英仏百年戦争期の海峡横断的文学圏内部での定型詩の発達に関する比較研究
Project/Area Number |
22K00373
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 宜子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80302818)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 中世英詩 / 定型詩 / 英仏比較文学 / 百年戦争 / トランスナショナル / ジョン・ガワー / バラード / 海峡横断的文学圏 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、百年戦争期の英詩人ジョン・ガワーのフランス語による二篇のバラード連作(Cinkante Balades, Traitie pour essampler les amantz marietz)と仏詩人シャルル・ドルレアンの英語による定型詩集 (Fortunes Stabilnes)の分析と解釈を中核に据え、ナショナルな枠組では把捉しがたいこれら三作品を海峡横断的でトランスナショナルな枠組の中で捉え直すとともに、近年、俄かに注目を集めているHistorical FormalismやNew Lyric Studiesといった批評理論の領域に中世詩研究の立場から寄与することをめざしている。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中世後期における海峡横断的な文学圏の存在を具体的に示す資料のひとつとして、「ペンシルヴァニア詩歌集」(Philadelphia, University of Pennsylvania, Codex 902写本)を研究対象として選び、その分析を進めた。当初は渡米し、現地の図書館で写本を精査する予定であったが、諸般の事情で渡航の計画を立てることが困難であったため、ウェブ上で公開されている写本の画像を参照しながら分析を進めた。具体的な研究内容としては、まず「詩歌集」に含まれる個々の定型詩の解釈と形式的な側面の分析を行なうとともに、詩の選定基準や「詩歌集」全体の構成、編纂方針に関する調査を進め、本書がいかなる詩的共同体を想定して編まれたものであるかを考察した。また、「詩歌集」の編纂とほぼ同時期に書かれたユスターシュ・デシャンの作詩法に関する著作L’Art de dictierの内容を分析し、当時の詩人がバラードやロンドーなどの詩形をどのように捉えていたのかを確認した。さらにL’Art de dictierが依拠する先行作品を調査し、デシャンの詩観を形作った詩論や音楽論の伝統に対する理解を深めた。「詩歌集」に含まれる定型詩を解釈するうえでは、「没個性的」という表面上の印象に惑わされることなく分析を進めるため、「創造的引用」という概念を巧みに用いて音楽論の見地から百年戦争期のフランスの宮廷詩やそれに付随する楽曲の特徴を解明したYolanda PlumleyやArdis Butterfieldの研究を参照した。さらに、来年度の研究を若干前倒しする形で、ジョン・ガワーの仏語によるバラード連作『50篇のバラード』(Cinkante Balades)の一部を分析し、その結果を論考にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ペンシルヴァニア詩歌集」の現地における写本調査を断念したため、ウェブ上で公開されている写本の画像を参照しながらの調査とはなったものの、「詩歌集」に含まれる個々の定型詩の解釈と形式的な分析、詩の選定基準や「詩歌集」全体の構成、編纂方針に関する調査は概ね順調に進んだ。当初は、「詩歌集」の解釈のみならず、本研究全体の理論的枠組を構築するために、New FormalismやNew Lyric Studiesといった批評理論の領域で近年刊行されている論考を参照し、それらの理論を中世詩研究に援用するうえでの有用性と問題点を精査する予定であったが、来年度の計画を一部先取りしてジョン・ガワーのバラード連作に関する調査を行なったために、この部分については調査を完了することができなかった。今年度の研究の未完部分は、来年度の計画を微調整することにより、今後、完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、New FormalismやNew Lyric Studiesなどの批評理論の領域で近年刊行された論考を参照しつつ、研究全体の理論的な枠組を構築するとともに、ジョン・ガワーのフランス語による2篇のバラード連作(Cinkante Balades, Traitie pour essampler les amantz marietz)を考察の対象とし、その中に含まれる先行作品からの引用と引喩、および同時期の詩作品への応答と解釈できる詩句や詩行の分析を通して、海峡横断的な詩的共同体の存在を浮き彫りにする。Cinkante Baladesを分析するにあたっては、この作品との表題の類似性が指摘されている同時期のフランスのバラード連作Le Livre des cent balladesを比較研究の対象とする。併せて、同じくLe Livre des cent balladesの影響下で書かれたとされるクリスティーヌ・ド・ピザンの2篇のバラード連作(Cent ballades, Cent ballades d’amant et de dame)も比較の対象に加え、海峡横断的な視座からCinkante Baladesの再評価を試みる。Traitie pour essampler les amantz marietzを分析するにあたっては、恋愛詩でありながら教訓的な内容を多く含んでいるというその特異性に鑑み、ガワーのフランス語による長篇教訓詩Mirour de l’Omme(『人間の鑑』)やデシャンのBalades de moralitezと比較しつつ考察を進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)