Project/Area Number |
22K00546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 未季 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50734919)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 指示詞 / 共同注意 / 視覚的注意 / 中国語 / ブラジルポルトガル語 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、これまで分析対象とされてこなかった指示詞の体系性に焦点を当て、指示詞使用のプロトタイプ的な場面である共同注意場面を、日本語・ブラジルポルトガル語・中国語・英語の4言語にわたって詳細に分析する。実際の共同注意場面の分析を通して「なぜ指示詞は言語普遍的に複数の代替形と統語範疇を持つのか」、「なぜ物理的な存在を間主観化し談話に持ち込む際にこのような体系が必要となるのか」を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでの指示詞研究で分析対象になることが少なかった指示詞の体系性に焦点を当て「なぜ指示詞は言語普遍的に複数の代替形と統語範疇を持つのか」という問いについて考察する。具体的には、指示詞使用のプロトタイプ的な場面である共同注意場面を、日本語・ブラジルポルトガル語・中国語・英語の4言語にわたって詳細に分析する。この分析を通じ、共同注意場面およびそれと言語的談話の接点を丁寧に分析することで「なぜ物理的な存在を間主観化し談話に持ち込む際にこのような体系が必要となるのか」を明らかにすることを試みる。 2022年度は、上述の4言語の屋外会話データを収集し、研究協力者とともに会話参加者が周囲の環境内の事物に視覚的共同注意の焦点を当てる場面における指示詞を用いた発話を抽出した。申請者は、本研究以前に、日本語自然会話の分析に基づき(i) 共同注意確立のためのやりとりは会話においてSide Activity (SA) に過ぎないこと、(ii) 話し手は相手が指示対象に向ける注意の状態を推定しながら、対象について与える情報量を調整していること、(iii) その情報量の調整のため指示詞の切り替えが生じることを明らかにしたが、2022年度の分析により、日本語以外の言語でも(i)-(iii)が起きること、しかし細かな体系の差異が発話および共同注意確立までのやりとりの構造に影響を与えることが分かった。2023年度は、比較対象として犬とその飼い主による屋外での相互行為データを収集し分析した。この分析より、相手が言語を解さない対象であっても人は共同注意確立のための発話を行うが、指示詞の直示素性(日本語におけるコ-、ソ-、ア-)の切り替えはしても質的素性や統語素性(-レ、-コ、-ノ等)の切り替えはしないこと、また複数の発話がなされたとしてもSAを含む構造を持つ会話にはならないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前の計画通り、2023年度までに、日本語に加え、ブラジルポルトガル語・中国語・英語の会話データを収集し、共同研究者とのデータセッションを通じて共同注意場面の詳細な比較分析を行い、各言語の「指示詞の切り替え」における共通点、相違点をある程度明らかにすることができた。さらに、2023年度は、4言語の比較から見えてきた人と人の間の共同注意場面の特徴をより明確にするため、人と犬のやりとり場面のデータも収集・分析した。 2024年度は、計画通り、以上の研究成果を国内外にて発表・論文として公開することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究では、実際の共同注意場面の分析をもとに、日本語と語族・言語構造が異なるブラジルポルトガル語・中国語・英語でも、実際の共同注意場面において日本語と同様の「指示詞の切り替え」が生じていること、さらにこの「指示詞の切り替え」が人と動物間のやりとりでは部分的にしか生じないことを明らかにした。具体的には、人と人との共同注意場面では、相手の視覚的注意を周囲の環境の特定の事物へ誘導する場合、話し手は複数の発話を用いるだけでなく、その発話に含まれる指示詞の直示素性・質的素性・統語素性を、聞き手がどの程度指示対象に注意を向けているかに応じて切り替える。その指示詞の選択には、分析対象とした4言語において共通の傾向があった。 2023年度は、これらの傾向が、言語習得前の乳児や、人の言語を解さない動物を相手とする共同注意場面でも観察されるのかを確認するため、人と動物の間のやりとりデータを収集し分析した。2024年度は、4言語における共同注意場面の分析、人と動物の間のやりとりに関する分析の公開を目指して研究を進める。 ただし、これまでのブラジルポルトガル語・中国語・英語の分析は、それぞれ1つの会話データの分析にもとづくものであり、さらに、データ収集に協力した一部の話者は日本語学習歴を有していた。日本語学習歴がない、複数のブラジルポルトガル語・中国語・英語母語話者の会話データを収集・分析することで、これまでの分析から得た結論の妥当性を検証する必要があるが、研究期間内にそのようなデータを収集し分析することは困難である。したがって、自然会話の分析に加え、母語話者を対象とする実験・調査を並行して行い、研究成果の妥当性を高めることを試みる。
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