Project/Area Number |
22K00421
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
境野 直樹 岩手大学, 教育学部, 教授 (90187005)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ルネサンス英国演劇 / 錬金術と近代科学 / 科学と俗習 / 英国演劇 |
Outline of Research at the Start |
政治的言説、裁判記録、旅行記など、客観性、正確さを求められるはずのあらゆる言説に、古典古代からの修辞的伝統を背景とした言説に依拠した「非科学的」修辞的伝統の色濃い影響をみてとることができる。つまり、説得力、社会的影響力のある言説においては、しばしば古典修辞学の力が科学的客観性のそれを凌駕するのだ。本研究はこうした「修辞的伝統を盾として科学的合理性に齟齬を来す言説」が、それにもかかわらず、あるいはそれゆえに、読者・観客に浸透し支持されてしまうメカニズムの来歴と変容を、英国近代の文学的・文化史的文脈、とりわけ演劇作品や世俗パンフレットなどの文脈において考察するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
Christopher Marlowe _Dr. Faustus_(1604, 1616)冒頭、主人公はアリストテレス以降のさまざまなギリシャ・ラテンの著作に言及し、人類の知性の集積を賛美しつつ、同時にその限界に絶望してみせもする。人智の限界の彼方には聖書の存在が、そして罪とその罰としての死についての言及は、かれを「その先の知」へと駆り立てる。そこに待つのは魔術の領域だ。ここに至り、知にたいする「過剰な欲求」は罪として描かれる。果たせるかな、悪魔との契約ののち、フォースタスの好奇心にたいしてメフィストフェレスは一冊の本を与え、問いへの答えが帰された箇所を指し示し続ける。読むこと・知ることはかくして悪魔的実践へ、禁じられた知へと向かうことになる。存在はするけれども読むことが抑制される本、知的好奇心が向かうことを許されない知の領域の設定ーそれらは逆説的に、人間をより強い知的好奇心へと導くことなるだろう。 こうした御しがたい知的好奇心は、やがてその対象を厳格に科学的な言説としてとりまとめて行くプロセスで、かかる禁忌が俗習に、すなわち実態を伴わない迷信に基づくものとして退けることで、狭隘物を取り除き、同時に用語の厳格な統一的定義を導き出すことで、科学的言説としてのアイデンティティを確立して行くことなる。マーロウの戯曲から、悪魔の召喚の呪文が検閲によって削除されたことを想起するならば、近代科学の黎明期・分水嶺の推移を、この時代のいくつかの文芸作品に辿ることが可能であるように思われる。 研究初年度は、こうした問題意識に基づいて、マーロウの作品に言及される古典文献が、当時の英国の知財としてどの程度認知され、共有・言及されていたのかということについて、主としてEEBO(Early English Books Online)上の横断検索を手かがりとして、関連言説の検索と収集・分類を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に設定した、研究の前提となる作品やキーワードについて、おおむね当初の見込み通りの質的量的なリサーチを行うことができたことから、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度は、初年度に集積した鍵概念を含む一次資料について読み込み、それらの概念が近代科学の言説の前に迷信・俗習としてその信憑性を否定されてゆく様子を、可能な限り一次資料に跡づけるかたちでの研究を進めたいと考えている。 引き続き、EEBOの活用を図るとともに、可能であれば、活字データ以外の図像、立体造形などの一次資料へのアクセスも心みたい。COVID-19の終息状況がこのまま好転するようであれば、英国への渡航による現地調査も検討できればと考えている。
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