Project/Area Number |
22K00595
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
仁科 明 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70326122)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 否定 / 推量 / 未来 / 過去 / テンス / モダリティ / 証拠性 / 叙法形式 / 未然形 / 非現実事態 / 連用形 / 現実事態 / 古代日本語 / 述語形式 / 文法カテゴリー / 意味 |
Outline of Research at the Start |
古代日本語の述語形式の体系を考える一環として、個々の述語形式の意味記述を展開しつつ、近年の言語学分野での議論の進展をおさえながら、述語に関連する文法カテゴリー(とくにテンス・アスペクト・ムードおよび証拠性)の内実を再考していく。 また、そうした議論を踏まえて、研究代表者の考える古代日本語の述語形式の体系を、言語学的な概念や方法による研究とすりあわせ、翻訳する作業をすすめる。最終的には、時間性、様相性、証拠のあり方といった意味が、なぜ、いかに、述語形式とかかわるのか、といった問題にも考察をすすめる。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度から引きつづき、今年度も、a)未然形に続き、非現実領域にかかわる述語形式(のとくに認識・判断系)の用法に関する検討と、b)連用形に続き、現実領域(とくに過去の領域)にかかわる述語形式の用法の検討とをすすめた。また、その過程で、c)研究課題である文法カテゴリに関する知見を深めることができた。 年度前半は、a)の論点にかんする細部の修正とブラッシュアップにつとめ、各形式が非現実領域をどのように分担しているかに関する調査と考えを論文にまとめることができた。 年度の後半は、b)の論点に集中した。「き」と「けむ」を対立させてとらえる野村剛史氏の近年の研究などをふまえて、調査の対象をを「き」「けり」だけでなく、「けむ」や「けらし」に広げた結果、予定よりも時間がかかることになった。調査対象の拡大はもちろんであるが、研究代表者の考える古代語の述語体系では異なる位置づけが与えられる「き」「けり」(「現実既確認事態-確言」の形式)、「けむ」(「現実未確認事態-臆言」の形式)、「けらし」(「現実既未確認事態-確言」の形式)が過去の表現において競合する事実に対して、丁寧な議論が必要になったのである。論文化には至らなかったが、議論に一定の見通しを得ることができた。論文化を目指して、細部の修正とブラッシュアップをおこなっている。 未然形につづく述語形式(単純未来・推量・否定などにかかわる)にせよ、連用形につづく述語形式(過去・推量・証拠性などにかかわる)にせよ、文法カテゴリを自明の前提とする立場からは、形と意味の関係をとらえにくい。今年度の研究を通して、こうした問題にも一定の見通しを得られたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度あつかった形式の検討には、未然形に続く形式である「ず」「む」「まし」「じ」にせよ、連用形に続く形式である「き」「けり」「けむ」「けらし」にせよ、研究代表者が考える古代日本語の述語形式の体系の議論との関連を論ずる必要があった。これらの形式の使用の実態は、一見、研究代表者の考える体系内のでの位置づけの議論と整合しないように見える部分があり、この段階で、その関係をきちんと考えておく必要があったのである。具体的には「ず」の位置づけの問題と、位置づけのことなる「き」「けり」と「けむ」と「けらし」に重なりがあるように見える問題の解消が課題となっており、これらの点に重点をおいて検討をおこなった。 未然形に続く形式についても連用形に続く形式についても、重要な論点を明らかにできていると考えられ、今年度も研究は全体としては、研究は順調に進んでいると判断している。が、上のような事情から、どちらの議論についても、想像以上の時間がかかることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和6年度は、以下の三点を考えていく予定である。一点目は、今年度からの継続課題であり、二点目と三点目とは、本研究課題のまとめにあたる論点の検討ということになる。 一点目は、連用形に続き、意味の上では過去にかかわる形式である「き」「けり」「けむ」「けらし」に関する議論である。四形式は、述語体系内の位置づけを異にする一方で、過去の表現としては競合する関係にあり、事実の記述についても、背景の説明についても、考えるべき点は多い。用例の見直しを行いつつ、今年度行ってきた議論のブラッシュアップと論文化を目指している。 二点目は、テンス・モダリティ・証拠性といった文法カテゴリとその意味に関する検討である。これまでの検討を通して、そうした意味がどのように、古代語の個々の述語形式とかかわっているのか、という問題の検討を行っていく予定である。 三点目は、古代語の述語体系に関する議論の精緻化である。研究当初から持っていた体系に関する見通しを、本研究の成果によって具体化し、また、二点目の論点に関する考察と関連させることによって、古代語の述語体系について、文法カテゴリーを元にした記述と、研究代表者の考える全体像の記述とのすりあわせを行いたいと考えている。 述語の文法カテゴリー(意味カテゴリー)を前提にした記述・研究は多くおこなわれてきているが、その存在根拠については意外に説明されることが少ない。以上(とくに二点目と三点目)の議論の追究を通して、文法カテゴリーの存立根拠のような問題に見通しを得ることを目指している。
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