、フィールドワーク先のロシアへの渡航が依然として困難であるため、2023年度も引き続き北海道大学、東京大学、早稲田大学などの図書館に所蔵されている関連図書やソ連時代に刊行された『ソ連建築(Архитектура СССР)』などの専門誌のバックナンバーを利用し、資料調査を行った。一部入手困難なものもあったが、おおむね必要な資料を手元にそろえることができた。 成果報告の点では、上記の「研究実績の概要」にも記載した通り、ウクライナにおける戦争の影響で当初より刊行が数か月遅れたものの、これまでのソ連住宅研究の成果をまとめた著書を刊行することができた。なお同書の一部は、山本理顕氏が主幹を務める『都市美』第3号にも採録されている。 またシンポジウム「各国映像メディアにおける団地表象の比較研究」では、昨年に引き続きフルシチョフ期からブレジネフ期にかけて建設されたソ連型団地を論じ、ソ連における住宅産業と軍事産業の近接性について、当該分野の文献だけでなく、当時の映画作品の分析を通しても明らかにすることができた。これは本研究の開始時にはなかった、新しい視点といえる。 2023年度は報告を予定していた国際会議が開催延期になったため、国際的な成果報告を行う機会はなかったものの、総体として本研究はおおむね当初の予定通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も引き続きフルシチョフ期からブレジネフ期にかけて構想・建設された集合住宅を中心に研究を進めていく予定である。 前半期には、前年度後半に収集した資料に基づき、1960年代に北極圏の集合住宅の設計を多数手がけた建築家アレクサンドル・シプコフの思想と作品(ただしほぼすべてがアンビルトに終わっている)や、さらには彼を主人公のモデルとした映画『人を愛すること(Любить человека)』(1972年)について、6月にソウルで開催される国際会議East Asian Conference on Slavic Eurasian Studiesや国内の学会などで報告を行っていく。これらの報告をもとに、年度の後半では論文を執筆する予定である。 後半期には他にも、第4回目となるシンポジウム「各国映像メディアにおける団地表象の比較研究」の企画と報告準備を行う。第4回は「団地は宇宙へ向かう」という副題を予定しており、報告の中ではフルシチョフ期のソ連の宇宙開発と団地開発の関係や、シプコフ夫妻ら当時の建築家に対する、ウラジーミル・ヴェルナツキーをはじめとするロシア・コスミズム(宇宙主義)の思想家の影響についても吟味していく。また、ソ連映画をはじめとする表象の中で、宇宙と団地がどのような関係を持ちえたのかについても、ユーリ・マミン監督の『噴水(Фонтан)』(1988年)などを中心に論じる予定である。これらに関する調査は、現在のロシアおよびウクライナをめぐる状況に大きな変化がない限り、昨年度と同様に国内の大学図書館等に収蔵されている資料の調査や、海外図書館からの資料の取り寄せによって行っていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)
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[Book] 都市美 第3号2023
Author(s)
山本 理顕
Total Pages
238
Publisher
河出書房新社
ISBN
4309922716
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