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父娘関係を背景にしたナチス少女文学の成立と展開についての研究

Research Project

Project/Area Number 22K00446
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Allocation TypeMulti-year Fund
Section一般
Review Section Basic Section 02040:European literature-related
Research InstitutionKanazawa University

Principal Investigator

佐藤 文彦  金沢大学, GS教育系, 教授 (30452098)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Keywordsドイツ文学 / 児童文学 / ナチス / 少女小説
Outline of Research at the Start

ナチス時代の少女小説に描かれた父親および父娘関係の描写の分析を通して、政権掌握から第三帝国崩壊までの十数年間に至る、ナチス少女文学の変容のプロセスを検証する。
19世紀までの市民家族とナチスの家父長的家族との違いを明らかにしたうえで、児童文学は特定の政治思想の普及にどの程度まで利用されうるのかという、このジャンルの存在意義をめぐる本質的問題についても検討する。
本研究は、ナチス政権によって誕生し、ナチス政権とともに消滅した政治的少女文学の十数年の命脈とドイツ児童文学史における歴史的意義について総括する試みである。

Outline of Annual Research Achievements

本年度の研究実績としてまず挙げられるのは、前年度に行った学会発表をもとに、ナチス時代の「デンマークもの」少女小説に描かれた父娘関係について学術論文を1本公表したことである。その際、前年度の学会発表で扱った2作品、すなわちマリルイーゼ・ランゲ(生没年不詳)の『ガソリンスタンドの女の子』(1938)および『映画デビューする女の子』(1940)だけでなく、同作家の『カーリンのデンマーク・サイクリング旅行』(1938)も考察の対象に加えることで、研究に幅を持たせた。具体的には、隣国デンマーク表象のヴァリエーションとそれに伴って描き分けられた父娘関係、さらには娘の父への思いが(開戦を通じて)父の国へのそれに昇華されていく様を指摘した。
続いて本年度は、ナチス時代の少女向け歴史小説に描かれた父娘関係の検討にも取り組んだ。ナチス時代の子ども向け歴史小説は戦争小説とほぼ同義に扱われたため、男(少年)を主人公にしたものが圧倒的に多い。しかしわずかながら存在する少女向け歴史私小説を読み解くと、作品の舞台が13世紀の東プロイセン、17世紀のバイエルン、19世紀のナポレオン解放戦争期という違いはあれども、女主人公(少女)が男装して父祖たちの世界、すなわち共同体や国家のために行動するという共通点が見出された。また、その際に少女と実父の関係よりもむしろ、弱みや欠点を見せない養父または代理父の存在が強調されている点は、両大戦間期の少女文学に顕著だった「おじさん」表象の継承と変容として理解することができた。
以上の考察結果を次年度は学術論文の形で公表する。それと同時に、比較的古い時代の戦争小説を扱った本年度の研究成果を踏まえた上で、第一次世界大戦を舞台にした少女向け歴史小説に描かれた父娘関係にも取り組みたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究は、ナチス時代の少女小説に描かれた父親表象の分析を通して、ヒトラー政権が喧伝した家父長的家族像を、父娘関係という観点から捉え直し、そういった家族像のプロパガンダとして機能したナチス少女文学の変遷の実態を解明するものである。二年目に当たる本年度は、アクチュアルな戦争(第二次世界大戦)以前の戦争を舞台にした作品を考察対象とし、そこに描かれた戦闘的な主人公(少女)と父親の関係について、作品解釈に従事することを計画していた。その結果、上述の通り学会発表1件の研究発表を行うことができたが、そこで扱われた作品は13・17・19世紀という比較的古い戦争を舞台にしたものであり、20世紀の第一次世界大戦ものまで手が回らなかった。
この点については次年度に早急に取り組むつもりであるが、当初の研究計画と比較した場合、「遅れている。」ことはないものの、「おおむね順調に進展している。」とは言い難い。したがって現在までの進捗状況としては「やや遅れている。」が妥当と判断した。

Strategy for Future Research Activity

上述の通り、本年度中に学会発表を行った研究発表は、次年度に論文としての公表を予定している。それと同時に、ナチス時代に直結する第一次世界大戦を舞台にした少女向け歴史小説に描かれた父娘関係についても研究を進める。その際に着目したいのは、少女が「男装」という手段を用いて戦場という男あるいは父の世界に接近し、国家に貢献することが許されるのか、それとも看護師など、あくまで女性あるいは娘の立場にとどまることを要求されるのかという違いである。そのことによって、ナチスが目指した少女像のあり方が明らかになるだろう。
また、これまでの資料(一次文献)の調査過程で、ナチス宣伝省が1940年代前半に発行した少女向け小冊子シリーズの存在を突き止めることができた。先行研究は、これらの冊子に掲載された小説の通俗性や感傷性に注目し、ナチス政権の初期に目指された少女像、すなわち性役割の違いを認めながらも、国家のために主体的・積極的に行動する少女像が放棄されたことを指摘している。こういった方針の変化は、本年度の研究で考察した1940年までの歴史小説(戦争小説)にはまだ見出されなかった。とはいえ、その後の戦況の悪化によってもたらされた方向転換であることは容易に想像できる。
したがって今後の研究の推進方策としては、1941年以降のアクチュアルな戦争を描いた少女小説を分析するに際し、ナチスが新たに模索した復古的な少女像の構築と、その際に担った父親的人物の役割に焦点を当てたい。具体的には、実父の権威が強化されるのか、それとも養父や代理父といったヒトラーにつながる「おじさん」的人物に強い父親像が託され、血縁に基づいた父娘関係は軽視されるのかという違いに着目する。

Report

(2 results)
  • 2023 Research-status Report
  • 2022 Research-status Report
  • Research Products

    (3 results)

All 2024 2023 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] ナチス時代の「デンマークもの」少女小説に描かれた父と娘2023

    • Author(s)
      佐藤文彦
    • Journal Title

      Seminarium

      Volume: 44・45 Pages: 27-50

    • Related Report
      2023 Research-status Report
    • Peer Reviewed
  • [Presentation] ナチス時代の少女向け歴史小説に描かれた父と娘2024

    • Author(s)
      佐藤文彦
    • Organizer
      大阪公立大学ドイツ文学会
    • Related Report
      2023 Research-status Report
  • [Presentation] 友好的で中立的な隣人のなかの他者性―ナチス時代のドイツ少女小説におけるデンマーク表象2022

    • Author(s)
      佐藤文彦
    • Organizer
      日本独文学会北陸支部2022年度研究発表会
    • Related Report
      2022 Research-status Report

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Published: 2022-04-19   Modified: 2024-12-25  

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