ドイツ語圏を中心とするヨーロッパにおける抒情詩の「話者」概念の展開
Project/Area Number |
22K00454
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小野寺 賢一 (上賢一) 大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (80581826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 基晶 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (50412218)
藤澤 博康 近畿大学, 文芸学部, 教授 (60300597)
松浦 菜美子 関西学院大学, 文学部, 准教授 (10880247)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | リュリコロギー / 審級理論 / ヘルダーリン / シェイクスピア / ソネット / バトゥー / スタール夫人 / ペトラルカ / 抒情詩 / ダンテ / マラルメ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、抒情詩の発言主体(「話者」)を作者と同一視する言説とこれを否定する言説との対立が、16世紀から20世紀にかけてのヨーロッパにおいていかなる経過をたどって形成され、展開したのかを明らかにする。また、1990年代中頃以降、ドイツにおいて急速に発展した抒情詩の審級理論ならびにリュリコロギー(抒情詩論)を中心に、各言語圏における抒情詩理論をその成立の歴史的背景も含めて紹介する。さらに、以上の研究からえられた知見を用いて、イタリア、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリアの抒情的作品の解釈を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に即して、抒情詩の「話者」をめぐる近代の言説の歴史的背景を中心に研究を進めた。小野寺は(1)ヘルダーリンの河流の隠喩からドイツにおける詩的言語の展開にかんする彼の省察を読み取り、これについて口頭発表を行った。(2)また18世紀半ば以降に生じた抒情詩をめぐる議論の文脈から、ヘルダーリンの未完の頌歌とその改作群ならびに詩学的文書を解釈し、その成果を論文として投稿した(査読つき・掲載決定済み)。(3)さらに18世紀後半から20世紀初頭にかけてドイツで展開された抒情詩の作者と作品ないしは発話主体との関係にかんする議論を概観・整理し、その成果を論文として投稿した(査読つき・掲載決定済み)。 藤澤は(4)本研究課題の研究報告会で重要参考文献2点について報告を行ったほか 、(5)『ロミオとジュリエット』が、1590年代にイギリスで流行したソネット連作とオウィディウスの恋愛詩の英語訳が醸成した抒情詩的エロティシズムの土壌のなかで創出されたことを、口頭発表において明らかにした。松浦は(6)18世紀中頃から19世紀初頭にかけてフランスで展開された抒情詩をめぐる議論について、バトゥーならびにスタール夫人を中心に概観・整理し、その成果を査読つき論文として発表したほか、(7)本研究課題の研究報告会で発表した。 計画にはなかった追加の研究として小野寺が(8)ドイツの最新の抒情詩理論について口頭発表を行い、(9)その内容を査読つき論文として発表した。また研究協力者として新たに参加した飯嶌剛将が(10)一般向けの講演においてペトラルカの『カンツォニエーレ』第1ソネットで描き出される「私」を恋愛抒情詩ならびに宗教的告白の二つの文脈から読み解いたほか、(11)本研究課題の研究報告会において『カンツォニエーレ』が時系列の異なる複数の「私」によって構成された作品であることを記号論の観点から論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では研究代表者と分担者がそれぞれ1回、合計で4回の口頭発表を行う予定であった。しかし実際には合計で7回の口頭発表・報告が行われた。内訳は各種の学会での口頭発表3回、本研究課題の研究報告会での発表が2回、研究協力者による一般向けの講演と研究報告会での発表がそれぞれ1回である。さらに松浦と小野寺は来年度に行う予定であった論文での成果発表を本年度に行うことができた。なお小野寺の成果には2024年度以降実施予定であった理論にかんする研究が含まれている。また小野寺はこのほかにも2本の論文を執筆した。これらの論文はすでに査読をうけたうえで掲載が決定している。 原は2022年度に成果を残していないが、これは当初予定していた口頭発表を複数人のイタリア文学研究者が参加するシンポジウムの企画に切り替えたためである。シンポジウムの開催は2024年度あるいは2025年度を予定。参加者と企画内容については現在構想中である。また英語圏抒情詩とフランス語圏抒情詩についてもシンポジウムないしはワークショップを開催することになった。両企画ともに開催場所、協力者はおおむね決定しており、前者は2023年度、後者は2025年度に開催予定である。 さらに新たなプロジェクトとして、小野寺がクローチェを専門とするイタリア文学研究者ならびに森鴎外を専門とする日本文学研究者とともに、19世紀から20世紀初頭にかけての日本、ドイツ、イタリアにおける観念論美学の受容について、「抒情詩」という概念を中心に論じるシンポジウムを開催することになった。 このほかにも研究協力者として飯嶌剛将が加わり、招待講演や本研究課題の報告会でペトラルカについての研究発表を行うなど、当初の計画が大幅に拡張された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は予定通り各人が2022年度の成果を論文として発表するほか、予定していたドイツ語圏抒情詩にかんするシンポジウムを日本独文学会春季研究発表会において開催する。標題は「近現代ドイツ抒情詩の『話者』再考:『リュリコロギー』の批判的受容に基づくケーススタディ」である。 またこれまでの研究の結果、一人で一つの言語圏全体を覆うような研究を行うことは困難であることが改めて認識されたため、イタリア語圏・英語圏・フランス語圏抒情詩の研究においても協力者を募り、シンポジウムやワークショップを開催することになった。その準備や個々のシンポジウムの相談に時間を割くため、2022年度は年4回行っていた研究報告会を今後は年2回に減らすことにした。 英語圏抒情詩のシンポジウムは2023年度に関東で開催すべく順調に準備を進めている。イタリア語圏抒情詩のシンポジウムは2024年度に関西での開催を目指しているが、研究代表者の渡独と重なる可能性があるため、2025年度開催も視野にいれている。2025年度に関東で開催予定のフランス語圏抒情詩ワークショップは着実に準備が行われている。 イタリア語圏抒情詩の研究を充実させるために、2024年度以降に研究分担者をもう1名追加すべく検討を重ねている。さらに小野寺が2024年度にイタリア、日本、ドイツにおける観念論美学の受容にかんするシンポジウムを開催することで、イタリア語圏抒情詩の研究を補助することにした。 このほかにも2024年度には計画通り抒情詩の「話者」の理論にかんするシンポジウムを開催する予定である。開催場所は比較文学会関西支部例会に決定した。2025年度には以上の研究をふまえて、ダンテ、シェイクスピア、ゲーテ、そしてマラルメにかんするシンポジウムを計画通り開催したいと考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)