古代中国における歴史叙述の展開―文献の人物叙述と石の人物叙述―
Project/Area Number |
22K00934
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
永田 拓治 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (40623393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 人物叙述 / 形式化 / 符瑞 / 謡 / 災異 / 碑文 / 歴史叙述 / 人物伝 / 墓碑 / 行事 / 書く行為 / 読む行為 / 残す行為 / 碑文習慣 / 石刻 / 後漢三国西晋時代 / 歴史意識 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、人物叙述のフォーマットが定まった『史記』『漢書』以降の社会において、王朝史とは直接関わらない人物伝や墓碑といった人物叙述が、さまざまな立場の個人によって主体的に行われたという点に着目し、その歴史的背景として『史記』以降、人物叙述が「定まった形式」となったがゆえに、多様な叙述者による人物叙述が生み出されたとする仮説を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人物叙述のフォーマットが定まった『史記』『漢書』以降の社会において、王朝史とは直接関わらない人物伝や墓碑といった人物叙述が、さまざまな立場の個人によって主体的に行われたという点に着目する。そして、その歴史的背景として『史記』以降、人物叙述が「定まった形式」であったがゆえに、多様な叙述者による人物叙述が生み出されたとする仮説を提示している。この仮説をもとに2023年度は、形式化された人物叙述に見えるフォーマットの変化、具体的には、後漢三国西晋期における人物叙述の形式中に現れた「符瑞」「災異」「謡」に注目して以下の報告を行った。 「符瑞」「災異」については、①「漢晋期における符瑞の叙述 ― 符瑞志成立前」(第67回国際東方学者会議-「志」から みた漢唐間の政治文化 2023年5月20日)、「災異」「謡」については、②「後漢三國西晉時期謠的敘述」 (香港浸會大學饒宗頤國學院「慷慨有餘哀:中古中國的思想與信仰」學術研討會 2023年6月3日 )、③「書かないという叙述-『三国志』を事例に-」 (三国志学会 2023年9月3日)では、「符瑞」「災異」「謡」の三者の関わりについて言及した。 一連の報告では、形式化された人物叙述に取り上げられる題材が時代によって異なる点、また各時代の政治的社会的背景によって同一の題材(「符瑞」「災異」「謡」)であっても評価が異なる点を突き止めた。とくに、後漢期に叙述された後漢人士の人物像と西晋期に叙述された後漢人士のそれとが同じ人物・内容を扱うにしても評価が異なる点を明らかにしたことは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も当初予定していた中国(山東省・陝西省)での現地調査は実施できていないが、2022年度は日本(群馬県上野三碑・栃木県那須国造碑)、アメリカ(ボストン・ニューヨーク)での調査に引き続き、2023年度はイタリア・ローマ、トルコ・イスタンブールで現地調査を実施した。 本研究の目的は、1~3世紀の古代中国(後漢帝国以降三国西晋時代まで)で流行した立碑文化を、中国社会のなかで把握することはもちろんのこと、世界史的視点から相対化することにある。そのため、後漢帝国とほぼ同時代に立碑文化が栄えたローマ帝国、およびその立碑文化に少なからず影響を及ぼしたペルシア文化圏、ギリシャの碑文の調査を行った。一連の調査の結果、碑文を単なる文字史料としてではなく、モニュメントとしてとらえる研究視角がより確立されると同時に、ギリシア・ローマに加え、古代ペルシア帝国の碑刻を数多く実見したことで比較史研究の視野が広がった。なお、本実見調査では中国の碑石との違いについて、碑石のサイズ、様態、石の種類、刻印の様態(陰刻・陽刻の別)、図像と碑刻との関係などに着目して実見を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「ヒストリア」と「史」が大きく変化発展する1~3世紀という時代の共時性に注目しつつ、中国史における歴史叙述の独自性とは何かという問いに答えを出すことを目指している。 これまでの実見調査で、ギリシア・ローマにおいては古代中国をはるかに凌駕するきわめて多様な個人の事跡、および形式にとらわれない人物の叙述が石に刻まれた事例を確認できた。一方で、そのような石上の叙述が歴史叙述に反映されたとはいえない。むしろ、個人の伝記は歴史叙述に劣るもの、との認識が存在した。このような人物叙述に対する両者の態度の相違が、それぞれの歴史的特質に関わることは容易に推測がつく。 今後は引き続き、ギリシア・ローマの碑刻と歴史叙述との関わりに目配せをしつつ、古代中国におけるそれとの相違の歴史的背景に留意する。そのうえで、後漢三国西晋期に盛んに行われた人物伝(文献の人物叙述)と墓碑(石の人物叙述)とを中国における歴史叙述の特質を表象する行為と位置づけ検討を加えることで、世界史的視点から相対化を目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)