The Imagination of "Crash" and "Présence": A Genealogy of Decentering in Modernism
Project/Area Number |
22K00474
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷 昌親 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90197517)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | モダニズム / シュルレアリスム / イメージ論 / フランス現代思想 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、20世紀前半の西欧、特にフランスにおいて新しい世界像を求めた文学・芸術上のモダニズムを主な対象とし、その本質を〈クラッシュ〉(clash)と〈プレザンス〉(presence)というキーワードから読み解こうとするものである。 それはまた、この時代の実験的な文学・芸術作品を特徴づける〈脱中心化〉の作用――既成概念の否定と因習的な表現からの逸脱――を検証する作業ともなるが、〈クラッシュ〉と〈プレザンス〉の視点から眺めることで、モダニズムならではの〈脱中心化〉を細かく分析しつつ、ジャンルやメディアも横断して生じてきたさまざまな芸術運動について、それらに共通する想像力の探求をめざしたい。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、準備や時間に多くの時間を費やしたものの、論文「ミシェル・フーコーとその分身――『レーモン・ルーセル』をめぐって」(『早稲田大学法学会百周年記念論文集 第5巻 人文編』所収)を発表できたのが一番の成果と言えるだろう。従来、フーコーの『レーモン・ルーセル』については、この著作をフーコーの仕事全体に関係づけ、特に後期の権力論に接続させようとするため、ルーセルの特異な創作方法である「手法」に注目し、言語の問題に特化した研究が主となっていた。しかし、言語の問題が重要なのはまちがいないにしても、フーコーはルーセルのうちに「狂気」、「可視性」、「分身」など、言語に勝るとも劣らない重要なテーマを見出していたはずなのである。ジル・ドゥルーズのフーコー論も参考にしつつ、そうしたさまざまなテーマが〈外〉の問題につながることを上記論文において解明しようと試みた。それはまた、文学との関係でフーコーの思想を見直す契機にもなったと考えている。 一方、シュルレアリスムの画家で、第二次世界大戦中にアメリカに渡った画家マックス・エルンストが先住民族の文化から受けた影響について、「「見者」としての画家がたどる旅路――マックス・エルンストと北アメリカ先住民族の文化」という論文にまとめた。これは、以前から断続的に書き続けている、シュルレアリスムをポストコロニアリズムの文脈に置きなおす研究の一環であり、そろそろ一冊の本にまとめたいと考えている。 さらに、以前からおこなっていたフィリップ・スーポーの小説『パリの最後の夜』の翻訳も、版権の問題などでやや滞っていたが、ようやく見通しがついた。中篇『オラス・ピルエルの旅』と短篇『ニック・カーターの死』の翻訳も収録し、さらに詳細な解説を付して刊行する予定であり、これによって、これまでブルトン中心だったシュルレアリスムの見方を多少なりと修正できると期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィリップ・スーポーの『パリの最後の夜』に、短篇『ニック・カーターの死』、中篇『オラス・ピルエルの旅』を合わせた翻訳の出版が遅れているが、解説執筆のためにスーポーについてあらためていろいろと調べ、これらの作品の執筆の経緯などともからめつつ、スーポーの文学思想を確認できたのは収穫であった。 一方、ミシェル・フーコーの『レーモン・ルーセル』についての論文には、当初想定していた以上の研究成果を盛り込むことができた。フーコーにとって権力論が重要なのは言うまでもないが、そうした権力論のいわば裏面に、ブランショを論じた「外の思考」以来、彼が惹かれつづけていた文学や芸術における「脱中心化」の働きがあることを、拙論において多少なりと明らかにできたと考えている。 また、シュルレアリスムの画家マックス・エルンストをポスト・コロニアリズム的な観点から再評価する論文を執筆できたのも大きな成果であった。シュルレアリスムとポストコロニアリズムの関係を探る論文をこれまでも書き、ブルトンはもちろん、アラゴン、レリス、アルトー、アンドレ・マッソンらを論じてきたが、このところ、諸事情によりややこの方面の研究から遠ざかっていた。しかし、エルンスト論の執筆をひとつの契機として、いまいちどこの問題を考え直し、必要な論文を補って、書籍として刊行する方向をめざしたい。 やや不満が残るのは、上記の論文や翻訳に時間をとられ、ミシェル・レリスやレーモン・ルーセルについての研究があまりできていないことである。もちろん、フーコーについての論文を執筆するなかでルーセルについて再考したし、スーポーやエルンストの問題意識はレリスに通じるものでもあるが、本研究の出発点であるレリスやルーセルをもう少し視野に入れておく必要があるかもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、刊行が遅れているフィリップ・スーポーの翻訳をなるべく早く形にしたい。翻訳に付す解説は九割がた執筆してあるが、『パリの最後の夜』の分析に多少の追加執筆をする予定であり、それも含めて全体を見直し、翻訳そのものの早期の刊行をめざすつもりだ。 シュルレアリスムをポストコロニアリズムの観点から見直すことは、〈外〉に注目する本研究にとって重要な課題のひとつであり、マックス・エルンスト論の執筆を契機として、もういちどこの問題そのものを新たに見つめ、不足しているテーマや論点などを洗い出したうえで、書籍化をめざしたい。 ミシェル・フーコーの「外の思考」は、われわれに〈外〉への関心を抱かせた重要な文章であるが、今回の論文「ミシェル・フーコーとその分身」執筆は、フーコーにおける〈外〉について再考するよい機会となった。論文執筆の過程で得た知見をさらに発展させるためにも、レーモン・ルーセル以外の文学者、さらには芸術家についてフーコーがどのような捉え方をしているのかを、「外の思考」との関係で今後は考えてみたい。 2022年度に関しては、フーコー論の執筆に多くの時間を費やし、スーポーの翻訳刊行準備で生じた問題に対処することにも忙しく、ミシェル・レリスやレーモン・ルーセルについて研究をあまり進めることができなかったが、本研究課題の出発点にはこの2人の作家がいることでもあり、今後はもう少しルーセルやレリスを考察の対象とする時間を作りたい。そのなかでも、ルーセルについてはフーコーとの関係で多少なりと振り返ることができたが、レリスに関しては、著作を読み直すことなどもほとんどできなかった。〈クラッシュ〉と〈プレザンス〉という問題意識はレリスが源泉であるだけに、いまいちどレリスに立ち戻る必要があろう。 写真や映画など、〈外〉との関係が重要なメディアについても、上記の諸研究との関係で考えていかねばならない。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)