Project/Area Number |
22K00602
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 英語の副詞 / コーパス言語学 / 歴史社会言語学 / Benjamin Franklin / 後期近代英語 / 英語史 / 統語論 / 言語変化 / 初期近代英語 / 多重否定 / 中英語 / 近代英語 / 歴史釈迦言語学 |
Outline of Research at the Start |
英語の歴史は、古英語、中英語、近代英語に大きく分割されるが、その言語変化の速度は一定ではない。中英語の終盤から初期近代英語(近代英語の中でも、特に1700年頃まで)にかけては顕著な言語変化が次々に起こった変動期であり、その後は緩やかな変化が現在まで続いている。本研究では、言語変化の速度感が異なる時期を複数取り上げながら、コーパス言語学と文献学の方法論を組み合わせて、変化の時代の言語使用者の意識を探る。その際に、英語史で伝統的に議論される内面史と外面史に加えて、言語使用者の意識をモデル化する試みを行うとともに、英語史全般を視野に入れることで、現代英語研究との連携を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度も、2022年度に引き続き、言語変化が起こる際の速度感に焦点を当てながら、具体的な言語現象の分析を行った。本研究の申請時の計画では、2023年度は初期近代英語(1500年頃~1700年頃)を中心に分析を進める予定であった。しかしながら、扱った-ly副詞の拡張のメカニズムを議論するにあたって、後期近代英語の分析が不可欠であることが明らかになったため、初期近代英語と後期近代英語の接続期である18世紀を中心に調査を進めた。 exceedingly goodに見られるような-ly副詞は、-lyを伴わないexceeding goodのようなzero副詞(形容詞と同形)として現れることがあり、この現象は現在では特にアメリカ英語において特徴的であると考えられている。Benjamin Franklinの書簡や自叙伝のデジタルテキストを利用して作成したコーパスを資料として用いて分析を進めた結果、-ly副詞とzero副詞の関係が副詞ごとに異なること、また少なくとも18世紀においては、必ずしもイギリス英語、アメリカ英語という区分だけではこの現象を説明できないのではないかという結論に至った。実際にはさまざまな統語的な条件などが、副詞の形態の選択に関与しているようであり、この分野の研究にはさらなる文献調査が必要となることを明らかにした。特に語彙による変化の速度感の違いが大きく、いわゆる語彙拡散の観点からさらなる議論が必要であると感じている。2024年度は、さらにこの点を深めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、概ね順調に進展していると言える。当初の計画では、2022年度は中英語期の言語変化を中心に、2023年度は初期近代英語期の言語変化を中心に研究を進める予定であったが、言語調査をより効果的に進めるためには、2024年度に計画していた後期近代英語の分析を先に進める必要があることがわかった。このため2023年度は後期近代英語に焦点を当てた研究を行うこととなり、この点が変更点ではあるものの、全体としては、概ね予定した形で研究が進展していると言うことができる。2023年度の-ly副詞と-lyを伴わないzero副詞の後期近代英語期における競合関係を扱った研究については、その成果の一部を、2023年6月にブリュッセル市内で開催された12th Historical Sociolinguistics Network (HiSoN 2023)(歴史社会言語学ネット―ワーク第12回大会)で発表した。会議の参加者と言語変化の速度感についての意見交換をすることもでき、さらにこの分野を深く掘り下げるための示唆を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に扱った-ly副詞とzero副詞の関係は、中英語後期から現代英語に至るまで、継続的に議論されるべきテーマである。このテーマを柱にしながら、中英語後期から現代英語に至るまでの言語変化のあり方について、時代を貫く視点を持ちつつ、具体的な言語現象についての分析をさらに掘り下げていきたいと考えている。2023年度は当初の予定と異なり、後期近代英語期に焦点を当てることになったため、初期近代英語期の分析が手薄になった。このため、2024年度は可能であれば、初期近代英語にも焦点を当てる形で、分析を進めて行きたいと考えている。一方で、2023年度の研究から、これまで比較的英語史研究者に注目されることが少なかった後期近代英語期の言語変化の重要性についても確認することができたので、この時代の英語についても十分な配慮をしながら、研究計画を検討しつつ、分析を進めて行くことが重要であると考えている。中英語後期から初期近代英語期にかけての言語変化は、少なくとも統語的な側面においては英語史のハイライトの一つであるが、後期近代英語期の具体的な言語変化を明らかにすることなく英語史全般の流れを明確にすることができないことも事実である。この点を意識しながら、さらに研究を継続する予定である。
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