Project/Area Number |
22K00403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (10273715)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ルポルタージュ / 後期モダニズム / ノンフィクション / 石牟礼道子 / リアリズム / ドキュメンタリー |
Outline of Research at the Start |
後期モダニズム(1930-60)の時代に英語圏でさまざまな形式を産み出したルポルタージュの特質を明らかにするとともに、そのジャンルが文学と社会とをどう接合してきたかを系譜化する試みである。Gide が『コンゴ紀行』を著して以来、英語圏においても帝国領や労働者階級の日常を「再発見」する執筆実践は、対象との関係に合わせてさまざまな「形式」を産み出してた。本研究では、このような執筆実践をモダニズム運動に顕著な「日常の記述」活動の一環とみなし、支配的な言説では捉えられなかった社会周縁の「見えない日常」を表象すべく、ルポルタージュがどのような実験的な語りを遂行してきたかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
後期モダニズム期にルポルタージュ文学が発展することに着目し、同時期における文学を媒介とする社会の再現/表象について包括的な仮説提示に向けた作業を行っている。2023年度には、より具体的に以下の副課題を設定して研究を進めた。【副課題】都市のジャーナリズム的関心とローカルな共同体の関心との連鎖と乖離を考察する。よく知らない国内の周縁部を取り込もうとする都市におけるメディア政策とローカルな市民・労働者の自主的発信の乖離がいつ、どのように始まったのかを明らかにしたい。 この副課題について調査を行い、研究論文「ルポルタージュの時代―後期モダニズムの展開と衰退」(Osaka Literary Review, No. 62, 大阪大学大学院英文学談話会,1-15頁,平成6年1月31日発行)にて成果をまとめた。この論文では、まずレイモンド・ウィリアムズのキー概念である「流動的プライベート化」を用い、後期モダニズム(1930年代)に急激なプライベート化が進み、それをジャーナリズムが後押しする容態を明らかにした。具体的には、旅や山登りといった週末のプライベート時間の過ごし方に、ルポルタージュというジャンルが深く関わっていることを示した。他方、ローカルな共同体においても(おもに地方の同人誌等を媒体として)ルポルタージュが書かれていたことを、石牟礼道子の初期ルポルタージュを例に示した。そこからは商業ジャーナリズムが扱わない視点や倫理が生まれていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究は1920年代の終わりから1960年までの「後期モダニズム」研究の系譜に位置付けられるものである。本研究代表者は当該研究に着手して以来、南ウェールズの炭鉱労働者図書館のアーカイヴや水俣学の記録資料を調査しながら、不況、失業、公害を代弁するジャーナリズムと失業者や公害被害者の日記や自伝、創作との比較を一貫して行ってきた。同時に、地理的な視野を広げて、いわゆる産業地帯(イングランド北部、スコットランド港湾地域、水俣など)における「日常の記述」に関しても、文献を渉猟し、個別ローカルな特質について考察をつづけている。2023年度においては、水俣における石牟礼道子の著述実践について調査を行い、その成果を研究論文「ルポルタージュの時代―後期モダニズムの展開と衰退」にて公開した。他方、スコットランド港湾地域については、十分な資料が得られず、適切な仮説を提示する段階にまで達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に十分な調査ができなかった、スコットランド港湾地帯のルポルタージュについて集中的に調査を実施したい。それと同時に、研究目的の副課題として設定している以下の課題について、国内外の文献調査を実施する。【副課題】ルポルタージュの担い手となる作者間での階級問題は無視できない。一方に地方出身ながら奨学金を得て「階梯システム」を上り都市のジャーナリズムに従事するエグザイル(i)がいる。他方、地方の労働者のなかから労働者教育機関での学習を通して筆力を涵養し、地方にいながらにして地元密着の執筆を行う作者(ii)がいる。この分離をもたらした要因と功罪について追求するつもりである。特に(ii) については南ウェールズにある炭鉱労働者図書館の蔵書から情報を得ることが期待される。
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