Project/Area Number |
22K00883
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
吉川 敏子 奈良大学, 文学部, 教授 (40297172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷺森 浩幸 帝塚山大学, 文学部, 教授 (40441414)
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (00212308)
古市 晃 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00344375)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 日本古代牧 / 近都牧 / 駅家 / 三関 / 生産牧 / 備蓄牧 / 中継牧 / 名目牧 / 私牧 / 馬 |
Outline of Research at the Start |
これまでの研究で日本古代の牧を遠国の「生産牧」と畿内の「備蓄牧」に区分したのに加え、本研究課題では遠国と都との中継地にあたる畿内周縁地域(近国)の「中継牧」、牧として認可されながら実質は荘園であった「名目牧」の概念区分を加えて研究に取り組む。文献史学・考古学・地理学を専門とする研究者が共に牧の推定地を現地踏査することで、複眼的に牧の景観を復元し、文献や立地条件などから、各牧が有した機能を検討する。個別の牧の研究成果を積み上げることで、「生産牧」「備蓄牧」「中継牧」「名目牧」から成る、都を中心に同心円状に広がる古代牧の大系の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
近畿各地域の文献研究と現地踏査とを並行して進め、成果の蓄積に努めている。令和5年度はつぎの内容で3回の研究会を開催した。①古市晃「家島牧とその前史」、②吉川敏子「律令制下の軍団官馬の数についての試算」、③鷺森浩幸「西文氏と馬」。古市氏の発表は令和4年度に行った播磨国家島牧及び山陽道駅家の巡見を踏まえた総括と展望であり、巡見の成果を確認した。鷺森氏の発表は古墳時代における河内の渡来人と馬の関係を論じたものである。 吉川の発表は、8世紀の軍団が必要とした軍馬の数とそれを供給するために必要な生産牧の規模を試算するもので、律令国家が構想した軍団制を維持するためには、駄馬も含めた多数の軍馬と、それを供給する膨大な面積の生産牧が必要であったとの結論を得た。畿内にも軍団及び生産牧が置かれたことを踏まえれば、文献史料には残らない広大な生産牧が畿内にも設置されていたことになり、今後畿内の古代牧の復元を検討するための参考となるのではないかと考える。各研究会には、本研究課題の構成員以外の参加もあり、情報交換の場として有意義に機能させられていると考えている。 現地踏査では、古代三関のうちの鈴鹿関と不破関を巡見し、その立地と遺構、景観、古代官道との関係を実見した。また、近畿地方に残る古墳時代の牧の遺跡として知られる大阪府四條畷市の蔀屋北遺跡及びその周辺の史跡を巡見し、牧に敵した地形であることを確認し、史跡からは在地における勢力の在り方などを学んだ。いずれにおいても、現地の発掘担当者による案内の協力を得て、充実した情報交換をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度に巡見を実施した播磨国家島牧・山陽道駅家について、播磨地域リーダーの古市晃氏による総括を研究会で行い、逆に令和4年度の研究会で研究協力者山中章氏の報告を得た古代三関のうちの鈴鹿関・不破関の巡見を実施するなど、前年度からの研究成果と連続性をもって共同研究を進められている。また、本年度の研究会で研究代表者が報告した成果は、後述するように論文として発表できた。 研究代表者は千葉歴史学会古代史部会で開催された古代牧をテーマとする例会に参加し、下総における古代牧関連遺跡の調査の最新情報に触れ、関東における古代牧研究の研究水準を学び、あわせて江戸幕府の小金牧の史跡を巡見した。残りの良い近世の野馬除けや捕込の遺構を実見できたことは、今後の古代牧推定地の巡見の際に、既に失われた構造物をイメージしながら踏査をするのに役立つはずである。 令和5年度に丹波地域リーダーの吉川真司氏による研究会での発表及び丹波の古代牧推定地の巡見を行う予定であったが、同氏の長期リハビリを要する負傷により、発表・巡見とも令和6年度への順延となった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定が順延になった丹波地域の研究については、令和6年度中に巡見遂行の目処がついている。「名目牧」と化した摂関家の野口牧は文献史料からの先行研究があるが、その景観と近くに推定される駅家・駅路との関係などを踏査により確認する。 この他、対馬の巡見を検討している。対馬では中世には領主の宗氏が牧を経営し、多数の馬を放牧していたことが文献から知られ、かつ近代まで多くの対州馬を飼育し産業に利用してきた。現在も、この対州馬の保存の努力が為されており、史料・遺構・在来馬が揃う貴重な地域である。平地部の少ない島嶼の古代牧は家島牧をはじめとして史料に見られる。広大な関東・甲信地方の古代牧推定地とは異なる景観を確認することは、島嶼の牧の実態復元に寄与するのではないかと考える。 これまでの研究活動の中で、牧の管理維持に行われたはずの野焼きの痕跡は確認できるものかどうかということが、懸案事項となってきたが、共同研究の構成員には土壌研究の専門家がおらず、その疑問は棚上げになってきた。令和6年には土壌研究の専門家を研究会にお招きして、講演していただくことを計画している。 その他、近畿の個別の古代牧についても、各構成員で課題を模索しながら検討を進め、研究会での発表や巡見を踏まえて成果を積み上げていきたいと考えている。
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