Project/Area Number |
22K00208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
朱 宇正 名古屋大学, 人文学研究科, 共同研究員 (40770524)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 朝鮮映画 / 日本映画 / 1930年代 / 1940年代 / 市川彩 / 国際映画新聞 / 朝鮮色 / トランスナショナルシネマ / 映画産業 / 映画政策 / 合作 / 東アジア / 植民地 / 戦時期 / 合作映画 / 植民地朝鮮 / 日本 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、1930年代後半の日本と植民地朝鮮の間で製作された日朝合作映画を対象に、それに参加していた日本と朝鮮の映画産業の考察を通して、両国間の相互交流の実態をトランスナショナル・シネマの観点から明らかにする。朝鮮映画産業という今までのナショナルシネマ的な視野を超えて、日本側の立場や政策、そして台湾・満洲・中国など日本の他の植民地・占領地の場合を合わせて、より多面的な考察を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続いて、植民地朝鮮の映画産業に対する日本側の文献資料の調査分析を主に1930-40年代の映画専門雑誌を中心として行った。特に注目したのは朝鮮と日本の間の人的交流の一例として取り上げた市川彩と彼が発行していた『国際映画新聞』である。1930年代後半の『国際映画新聞』の言説分析を通して、朝鮮映画についての関心が1934年「映画取締規則」の公表以来高まっていたこと、またそれが洋画上映の制限および日本映画・朝鮮映画への需要増加に関わっていたことが確認できた。市川は35年から37年にかけて毎年満州と朝鮮映画界を視察し、その記録を『国際映画新聞』に載せていて、彼が39年映画法の公表以前から既に国策の観点から東アジアを統括する市場の建設とそれに適している政策を主張していたことが分かった。これは民間企業の立場で東アジア地域を対象にする映画市場を構想し始めた具体的な例として評価できる。 他方、配給・興行に注目した市川の場合に比べて、製作の側面では超域的な交流の活性化を塞ぐ色んな問題点があったことも確認できた。日本での興行を目指して製作された一部の朝鮮映画は成功を収めず、ナショナル・シネマとしての存立さえ脅かされる状態であると評価されていた。当時の映画専門メディアでは、対策として、「内鮮一体」のイデオロギーに基づき、日本観客の朝鮮映画への関心を求める言説が生じる一方、朝鮮に対する興味を朝鮮特有の「地方色」を通して模索することで、結局日本と朝鮮を区別して捉える一種のジレンマが存在したことが分かった。地方色という特殊性を東アジアという広い地政学的な概念に適用しようとした試みは、この時期、日本と朝鮮映画の間のトランスナショナル的な関係を定める重要な特徴であり、今後研究を深める必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市川彩の著作と『国際映画新聞』は、1930年代東アジア映画史をトランスナショナル的な観点から把握するために核心的な資料として使われると考えられる。またそれ以外にも、朝鮮映画および日本映画産業についての言説は『映画評論』、『キネマ旬報』、『キネマ週報』、『映画旬報』、『スター』、『映画の友』などの映画雑誌と、『ダイアモンド』、『セルパン』、『実業の日本』など一般雑誌の記事を通して、十分調査が行われたと評価できる。なお、二次資料についても計画通りに、Baskettの『Attractive Empire』やNayoung Kwon等の『Theorizing Colonial Cinema』、梁仁實の『朝鮮映画の時代』、ハム・チュンバムの『韓日映画交流・関係史』など、帝国日本と植民地の間で成り立った映画文化・映画産業に関する重要な文献の調査が行われた。ただ総督府を含めた政府からの検閲関連文献とこれに対する言説などについての調査は今後進める必要がある。また映画会社から出た資料も、東宝の一部を除けば、まだ十分収集されていないため、より幅広い調査が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、論文提出を目標として、主に『国際映画新聞』の記事と映画製作におけるいわゆる「朝鮮色」についての言説を整理・分析する。『国際映画新聞』では朝鮮関連だけではなく、満州や「大陸」関係、そして日本映画産業についての記事なども調査・比較研究する。また『国際映画新聞』以外の雑誌記事や映画会社からの資料などの調査も続ける。例えば、東宝については、前年度に実行できなかった米国コロンビア大学所蔵のMakino Mamoru Collectionの訪問調査を再推進する。なお総督府の検閲関連文献と関係者の発言なども調査し、映画雑誌の言説と比較する。 朝鮮の特殊性としての「朝鮮色」言説についは、先行研究(例えば、DongHoon Kimの『Eclipsed Cinema』)を参照した上、一種の植民地イデオロギーとしての検討と実際映画テキストとして現れたケースを中心に分析を行う。イデオロギーの側面については、新聞・雑誌の言説分析(例えば「内鮮一体」論)を通して日朝関係を眺める異なる立場を論ずる。テキストについては、農村など地方色を強調した朝鮮映画についての先行研究を踏まえて、日本側から積極的に植民地イメージを用いた試み(例えば『春香伝』、『奥村五百子』、『素晴らしき金庫』など)を分析する。方法としては、これらの映画に関わった映画会社およびプロデューサーや監督が残した文献の調査分析と共に映画テキストの分析を行う。最後に最近韓国・日本で発表された植民地朝鮮映画およびトランスナショナル・シネマに関する研究論文の補充調査も行う。
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