台湾白色テロ期の本省籍知識人のアイデンティティ形成に果たした翻訳日本文学の研究
Project/Area Number |
22K00486
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 貴正 愛知県立大学, 外国語学部, 名誉教授 (80205096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 文菁 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (00434241)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 台湾白色テロ期 / 本省籍知識人 / 1960年代『台湾文芸』 / 翻訳日本文学 / 1950年代台湾文学史 / 禁書 / 通俗小説 / 日華断交 / 『台湾文芸』 / 1950年代文学史 / 文化変容 / 台湾人アイデンティティ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、台湾白色テロ期に「台湾アイデンティティ形成」の礎となった『台湾文芸』(1964年創刊)に集った四種の本省籍知識人を具体的な分析対象として、彼らが翻訳を行った或いは影響を受けた日本文学作品を通して、彼らの文化アイデンティティの変容或いは再受容にその翻訳文学の形式と内容がどのように機能したかを、作品のジャンル、作家とその作品の翻訳意義を通して解明する。日本文学の翻訳作品は、大衆文学、中間文学、純文学、文芸評論等々、政治弾圧を意識しながら各種ジャンルを横断的に受容と翻訳がなされ、最後は芥川龍之介、川端康成、太宰治、三島由紀夫の諸作品へ収斂していく傾向に考察を加える。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度も研究代表者と研究分担者が共同で立ち上げた「白色テロ期の台湾文学・文化研究会」において、2023年9月は澤井律之(光華女子大学元教授)が「『台湾文芸』と呉濁流(1900-1976)について」(Zoom)、11月は呉米淑(台湾・致理科技大学助理教授)が「日華断交期における台湾出張・旅行の意義と影響―黄春明(1935-)『さよなら再見』と邱永漢(1924-2012)『たいわん物語』の影響を含めて」(Zoom)、12月は菊池一隆(愛知学院大学名誉教授)が「白色テロ期、東京教育大学の台湾人留学―詩人陳明台、父陳千武と関連させて」(Zoom兼対面)、2024年1月は張修慎(台湾・静宜大学教授)が「李喬(1934-)の描く台湾・中国・日本文化論」(Zoom)というそれぞれのテーマで個別発表を行い、本研究に関わる各研究参加者と研究課題の問題意識を共有することができた。 個別研究として、研究代表者の工藤貴正は9月に中国現代史研究会東海例会において、「毛沢東『延安文芸講話』に確立した「党」 ・知識人・大衆三者論の 成立過程の一断面 」と題し研究発表を行った。また、11月に早稲田大学で行われた国際シンポジウム『周氏兄弟研究青年論壇』において、第2部会の司会及びコメンテーターを勤めた。研究分担者の張文菁は6月に台湾台北市立文献館が開催する座談会「戦後通俗言情小説与台北出版業』において、「従通俗小説看台湾文学史――1950年代的反共与愛情」というテーマで報告を行い、同じ6月に中国文芸研究会例会で「身体と政治をつなぐ同志文学――郭強生『断代』にみる台湾の1980年代」というテーマで研究発表を行い、7月には立命館大学で「戦後台湾における通俗小説の発展――金杏枝と台湾語映画『難忘的車站』」、9月には台湾の国立政治大学で「従通俗小説看台湾文学史――1950年代的反共与愛情」という講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究課題にとって重要な1960年代『台湾文芸』に集った4種の世代の知識人について、(1)1920年以前生れ皇民化日本語世代の巫永福(1913-2008)を謝惠貞氏(台湾文藻外語大学)に、(2)皇民化世代でも中国語ができた呉濁流(1900-1976)を王惠珍氏(台湾国立清華大学)に、(3)1925-30年頃生れの日本語も中国語もできた「言語を跨ぐ世代」の知識人・鍾肇政(1925-2020)を澤井律之氏(京都光華女子大学)に、黄霊芝(1928-2016)と邱永漢(1924-2012)を岡崎郁子氏(吉備国際大学)に、葉笛(1931-2006)を工藤が担当し(4)中国語=「国語」の世代の知識人・李喬(1934-)を張修慎氏(台湾静宜大学)に担当し、シンポジウムで発表頂くことで、計画した課題研究が順調に進むことになった。 また、研究代表者の工藤貴正は、白色テロ期に弾圧を受けた知識人の現地調査を、旧昭和町(現、青田・温州・永康街一帯)の旧台北帝大教授官舎に居住した外省籍の台湾大学教授の調査を中心に行った。台湾大学教授陣のなか、許寿裳(1883.2-1948.2)や殷海光(1919.12-1969.9)などの弾圧された外省籍知識人と、弾圧を免れた金溟若(1905.1-1970.6)などの調査研究と、彼らに加えられた弾圧の原因とその状況を国立国家図書館、国立台湾図書館、台湾大学図書館で資料調査を行った。研究分担者の張文菁は2023年8月から9月にかけて台湾で資料収集し、50年代に出版された雑誌と小説を入手することができた。6月から9月にかけて、研究発表や講演を通じて、本研究テーマの問題意識について台湾の国立台湾大学および国立政治大学の研究者と意見交換することができ、論文の執筆材料にすることができた。また、日本国内での研究会を通じて有益なアドバイスを伺った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究代表者・工藤貴正と研究分担者・張文菁が本研究課題を独自に進めると同時に、共同研究として、2024年11月16-17日に愛知県立大学において、「台湾白色テロ期の日本・台湾の文化アイデンティティの交流及び選択と再編」と題する「講演会」兼「国際シンポジウム」を開催する。この国際シンポジウムは、講演会(1)【戦後日本の民主主義と台湾留学生の日本体験】と、国際シンポジウム(2)【『台湾文芸』に集った知識人のアイデンティティ形成】(3)【戦後台湾における「文芸の大衆化」問題に見るアイデンティティ形成】(4)【日華断交期の日・台文化交流のかたち(国語=中国語教育)、出張と旅行、日本文学の翻訳、日本留学の意義】という計4つの発表部門に分け、二日に亘って開催する。 個別研究として研究代表者の工藤は、「講演」と「国際シンポジウム」に先立ち、「白色テロ期の台湾人文化アイデンティティの強制変容を巡って」と題して本研究の意義を概説し、「台湾白色テロ期における日本文化アイデンティティの選択と再編―ある台湾知識人・葉笛((1931-2006))の日本体験を通して」と題した研究発表を行う。研究分担者の張文菁は、2024年度は津守陽(京都大学人間・環境学研究科准教授)と共同で読書会を開き、台湾白色テロ期に関連する文献を読み進める予定。8月は台湾にて「台湾白色テロを読む」という企画で白適銘(台湾国立師範大学美術系教授)と栖来ひかり(文筆家・翻訳者)と交えて日本統治下の台湾美術および二・二八事件と画家陳澄波に関する研究会に参加する予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)