Research on War Crimes in the Philippines under Japanese Occupation
Project/Area Number |
22K00927
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 泰平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70585190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒 哲 大月短期大学, 経済科, 准教授(移行) (60963270)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | フィリピン / 日本占領期 / 記憶 / 「慰安婦」 / 周縁社会 / レイテ島 / ネグロス島 / セブ島 / アジア・太平洋戦争 / BC級裁判 / 戦争犯罪 |
Outline of Research at the Start |
アジア・太平洋戦争期のフィリピンを対象とし、主には日本軍による戦争犯罪について、実証、記憶の生成、記憶の継承の三側面から検証する。 個々の事件とその戦後処理に注目することにより、戦争犯罪研究を各段に発展させるものである。その成果は、アジア・太平洋戦争を思想資源として位置づけ、大量死・大量破壊にたいする反省的思想をより強固にし、平和な社会を維持すべく不断の努力を促すものである。 とりわけ国連安保理常任理事国ロシアによるウクライナ侵攻が行われている現状を鑑みれば、本研究は極めて重要である。 ひいては日本やフィリピン、そして国際社会に対して知的かつ精神的により豊かな社会発展の基盤を提供する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は岡田泰平と荒哲2名による共同研究である。共同作業としては、2022年11月末のPhilippine Studies Conference in Japanという国際学会で、フィリピン日本占領期研究のパネルを組んだことにある。これは、日本占領期研究の世代間の継承を意図したものであり、1990年代の研究の到達点を確認し、その発展のきっかけとなることを目指した。フィリピン・日本の研究者で、1980年代末~90年代にかけて行われたトヨタ財団の共同研究に参加したシニアの研究者も同じパネルに登壇してもらった。なお、同国際学会は、岡田が実行委員長となり、岡田の本務先で開催された。 岡田はその成果として、3年越しの共同研究を完成することができた。セブ・サンカルロス大学の研究者ホセ・ベルサレス氏とセブの日本人史についての研究を行ってきたが、2023年3月に著書を刊行することができた。100頁ほどの短い本だが、とりわけ日本占領期については「戦記もの」を含めて、幅広く日本語資料を渉猟したので充実したものになった。 荒は、延べ数週間のアメリカでの調査を行った。すでに著書として公表したレイテの事例の次の課題として、糖業が盛んであったネグロス島の社会史に取り組んでいる。本研究との関連でも、現地研究者との共同研究を準備している。また、日本占領期レイテにおける、フィリピン革命の思想上の継承についての考察も行った。 そのほかには、フィリピン人「慰安婦」運動の資料収集も行っている。また、憲兵隊の暴力についての論考も発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年次の大きな目標は、2022年11月のPhilippine Studies Conference in Japanを成功させることだった。コロナ禍が継続している中での開催だったが、対面参加者135名を含む235名が参加し、150以上の研究発表が行われた。フィリピン研究の深化と広がりが感じられる機会となった。本研究との関連では、歴史学分野とりわけ日本占領期についての研究を活性化させることだったが、この分野でおよそ十数本の発表があり、この目的は達成されたと言えよう。また、本科研でもパネルを組み、4本の発表とディスカッサントで構成され、研究の継承という点では成果があった。 そのほかには、本科研に引き継がれてきた幾つかの課題でも大きな進展があった。フィリピン人「慰安婦」、憲兵、周縁社会における戦争、日系人というようなテーマで著しい成果を残すことができたし、新たな課題も明らかになった。 2名からなる共同研究であるが、共著本1冊、論文1本、本の章3本、国際学会の発表3回、その他学会でのコメントや一般向けレクチャーなどを複数回行っており、数の点でも十分な成果を上げることができた。 とりわけ、フィリピン人「慰安婦」については、元「慰安婦」の一次資料、主要な日本の運動団体の資料などを使い、1990年代のこの社会運動の詳細を明らかにした。次の課題としては、さらなる資料収集と整理と共に、20世紀・21世紀の社会運動論やグローバル・ヒストリーの中にこの運動を位置づけなおすことが求められよう。また、戦争裁判資料を使った研究としては、日比両国において、アジア・太平洋戦争期の暴力の象徴とされてしまっている憲兵について論究し、主要な事例から暴力が発動されていった過程と背景を明らかにできた。 現地調査としては、主にはセブ島で行い、上述のように、セブの地方史研究としては一区切りつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは戦争裁判資料の悉皆的な研究を進める。裁判は、アメリカ軍によるもの75件、フィリピン政府によるものが50件あると言われるが、被告や弁護人といった関係者、時期、裁判結果、再審の結果などを明確に整理したい。それと共に、個々の裁判についても、公判資料の読み込みや調査報告書の検討など、テーマ又は地域を絞り込み調査を継続する。現時点で40件ほどの裁判を調査してきたが、70件ほどの裁判については調査を完了したい。 また、現在、本研究に関連する研究課題としては、①「戦記もの」を中心としたフィリピン戦関係者の意識の変化と日比の「和解」、②インターセクショナリティという社会運動論上の概念をフィリピン人「慰安婦」運動に適用すること、③20世紀及び21世紀の社会運動論からみた同運動、と三点ある。これらについては、期日を守り、十全な研究成果を示したい。なお、1300点ほどあると言われる「戦記もの」については精力的に読解を進めており、すでに200点ほどは読了している。本年度中に、600点ほどは読んでおきたい。 さらには、現地調査としては、ネグロス島の調査をする。現地研究者との関係を作り、共同研究への発展を期待している。さらに、マニラ戦やルソン島南部の戦争については従来から研究の蓄積があるし、パナイ島の研究も出てきている。戦時の社会史研究として、これらの地方にも関心を払う。 これに関連して、昨年度来実感しているのは、部隊史の重要性である。というのも、様々な状況において、個々の部隊が戦闘行為や戦争犯罪に到る行為を行うのであり、現在の研究はもはや日本軍一般として論じる段階にはない。さらには、日本人団体や抗日ゲリラも極めて多様であり、これらの組織の内実が分からなければ、詳細な社会史は書けない。英語でもフィリピン戦についての研究は、フィリピン内外で公表され続けており、それらにも注目したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(11 results)