Project/Area Number |
22K00907
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | The Institute of Buraku Problem |
Principal Investigator |
藤本 清二郎 公益社団法人部落問題研究所, その他部局等, 研究員 (40127428)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 近世行き倒れ / 病人旅人 / 流動層社会 / 民衆世界 / 生類憐み / 欠落 / 無宿 / 順礼 / 移動層社会 / 乞食非人 / 欠落・風と出 / 救療 / 生類憐み思想 |
Outline of Research at the Start |
これまでの近世社会の「行き倒れ」は病気や死を契機に社会化し、政治対応の課題となり、史料に痕跡を残した。その背景には「下層社会」と限定できない多様な性格を有する「流動層社会」(あるいは「流民層社会」)が存在したと推測される。「流動層社会」は18世紀頃より生成し、はっきりと固有の姿を現すのが19世紀段階と推定している。 本研究では、都市・農村・街道に現れる「移動層」、参詣者・乞食修業者・都市への出稼ぎ層・無宿層という多様な移動層を対象に、病気や乞食等の移動状態にも着目し、主に「貧困移動」「流民的移動」を研究する。すでに検討している西日本・中部に加え、関東・東北の事例、特徴について研究を進める。
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Outline of Annual Research Achievements |
2年目の研究実績としては、天保飢饉、天保改革期を中心としつつ、近世後期・明治初期を対象として、当該期における「行き倒れ」の前提となる民衆の移動・流動、旅人病人の「救済」と死者「処理」という諸現象の近世的特質、「流動層社会(流民層社会)」の段階的変化、到達段階を解明することを目的として、(1)関係史料の収集・現地踏査、(2)史料の解読、分析、論文化を行った。 (1)については次のようである。①石見国邇摩郡福冨家文書(国立歴史民俗博物館所蔵)の閲覧・撮影(6月)、②踏瀬宿を含む奥州路に位置する福島県白河市・泉崎村(箭内家文書旧蔵地)等の踏査・聴き取り(7月)、③行き倒れの発生した越後国頸城郡に当たる新潟県上越市柿崎区・岩手区(佐藤家文書旧蔵地)の踏査、聴き取り(8~9月)、盛岡藩『家老家雑書』に登場する地名に該当する岩手県二戸市・九戸村の踏査・聴き取り(9月)、④水戸街道藤代宿に当たる茨城県取手市藤代地区の踏査・聴き取り(12月)を実施した。また、当該地域の活字化された史料を図書館で博捜し、東京都立中央図書館で図書・活字史料の追加調査を行った。 (2)①大和国添上郡今西家文書等(奈良県立図書情報館所蔵)、②奥州踏瀬宿箭内家文書・白河領根本家文書等(国文学研究史料館所蔵)、③越後国蒲原郡佐藤家文書等(同前)、④下総国藤白宿飯田家文書(同前)、⑤石見国福冨家文書(国立歴史民俗博物間所蔵)、⑥出雲国日根郡谷河村和田家文書等(和歌山大学所蔵文書)、⑦新出の「紀州牢番頭家文書Ⅱ」の内、無宿者に関する記録の解読・入力を行い、分析を進めた。また「盛岡藩雑書(家老席日記)」(刊本)の出奔・他出者関係史料(活字)の電子入力化を行い、分析準備を進めた。この内②の史料を用いて論文2篇、⑦の史料を用いて論文1篇を発表した。また次年度5月開催の学会・研究会で発表の報告を準備した(⑤⑥を使用)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度進捗の遅れが生じた(そのため未使用額が発生した)が、本年度においては適切な計画の下で、当初から予定されていた東日本各地の現地踏査を着実に実行することができ、遅れを取り戻すことができた。 奥州路踏瀬宿の行倒人・流動層の分析、論文作成のため、国文学研究資料館で昨年度以前に撮影した史料以外に、4回の補充調査・撮影を実施し、行き倒れに繋がる移動(流動)と死去時の埋葬についても多角的に検討することのできる史料を博捜した。その成果を論文2篇に反映させた。これによって奥州における移動と行き倒れ、救済の特徴を把握することができた。計画には入っていなかったが、石見国福冨家文書に絶好の関係史料が含まれていたので、早期に関係文書を撮影し、解読分析した。次年度5月開催の学会で報告する準備が整った。山陰地方の分析が可能となり、芸備地方を扱った既報論文と併せて、中国地方全体の継送りシステム・文書様式(新発見)を確定することができた。 紀州における無宿者の分析は、城下町田辺の分析を行う計画であったが、新しく発見された紀州藩「牢番頭文書Ⅱ」(和歌山県立博物館所蔵)に天保期~明治初期の無宿者の記録が含まれていたので計画を変更し、目録の作成と全点撮影に協力し、同館『研究紀要』に関係論文を発表した。既発表の文化期の無者者に続き、その後の無宿者の実態が解明された(天保期の増大と領内農村部に流動的に存在)。 これらの新史料の分析、論文化を優先したため、昨年入手した『盛岡藩雑書』の活字史料の分析は、電子入力による準備を整えるに止まった。また越後国や下総国、また大和国や紀州の事例に関する史料の解読はおおむね済んだが、分析と論文作成が遅れた。しかし好個な史料を活用して、重要な成果がいち早く得られたといえる。全体として、遅れを取り戻し、おおむね順調に進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年の計画としては、収集すべき史料は確保され、多くが解読されているので、行き倒れ・流動層に関する残りの事例(中部・関東や畿内の一部、紀州の城下町田辺の事例)について分析し、数編の論文としてまとめる。3ヶ年の研究成果論文に加え、以前の行き倒れ関係論文との体系性を図り、論文集の形の報告書をまとめる。 農村部に関する史料群としては、ⅰ)越後国佐藤家文書(頸城郡の事例)、ⅱ)下総国飯田家文書(藤代宿の事例)、ⅲ)大和国今西家文書(経済先進地の事例)、都市部の無宿者関係史料としては、ⅳ)『田辺町大帳』『紀州田辺御用留』(紀州田辺城下の事例)についての分析を進める。ⅴ)下層の武家・奉公人を対象として盛岡藩の「風与出」現象についても検討する。おおむね1~2ヶ月単位で各史料群の分析を遂げ、論文化を図り、研究会等で報告する。後半期12月頃には総括作業を行い、論集としての体系性を確保するべく、体裁を整えるよう努める。 以上のように、天保期を中心に民衆の対応、民衆的世界の多面性(介抱・継送りと排除)に留意しつつ、移動(流動)、領主的「救済」、死者「処理」等について分析を行い、近世後期社会の特質として「流動層社会(流民層社会)」(仮説)の構造、段階的変化、到達段階を解明する。 なお、石見国安濃郡・邇摩郡の継送りに関し、街道を踏査する旅費(10万円)や、補助労働を確保して活字史料の電子化入力に要する人件費(10万円)、報告書印刷経費(40万円)のほか、物品費等10万円、合計70万円を予算執行の目処とする。
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