宮城の街、旧麹町・神田区における文学言説を用いた近代都市風景史の構築
Project/Area Number |
22K00496
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松下 浩幸 明治大学, 農学部, 専任教授 (20310550)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨沢 成実 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70339563)
村松 玄太 明治大学, 情報コミュニケーション学部事務室, 専任職員 (80639568)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | 東京 / 宮城 / 麹町区 / 神田区 / 近代日本文学 / 都市表象 / 千代田区 / 場所 / 日本近代文学 / 旧麹町区・神田区 / 風景史 / 都市 / 地域 |
Outline of Research at the Start |
明治維新によって江戸城から宮城へとその意味を変えた皇居を街の中心として持つ旧麹町・神田区一帯は、日本の近代において極めて特異な意味を持つ場所である。場所とは、実体的な物理的空間としてあるだけなく、さまざまな社会的要因によってイメージ形成され、表象されることで、人々の集合的記憶や「心性」が形成される。本研究はそのような日本近代における象徴的トポスである旧麹町・神田区一帯を、文学を中心とする物語言説と同時代の視覚資料を活用し、幕末から明治期、さらに昭和の終戦期にかけて大きく変動していった都市の風景を考察することで、忘却されていった記憶と新たに形成されていった場の日本近代における意味を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は旧麹町・神田区一帯を、文学を中心とする物語言説と同時代の視覚資料(古地図、錦絵、写真)を活用し、幕末から明治期、さらに昭和の終戦期にかけて大きく変動していった都市の風景を考察することで、忘却されていった記憶と新たに形成されていった場の意味を明らかにするものであるが、最初の2022年度は基礎的な資料収集と現地調査等に力を注いだ。しかしながら、いくつかの研究成果も出ている。以下、その中の2点を報告する。 冨澤成實は「明治大学史資料センター」ホームページにおいて「阿久悠とお茶の水の風景」を発表した(2022・12配信)。阿久悠の長編小説『最後の楽園 瀬戸内少年野球団・青春編』(1986・8、光文社文庫)には、お茶の水の風景、特に聖橋が白の多い油彩画であるユトリロの風景に例えられていることを取り上げ、作者の美的感性の特長を論じ、同時に1956(昭和31)年当時の大学生が、経済的な苦しさから売血などによって日々の生活をしのぐ様子なども指摘し、当時の時代背景の一端が考察されている。そして、駿河台や神保町はもとより、浅草や新宿、上野などの映画館や貸本屋、寄席、ジャズ喫茶など、当時の東京と学生文化との関わりが紹介されている。 また、吉田悦志は明治大学史資料センター刊「大学史紀要」第29号(2023・3・30)に「神田駿河台の文化地層(2)-『風俗画報』を手掛かりにして」を発表した。本稿では、明治期の『風俗画報』の記述を詳細に読み解き、また国土地理院「デジタル標高地形図」を丹念に調べることにより、お茶の水地区を流れる神田川の歴史的・地理的・文化的意味を再考することにより、なぜこのあたりの流域だけが急な渓谷を形成しているのかを推察するものである。これによって、慶長の神田川開削工事は、ある程度の自然の地形を生かして川筋がつくられたものである可能性について提言した貴重な論考となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本採択課題「宮城の街─旧麹町・神田区における文学言説を用いた近代都市風景史の構築」について、2022年度の活動として関連作品文献の収集及びリスト作成を行い、時代・場所・作家別のデータベースを構築することをめざした。調査先としては明治大学図書館・千代田図書館・日比谷図書文化館・東京都立中央図書館・東京都江戸東京博物館リポジトリ・国会図書館等を活用し、また秦川堂書店・八木書店等の東京神保町古書店を主に利用した。その際の時代区分の担当として、幕末~明治20年までを吉田悦志が、明治21年~40年までを松下浩幸が、明治41年~大正15年を冨澤成美が、昭和元年~昭和戦前期を村松玄太が行った。本年度は各自30作品以上の収集とリスト化を目指し、ほぼ目標に達する成果が得られたが、その多くが文学作品であることを鑑み、今後は新聞・雑誌等の調査を多く行う必要があると考えられる。 また、文献収集以外では旧神田区内の水運状況を確認すべくフィールワークを行い、博物館明治村(愛知県犬山市)では明治期の旧神田区・麹町区の近代建築物の調査、さらに日比谷公園・帝国ホテル近辺の現地調査を行った。特に明治村では旧神田区・麹町区関係の建物としては、フランク・ロイド・ライトによって設計された旧帝国ホテルの中央玄関部や、東京駅の丸の内側広場にあった東京駅警備巡査派出所、さらに皇居前広場から皇居に通じる石橋の上に設置されていた飾り電灯のうちの1つである皇居正門石橋飾電燈や、明治政府が中央図書館として建てた内閣文庫庁舎の主屋部分である内閣文庫などを調査することができた。文学関係者では、森鴎外と夏目漱石が暮らした文京区の借家(当時の和風住宅)や、石川啄木が家族を抱えながら創作を目指した有名な理髪店「喜之床」などを見ることができた。これらの調査は次年度以降の近代都市風景史の構築と考察に大いに還元できるものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は主に旧神田・麹町区(現千代田区)に関するフィールドワークと文献(文学・随筆・記事など)調査・収集を行った。2023年度はその成果を生かし、発展形として旧神田・麹町区関連の視覚資料の収集・整理し、リスト作りを行う。最終年度である2024年度は調査結果の論文化や口頭発表などを行うことを目指す。そのために以下の3段階の工程を設定し、テーマの解明を行う。 まず第1段階として2022年度に行った旧麹 町・神田区一帯を対象として描かれた文学言説のさらなる収集・整理を行い、次に第2段階として文学言説に対応する視覚資料(古地図、錦絵、写真、グラフ誌)の収集・整理を行う。そして第3段階として活字と視覚資料を用いた旧麹町・神田区一帯における近代の都市表象の変化を考察する。その際には本年度に引き続き、日比谷図書文化館特別研究室蔵の江戸・東京地域資料を本研究に活用し、千代田区図書館との連携を図り本研究と地域との連携を模索し、学術研究の地域への還元と情報発信の方法を探る。 2005年の中央教育審議会答申に大学の「第三の使命」として社会貢献が位置づけられ、以降大学と地域社会が連携し、教育研究資源を地域に還元する動きが活発化してきたが、本研究の申請者はそれらの動きに密接に関わってきており、その実績を生かし、大学外での公開講座等の企画立案やまた講師として参画することで、これまでの研究成果を、地域の歴史的・文化的アイデンティティの再発見にいかに接続するかを模索する。 本研究は日本の近代化の中心でもあった旧麹町・神田区一帯を、文学を中心とする物語言説と同時代の視覚資料を活用し、幕末から明治期、さらに昭和の終戦期にかけて大きく変動していった都市の風景を考察することで、新たな地域学構築をめざすものであるが、今後はその具体的な方法の模索、さらにはその完成へ向けた取り組みを行うことが大きな目標となる。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)