明治時代中後期における農業奨励システム構築過程の解明
Project/Area Number |
22K00861
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
國 雄行 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (60234457)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 農商務省の農政 / 勧農政策 / 欧米農業の導入 / 勧業諸会 / 農家経済 / 農業政策 / 欧米農業 / 洋式農具 |
Outline of Research at the Start |
本研究は明治中後期において農政の指揮をとった農商務省が、欧米農業制度を導入し、どのように農業者を国家に取り込んでいったのか、そして欧米農業技術を駆使して、どのように在来農業を改良し、現在の農業生産の基礎を築いたのか、解明するところにある。具体的には農談会等の勧業諸会、農事通信や農区制度等の諸制度、欧米農具や欧米作物の導入について検討し、農商務省が農業者を国家にとりこみ、在来農業の改良を推進する農業奨励システムを構築していったことを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナ禍により各地の文書館等の資料保存機関に行きにくかったため、まず、従前に収集した史料をもとに、論文「農商務省初期農政の特質」を執筆した。本稿では、第一に農商務省が編纂した『興業意見』が内務省農政を引き継ぎ、農商務省の将来方針を定めた重要な政策書で、産業を保護奨励するための法規案を掲げたことを示した。そしてこれら法規は維新後に廃止された検束の復活を意味するもので、農商務省はその効力を発揮させるために農家の思想に立ち入ることが必要であると考え、不況という好機を利用して「済急趣意書」により府県に対して勤倹貯蓄の実行を要請したことを明らかにした。 第二に農商務省が勤倹貯蓄規約により農家全体に網を掛け、検束して政府の意向に従わせる方法を導入したことを示した。さらに従来、農商務省の設立は「殖産事業縮小の表現」といわれたが、その初期に展開された「農家経済ノ思想」の涵養は、勤倹貯蓄として全国の人々の心の中に浸透し、その生活を検束しようとしたことを明らかにした。 第三に農商務省初期の農政の特質として、内務省による種苗・農具等のモノの導入・改良、勧業諸会・農事通信・農区等の制度(システム)の導入に加え、人心の改良策を採用したことを示した。 第四に内務省は人間そのものではなく、その周りに存在するモノやシステム=外面(外側)から農業改良をはかったが、農商務省はこれらに加えて、褒賞と法規(検束)を駆使して人間そのもの、すなわち人間の心=内面(内側)を直接改良する政策を推進したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」に記したように、本研究の目的は次の3点を明らかにすることである。(1)農商務省は明治前期に内務省が欧米を模範として導入した農談会等を活用して農民たちを国家に取り込むとともに、農事通信や農区制度により、農業の現場を把握しようとしたこと、(2)農商務省が欧米農具と在来農具の長所短所を取捨折衷して、農作業の効率を高めようとしたこと、(3)農商務省は米作困難地には、欧米から導入した果樹等の商品作物を移植し、気候風土に適合した農業を推進して生産力を向上させようとしたことである。 本年度は、コロナ禍のため各地の文書館等の資料保存機関に行きにくかったため、まず、(1)に関し、上記した論文を執筆した。次に(2)に関し、東京都内において資料調査・収集を行った。まず、東京都公文書館の所蔵資料を調査し、三田育種場、種苗交換会、各種共進会、種苗業者、種苗配布、内外種作物試作、各地の伝統蔬菜、各府県間の種苗取り寄せ、蔬菜市場の形成等の資料を収集した。次に国立国会図書館が所蔵する資料のうち、秋田県種苗交換会、博物雑誌、タキイ種苗の資料等を収集した。そして、一橋大学が所蔵する各府県の農事調査資料を調査した。さらに、農業・食品産業技術総合研究機構の農業環境研究部門図書室が所蔵する農商務省農務局育種場編『内國産蘿蔔蕪菁一覽』(1884年発行)を、大学図書館の相互利用を活用して取り寄せ、交付された科学研究費補助金によって購入したカメラ(撮影台、撮影ライト等も含む)により複写した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進については、交付申請書の「補助事業期間中の研究実施計画」で記したように、明治中後期の農商務省の政策について、①欧米農具の導入と開墾政策の分析、②欧米作物の移植とその定着に関する分析、③農商務省が在来農業も重要視したことの立証、④欧米農業制度による農業奨励システムの構築について実証していく予定であり、令和4~5年度は、農商務省が置かれた東京と、欧米農業が積極的に導入された北海道・東北地方を中心に①、②、④について分析する予定であった。しかしながら、コロナ禍により、流通経済大学図書館や北海道大学博物館等、各地の大学図書館・博物館が入館制限を実施したため、上記したように東京都内の資料収集を行った。この調査では、東京にある農商務省の三田育種場等の資料の収集はできたが、北日本の調査が残ってしまった。そこで令和5年度は北海道を中心とする北日本の調査を重点的に行う。特に帯広周辺や旭川以北の開拓関係の資料調査を行いたい。また、③の在来農業の重視を証明する資料として 流通経済大学図書館が所蔵する祭魚洞文庫の中の農書関係の資料を調査、収集する予定である。そして、令和6~7年度は、欧米農業とともに在来農業も重視された関東地方、そして農業先進地である近畿・中部等、西日本における①~④を分析する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
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