Project/Area Number |
22K00283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01080:Sociology of science, history of science and technology-related
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
香西 豊子 佛教大学, 社会学部, 教授 (30507819)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 「家庭」衛生 / 「公衆」衛生 / 「私己」衛生 / 歴史社会学 / 花柳病 / 避病院 / 衛生統計 / 衛生学 / 公衆衛生 / 衛生リテラシー / 近代日本 / 「個人」衛生 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、幕末期から昭和初期にかけての日本における衛生リテラシーの涵養実態を、 歴史社会学の手法をもちいて、3年間をかけ、多層的に解明することを試みる。 西洋起源のHygiene(広義の「衛生」)は、市井のひとびとの身体や生に照準した実践的な「知」として幕末期に日本に紹介され、以降、行政や医学の領域のみならず、教育や共同体の領域においても展開された。その過程で、どのような衛生リテラシーへと結実し、いかなる実践の言説的基盤となったかを、「衛生」の展開の水準ごとに多層的に解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本における衛生リテラシーの涵養実態の解明をとおして、ひとびとが当時身をおいていた「衛生」という運動の射程を捕捉するものである。2年目となる2023年度は、衛生学の「知」の移入の様態を追った前年度の成果を発展させ、その展開の過程がうかがえる3つの領域を中心に資料調査をおこなった。 1つ目は、「家庭」という領域である。「公衆」とも「私己(個人)」とも異なる衛生の対象として、明治20年代に見出された「家庭」は、「私己」衛生の実践の場であると同時に、「公衆」衛生が個人の行動へと介入する場として機能した。本研究では、そうした結節点としての「家庭」の性質を浮き彫りにする事例として、戦前期の国民病である花柳病(花柳界から「家庭」へと持ち込まれる性病全般)を取りあげ、「家庭」の「主婦」にその管理が期待されていた様相を捉えた。 2つ目は、ひとびとが学知や政策と接した避病院である。当研究室所蔵の明治期の避病院の医局日誌や周辺資料を読解し、避病院が伝染病患者の隔離所としてのみならず、大学での研究を実践する場、ならびにあらたな「知」を産出する学術研究の現場としてあったことを確認した。 3つ目は、ひとびとの生の状態を俯瞰し、当局がそこへ介入する根拠ともされた衛生統計である。収集した各種資料の読解・分析により、明治初年より徐々に整備された衛生統計が、衛生学の「知」の応用段階から、一国の「衛生」状態を把握する段階を経て、しだいにさまざまな政策にも応用され、戦中期には植民地への入植にも援用されていたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、衛生の「知」が展開された領域として、オーソドックスに、学校教育で用いられる書籍(教科書・指導要領なども含む)や衛生団体発行の雑誌類を考えていた。だが、それらのパイロット調査をすすめるなかで、収集・読解する資料の範囲を拡大する必要性がでてきたため、衛生当局発行の小冊子や衛生叢書から衛生統計の報告書類にまで対象を広げた。結果的に、その分時間が割かれ、年度内にすべての調査・分析済み事項を論文にするところまでは進まなかったが、研究全体からみれば、成果の取りまとめは最終年度となる2024年度で問題なくおこなうことができ、むしろ調査範囲を広げたことにより研究テーマがより深堀されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度は、前年度の研究成果を論文にしていくのと並行し、当初の計画通り、近代日本の衛生リテラシーが、種々の疾病(とりわけ伝染病)を経験するなかで、どのように修正・獲得・伝承されたかを跡づける。年度末には、過年度の成果もふくむ本研究全体の成果を報告書にまとめる。
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