Project/Area Number |
22K00463
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
桑原 聡 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (10168346)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 言語起源論 / ズュースミルヒ / ヘルダー / 内省意識 / 理神論 / 世界における神の位置 / ヘルマン・ブロッホ / ルートヴィヒ・クラーゲス / 言語哲学 / 言語記号論 / 音素と意味素 / 恣意性 / ナチズム / 絶対性 / 絶対者 / 宗教学 / グノーシス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1)オーストリアの作家ヘルマン・ブロッホ(1886-1951)が、言語に対する根本的懐疑が表明された20世紀前半にあって、何故言語の絶対性、すなわち言語が絶対者(神)に由来するという信念を保持し続け、また政治論文においても「地上における絶対的なもの」という絶対者と関わる概念を打ち出し哲学的に根拠づけようとしたのかを明らかにし、2)このブロッホの「絶対者」を巡る思索がどのような思想的伝統に連なっているのかを解明しようとする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度はハーマンの言語論の検討を行いおおよそ以下のことを明らかにした。 ハーマンJ. G. Hamann(1730-1788)の活躍していた時期は啓蒙期からシュトルム・ウント・ドラングへと時代が変わる変換期であった。啓蒙期の理神論Deismus(神の介在を世界の創造に限り、その後の神の世界への介入を排除しようとする考え方)以来神に代わって人間理性が重んじられることとなる。今期の研究テーマである言語論から見るならば、言語の起源を何に求めるかについて神に因るとする考え方から人間理性に求めようとする考え方に徐々に移行する過程が重要である。大きな転換点になったのは1769年にプロイセン王立科学アカデミーが公表した言語の起源に関する課題である。その意図は人間が言語を発明したことを論証させることであった。それに対してヘルダーJohann Gottfried Herder(1744-1803)は『言語起源論』を提出し最優秀賞を獲得し、1772年に出版する。 ヘルダーはその著で、理性とその道具である言語は神に由来するというズュースミルヒJ. P. Suessmilch(1707-1767)の論を徹底的に批判する。ズュースミルヒの言語論の要は、言語は人間が理性を使用するための手段であり、言語は理性と同時に神から授けられたものであるという点にある。 これに対してヘルダーは言語の発明を可能にするのが人間に固有の「内省意識」Besonnenheitであるとし、言語の起源について言語が先か、理性が先かという「悪循環」に終止符を打とうとしたのである。 ハーマンはそれに対してヘルダーを批判する。ハーマンの主張は、言語起源は「神に因りかつ人による」というものであり、ズュースミルヒとヘルダーの間に自らの言語起源論を位置づけようとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハーマンの言語論を十全に解明するためにはさらに3つの概念を明らかにする必要がある。一つははキリスト論の概念である「属性の交流」commnicatio idiomatumである。この概念はイエス・キリストの中に神の属性と人の属性が共存するというものであり、人から見るならばイエス・キリストを通して人は神に通じているとする考え方である。 第二の概念はKondeszendenzである。このギリシア語由来の概念はドイツ語ではherabsteigen, Herablassung, Herunterlassung [Gottes](Historisches Woerterbuch der Philosophie, Bd. 4, S.942, rechte Spalte)「(神が)下(人間)に下ること」「下降」と訳される。この概念は、人間の側から神を認識することは不可能であるが、神は聖書に自らの業と顕現を人間の言語で記しているというある種の矛盾を解決するために考案されたものである。神が人間にも判るように神語を人間の言語に「翻訳」して語るということであろう。 第三の概念は上述の意味における「翻訳」である。神の言語はそのままでは人間に理解され得ず「翻訳」が必要であるというのもハーマンの思想の一部である。「語ることとは翻訳することである-天使の言語から人間の言語へ・・・」(Josef Nadler編集の全集版第2巻199頁)とハーマンは述べる。 これら三つの概念が解明されることによってハーマンの言語論の全体像が明らかになるはずである。そのためには後半年程度の時間が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は上に述べたようにハーマンの言語論理解に欠かせない3つの概念の解明を行う。これにはおよそ半年を予定している。 続いてドイツの神秘主義者であるベーメJacob Boehme(1575-1624)の言語論の分析を始める予定である。対象は彼の主著『アウローラ』Auroraである。ベーメの言語論はハーマンのそれと同様ドイツロマン派の作家・詩人に大きな影響を与えている。ベーメの言語論の解明は1)神秘主義者の言語の特徴はなにか、また付随的に、2)ドイツロマン派の作家・詩人はベーメの言語論の何に強く惹かれたのかを明らかにするであろう。 研究調書の段階では2023年度にベーメ研究、24年度にハーマン研究に従事すると記していたが、ハーマンの活動した時期が啓蒙期-科学的合理主義の黎明期-であり、「絶対者」とその言語の関係を捉えるにはH.ブロッホとの時代精神における関連性が強いハーマン研究を先行させることとした。 世界理解から神の関与をできる限り排除しようとする啓蒙期の理神論は、言語の起源から神を排除しようとするヘルダーの言語起源論に一つの頂点を迎える。それを批判するハーマンは「絶対者」と人間理性の緊張関係から言語起源論への絶対者の関与をそれまで以上に精緻に論じるよう強いられる。ハーマン研究は啓蒙期以前に成立したベーメ神学の理解に少なからず貢献してくれるであろうと予想している。 令和7年度にはそれまでの研究成果をシンポジウム等で公表する予定である。
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