Project/Area Number |
22K00475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
井尻 香代子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (70232353)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 俳文芸の定義 / スペイン語ハイクの言語・文体 / 俳諧の精神・詩学 / 句会の作法 / 俳文の定義・考察 / アルゼンチン・ハイクの精神 / 俳味の概念 / スペイン語圏 / 俳文芸 / 俳諧の詩学 / 市民社会 / 生活文化 |
Outline of Research at the Start |
スペインやラテンアメリカにおける日本の俳句や短歌の受容研究では,これまで,詩型,季語,東洋思想等が重視されてきた。しかし受容がさらに進展した現在,実作者たちの関心は「俳文芸」全般に通底する市民的な精神・詩学に向かっているように思われる。 そこで本研究は,日本とは全く異なった言語と詩的伝統を持つスペイン語圏において,スペイン語のハイク,ハイブン,ハイガ,レンク等の実作が普及しつつある状況と,こうした現象の根底にある生活文化の変容に焦点を当てて展開する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年10月後半にスペインの4都市で現地調査を実施した。スペイン最古の大学を擁するサラマンカでは、サラマンカ大学翻訳学部・文献学部において、講演「江戸の民衆文化・俳諧の連歌の世界」を行い、現地研究者・学生と俳諧の連歌の言語や俳諧味について意見交換を行った。マドリード国立図書館においては、文献・記事等の資料を収集した。北部バスク地方のハイク拠点パンプロナでは、現地の定例句会に参加し、実作者グループと俳文芸の言語、文体、作法に関する意見交換を行った。スペインの伝統詩との違いについて興味深い指摘があった。スペイン語ハイク活動の中心地アルバセテでは、カスティーリャ・ラ・マンチャ大学法学部において講演「江戸の俳諧」および連句ワークショップを実施し、現地研究者・実作者と俳文芸に関する意見交換を実施した。 同年10月末から11月中旬までアルゼンチンの2都市で現地調査を実施した。アルゼンチン国会図書館においては1980年代~1990年代の出版物(雑誌・書籍)を収集した。首都ブエノスアイレスの日本大使館文化広報センターでは、シンポジウム「日本の伝統文学:俳文芸」を開催し、パネル発表および現地研究者との意見交換を実施した。また、ブエノスアイレス郊外ビセンテ・ロペスで現地実作者と吟行ワークショップを開催した。内陸部のコルドバにおいては、実作者に地域の俳文芸に関する聞き取り調査および意見交換を行った。当初はリマ大学図書館や日秘文化会館における文献・資料収集や聞き取り調査を中心としたペルー現地調査を予定していたが、円相場の下落や航空料金の高騰により今回は中止することとなった。現地調査終了後、入手した資料・情報の整理・分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度:スペインの研究協力者との情報交換により本研究課題と関わりの深い文献資料を多数入手する中、とりわけアルバセテ俳人協会主催の第1回~第3回国際俳文コンクール入賞作品集を通してスペイン語の俳文分析が進展した。アルゼンチンでは2022年10月にオンライン(一部対面)でブエノスアイレスの東西財団主催の国際俳句学会大会が開催された。「スペイン語圏の俳文芸」、「アルゼンチンの風土に根差したハイクの精神」、「俳句翻訳における俳味の概念」等をテーマに取り上げた研究発表があり、スペイン語ハイクや俳文芸研究において、俳諧の精神・詩学に関心が寄せられていることが確認できた。研究代表者は「取合せの歴史とスペイン語圏における受容」に関する研究成果発表を行った。また、2023年3月には俳諧の詩学について日本の俳句と海外のハイクの連続性について分析する論文「海外における俳句受容プロセスの深化について(スペイン語圏を中心に)」の第一部「形式・修辞について」を公刊した。 2023年度:スペインの3都市(パンプロナ、サラマンカ、アルバセテ)で講演、ワークショップ、意見交換を実施し、俳文芸理解の深化を確認した。マドリードでは国立国会図書館で俳文芸関連の出版物の質の変化を検証した。アルゼンチンではブエノスアイレスの国立図書館で市民サークル活動としての俳文芸出版の変遷を確認し、日本大使館文化広報センターのシンポジウムでは、俳画、俳文、連句、俳句等、俳文芸全般への関心の深まりを具体例とともに考察した。コルドバではスペイン語ハイクが生活に根ざした市民文芸として定着している状況を確認した。2024年3月には、東西の俳文芸の連続性について分析する論文の第二部として「海外における俳句受容プロセスの深化について(スペイン語圏を中心に)Ⅱー俳句・ハイクの内容ー」を公刊した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度にあたり、これまで収集した文献,資料,情報の整理,また,関連ウェブサイトからのデータ収集も行いつつ,そこに「俳諧の精神・詩学」がどのように反映されているかについて分析を行う。過去2年間は、俳文芸の形式及び内容について分析・考察し、論文にまとめてきた。そこで、今年度は以下の側面に焦点を絞る。1)俳文芸の言語(日本・海外の俳文芸において、文芸作品に使用される言語-季語、トピック、文体-)を分析する。2)俳文芸の作法(日本・海外の俳文芸において、「座の文芸」といわれる集団制作の作法がどのように実践されているか)を分析する。3)国内学会発表および論文公刊によって研究成果を公表する。また、これらの分析・考察により,スペイン語圏における「俳諧の精神・詩学」受容の歴史と現状を考察し,この現象がスペイン語圏の人々の社会的・文化的側面にどのような変容をもたらしているのかを明らかにする。
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