18世紀末から19世紀初頭、清朝統治下の中国における公共政策の展開
Project/Area Number |
22K00914
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
黨 武彦 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80251388)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 中国 / 清代 / 公共政策 / 大分岐 |
Outline of Research at the Start |
中国の18世紀末から19世紀前半期の公共政策(インフラ整備政策・貧民救済政策など)を歴史的に検討する。この時代の中国は、清王朝の統治下にあり、経済的好況期である「乾隆盛世」期を経て、停滞期の「道光不況」に至る時期にあたる。社会的には、人口が急激に増加し、辺境や山地の開発が進んだ時代であった。同時代の世界をみると、欧州は市民革命を経て産業革命に移行し東アジア世界との「大分岐」が起こったとされ、日本でも各藩で諸改革がすすめられている。この転換期において、中国社会を支える公共政策がいかに展開したかを歴史的に検証し、中国が時代の変化にどのように対応していったのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国清代の18世紀末から19世紀のはじめ(およそ1780~1830)の公共政策(インフラ整備政策・貧民救済政策など)を歴史的に検討することである。この時代の中国は、清王朝の統治下にあり、18世紀初頭に完成した奏摺制度という文書行政システムによる統治の成功のもと、康煕時代の不況のサイクルを脱し経済的好況期である「乾隆盛世」期を経て、「道光不況」に至る時期の過程にあたる。社会的には、人口が急激に増加し、辺境や山地の開発が進んだ時代であった。同時代の世界をみると、欧州は市民革命の時代を経て産業革命に移行し東アジア世界との「大分岐」が起こったとされ、日本ではやはり熊本藩の宝暦の改革などの改革の時代でもある。この歴史的に非常に重要な時期の公共政策の展開を歴史的に検証し、清朝政府また中国社会が時代の変化にどのように対応していったのかを明らかにする。 令和4年度においては、18世紀の中期において華北地域で治水・水利事業、貧民救済事業を総督として企画立案し実現していった方観承という官僚の若年期の足跡について、「平郡王記室時代の方観承について」という論考において分析し、のちに乾隆帝として帝位につく弘暦とも学友であった満洲人皇族である平郡王福彭の書記としてジューンガル遠征に従軍して行政官僚としてのキャリアを形成していく過程を追い、また、彼がのちに直隸省の諸問題に対応する際にどのようなネットワークを活用したかについて、満洲旗人層や禅僧との交流に焦点をあてて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は中国乾隆帝治世の18世紀の後半の末期を研究の開始時期に設定している。乾隆帝治世前半期において活躍した行政能力が高い官僚が死去し、多くの官僚が皇帝と皇帝周辺の一部有力者に追従する傾向が強まり、そのような統治の弛緩とともに経済成長にも翳りがみえ、18世紀末には、西南地域では白蓮教徒による大規模な反乱などが起こる。つまりは転換期の最初である。この時期から1830年前後つまり、皇帝の交替により一時的ではあるが統治に求心性を回復させつつも、銀の高騰・インフラの維持不調(気候変動や官僚の綱紀弛緩による)などの影響で社会の不安定が増していく時期まで、このおよそ半世紀の時期の公共政策分析が主眼となる。 分析対象の地域的としては、従来研究の対象としてきた北京周辺の華北地域から着手している。首都に近いこの地域は社会がより成熟した江南に比較して、中央政府の政策の影響がダイレクトにおよび、また、その反応についても史料に残りやすいためである。 現状としては、18世紀後半の中期にいたる時点の分析をすすめている。なぜならばこの時期に前近代中国特有の公共政策の萌芽が見て取れるからである。18世紀末期に至り、それらが一旦頓挫していく過程をあらためて明らかにしているところである。研究対象の時期については、ひきつづき本研究の研究期間の半ばに至るまでは継続して18世紀後半中期の研究を蓄積していく予定である。分析対象の地域については、当初の目的通りに華北地域を対象としている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進について、史料的な側面においては、政策決定や政策遂行の過程で一次的に生み出される行政文書史料である档案史料を用いることにより、まずは公共政策の実態・実相を明らかにする。同時に、政書や地方志に残されている記載や証言をもとに、実施された政策が地方レベルでどのような実質性と継続性を有したのかを明らかにする。この手法は、すでに、義倉の設置と廃止の状況を地方志によって追跡調査を行うことにより、有効性を明らかとしている。 次の段階においては、政書や地方志の「序」や「跋」に注目する。序や跋には、儒教の経典を引用しつつ、自らの立脚点、つまりは「公共政策における儒教的な倫理の核心」が比較的明瞭に提示される。公共政策は、「経世思想」とも大きく関わるが、従来論じられた明末清初やアヘン戦争以降の経世思想は、不況や国情が不安定な時期のものであり、現れる社会現象が異なる盛世から盛世末期の転換期に至る時代の経世思想は注目されてこなかった。序や跋に残された士大夫の言説から、この時期の士大夫層の公共への時代感覚や倫理の核心を明らかにしたい。 さらに同時に、詩史料・伝記史料・筆記史料に士大夫が残した公共政策や社会状況への言及を網羅的に収集して分析を進めていく。特に詩の分析は従来考えられているよりも作詩者の本音や心情、他史料にあらわれない民間の風俗、官僚以外の人的ネットワークなどを明らかにできることをこれまでの研究において明らかにしている。その成果をより進展させたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)