Project/Area Number |
22K00565
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies (2023) Kindai University (2022) |
Principal Investigator |
大西 博子 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60351574)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 呉語 / 入声調 / 舒声化 / 四甲 / 南通 / 声調 / 入声 |
Outline of Research at the Start |
中国語には、かつて入声(にっしょう)と呼ばれる声調があった。しかし、現代中国語には、一部の方言を除いて、すでに消滅してしまっている。 呉語は中国語10大方言の一種で、主として江蘇省南部・上海市・浙江省全域に分布する。入声という声調は依然として存在するが、一部の地域では、他の声調(舒声調)にかなり接近し、消滅に向かう過渡的な段階にある。 本研究では、こうした入声の消滅に向かう傾向(入声舒声化)について、音響音声学的な手法と方言間の比較分析でもって、入声舒声化の発生原理を追究することを目的とする。 本研究の成果から、入声消滅の原理を解明し、現代中国語で失われた入声の早期の姿を再構することを目指したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、先行研究(2022年度研究成果)で得られた入声舒声化の発生原理に関する仮説「入声内部の声調システム(陰入と陽入)が一定の区別を維持するために引き起こした音高調整により舒声化が促された」を検証することを目標に研究を進めた。 具体的な手順として、まずはより多くの録音データを収集し、仮設を実証するための下準備から始めた。その後、単字調と双字調における入声対舒声の音高(後続母音のF0)と音長(後続母音の持続時間)関係を比較分析し、北部呉語における入声舒声化のしくみについて整理し直した。 その結果、入声内部(陰入と陽入)の動きと舒声との関わりについて、より詳細な観察が行えた。舒声化発生原理の仮説を実証するまでには至らなかったものの、先行研究で得られた結果について、補足修正することができた。 補足した内容は、陰入と陽入の舒声化傾向と進行度の違いである。陰入は舒声と音高差を縮める傾向、陽入は舒声と音長差を縮める傾向が顕著である。陰入にも舒声との音長差を縮める傾向は見られるが、双字調の後字でしか観察できない。一方、陽入は、双字調の後字だけでなく、前字でも舒声化傾向が観察できる。また入声対舒声の音長比率を分析した結果、双字調の後字の陽入の舒声化が最も進行し、続いて後字の陰入、その次が前字の陽入で、前字の陰入の舒声化が最も遅れることがわかった。 修正した内容は、舒声化の進行を測る分析方法である。先行研究では、入声対舒声の音高差と音長差でもって舒声化の進行度を分析していたが、音長差が小さくても音高差は依然として大きいケースも観察でき、音長変化と音高変化との間に相関性は見いだせない。よって、入声内部の音高変化により舒声化が促されると考えるには無理があることがわかった。舒声化の進行は、音高変化よりも音長変化との関りが強いが、果たして音長変化を促す要因は何なのか、その解明が今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度における計画では、先行研究で得られた推論を検証することであり、その目標はおおむね遂行できたが、得られた成果は、先行研究の補足修正にとどまり、本研究の目的である「舒声化の発生原理解明」には至らなかったから。また研究成果の発表が、学会ではなく研究会での口頭発表にとどまり、論文としてまとめたものの、昨年度の掲載には間に合わなかったことも理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度における計画では、入声の音長変化を促す要因の解明を目標とする。昨年度は、入声対舒声の音長比率を求め、舒声化の進行レベルを測るだけの分析に終わったが、今年度は入声対入声、舒声対舒声の音長比率も計測し、双字調における音声リズムが舒声化の進行レベルに応じてどう変化していくのかを分析する。具体的には、上海、二甲、如皋、哈爾濱の4地点における双字調の録音データ収集から着手し、その後、従来と同じ手法で音長比率を求める。その後、双字調の音声リズム(長短、強弱)と舒声化の進行レベルとの相関性を分析する。以上の研究成果は、10月開催予定の国際学会において発表する予定。
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