Project/Area Number |
22K00375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 卓 金沢大学, 学校教育系, 教授 (10293325)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 文学における太平洋イメージ / R. L. Stevenson / Herman Melville / ポストコロニアリズム批評 / 冒険物語 / モダニズム / Robert Louis Stevenson / 旅行記 / 英語圏文学 / 大衆文学 / 植民地主義 / 太平洋 |
Outline of Research at the Start |
19世紀以降の英米文学における太平洋の扱い方を検証する。ヨーロッパから最も遠く離れた太平洋は文学的想像力の源泉としての役割を持った一方で、実際に訪れた作家にとっては失望の空間でもあった。楽園と失望の太平洋という二つの極を揺れ動く英米の文学作品において、太平洋に対する態度の方向性を決定づける因子を探ることが本研究の根本的な課題である。これに加えて、作品が目指す芸術性が現実と空想の太平洋空間の表象に影響する。本研究は19世紀末の英米文学における太平洋像を中心として、モダニズムに向かう動きと大衆文学への志向との関係を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で浮上したR. L. Stevensonの太平洋物語における大衆性と芸術性との相克を相対化するために、本年度は先行するHarman Melville、R. M. Ballantyne、Charles Warren Stoddardの作品を検証した。これらの作家の読解によって確認できたのは、太平洋についての言説の二極化の過程である。Melvilleの太平洋物語は、その根幹を形成する作者のポリネシアでの体験の信憑性が疑問視されてきたが、小説作法の見地に立つとMelville的な手法として解釈することもできる。後の代表作の一つである"Bartleby"において、より洗練された形で展開して見せた「異質なものへの観察を通した社会批判」の祖型が彼の太平洋小説に存在する。とりわけOmooはTypeeよりもより風刺的で、その分だけ太平洋へのエキゾティシズムが減少し、Stevensonの太平洋物語と大きく共通する。その一方で、Stevensonへの影響が指摘されるR. M. Ballantyneの太平洋物語は、若年層の読者を対象にしたものであることを考慮しても、キリスト教的な価値観が強調されており、そこに適合しない文化や慣習にはきわめて不寛容である。結果的に太平洋世界は、西洋とは隔絶したロマンチックな場として描かれることになる。こうした太平洋像の継続には、Stevensonとほぼ同時代のStoddardの牧歌的な作品群も大いに加担している。これらの検証によって、Stevensonの太平洋作品の抱える二重性が、メタファーとしての太平洋の二極化と連動関係にあること、また、芸術性を志向するものの太平洋世界に魅了される彼自身の西洋人性を克服できなかったことが確認できた。なお、今年度の研究には大英図書館とロンドン大学の図書館での文献調査が非常に有効だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の遅延を取り戻し、概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書通り作品の読解と検証を進める。
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