考古学と自然科学の融合的視点で考察する北部九州地域の古代製鉄
Project/Area Number |
22K00991
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
市川 慎太郎 福岡大学, 理学部, 助教 (90593195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗崎 敏 福岡大学, 理学部, 准教授 (20268973)
桃崎 祐輔 福岡大学, 人文学部, 教授 (60323218)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 北部九州 / 油山 / 砂鉄 / 鉄製遺物 / 製鉄原料 / 産地推定 / 蛍光X線分析 / 古代製鉄 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本列島の製鉄開始期(6世紀後半~7世紀初頭) 頃を示す可能性のある北部九州の鉄製遺物の始発原料を考古学・自然科学的視点から推定し、この地域における最古の鉄生産・流通を明らかにすることを目的とする。この製鉄関連遺跡から出土した鉄製遺物と周辺の砂鉄を自然科学的に分析することで、鉄製遺物の始発原料推定に関する一貫した研究基盤を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
北部九州における古代製鉄関連遺跡の多い地域として油山山麓に着目し、その周辺の砂鉄を分析した。試料の採取地点は、油山山麓の樋井川流域で5ヶ所、片江川流域で2ヶ所、那珂川流域で1ヶ所である。砂鉄は、各地点で採取した河川砂もしくは露頭の土壌を磁選することで採集した。各砂鉄試料を蛍光X線法およびX線回折法で測定し、化学組成および結晶構造を明らかにした。蛍光X線法で定量できた元素のうち、日本での鉄製遺物の産地推定に良く使用されている指紋元素に着目して、V/Fe2O3-TiO2/Fe2O3、TiO2/Fe2O3-MnO/Fe2O3およびV/Fe2O3-Zr/Fe2O3の散布図を作成した。これらの散布図を用いて、油山山麓以外の地域 (茨城、愛知、京都、鳥取、岡山、香川、島根、長崎) の岩石や河川砂から採集した砂鉄と比較したところ、油山山麓の砂鉄とその他の地域の砂鉄とを明確に分類することができた。したがって、以上の散布図を使って、油山山麓の砂鉄と鉄製遺物を比較すれば、鉄製遺物の産地を推定できる可能性が高い。 さらに、砂鉄の化学組成データの基盤を構築するために、採取地点を拡大した。具体的には、樋井川流域3ヶ所、那珂川流域2ヶ所、油山川流域3ヶ所、小笹木川流域2ヶ所、日向川流域1ヶ所、さや川流域1ヶ所、金屑川流域2ヶ所、大原海岸2ヶ所で砂や土壌採取した。また、鉄製遺物として、太平寺遺跡 (源蔵池地点), 倉瀬戸遺跡および老松神社の鉄滓を合計18点、製鉄原料の候補である太平寺遺跡の褐鉄鉱5点を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北部九州における古代製鉄関連遺跡の多い地域として油山山麓に着目し、この地点の砂鉄 (樋井川流域で5ヶ所、片江川流域で2ヶ所、那珂川流域で1ヶ所) と他の地域 (茨城、愛知、京都、鳥取、岡山、香川、島根、長崎) の砂鉄の化学組成を散布図で比較した。散布図は、日本での鉄製遺物の産地推定に良く使用されているもののうち、V/Fe2O3-TiO2/Fe2O3、TiO2/Fe2O3-MnO/Fe2O3およびV/Fe2O3-Zr/Fe2O3を作成した。その結果、油山山麓とその他の地域の砂鉄を明確に分類することができた。したがって、油山山麓の砂鉄の化学組成には地域性があることが示唆された。この散布図を用いて、鉄製遺物と砂鉄を比較することで、油山山麓周辺に由来する鉄製遺物が、油山山麓の砂鉄に由来するか否かを推定できる可能性がある。さらに、砂鉄の化学組成データの基盤を構築するために、樋井川流域3ヶ所、那珂川流域2ヶ所、油山川流域3ヶ所、小笹木川流域2ヶ所、日向川流域1ヶ所、さや川流域1ヶ所、金屑川流域2ヶ所、大原海岸2ヶ所で試料を採取した。また、鉄製遺物である鉄滓18点 (太平寺遺跡、倉瀬戸遺跡、老松神社)、砂鉄以外の原料候補である褐鉄鉱5点 (太平寺遺跡) を入手できたことも重要な成果である。以上のことから、本研究は総じてほぼ予定通りに実施できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、北部九州に由来する砂鉄の化学組成データを蓄積するために、新たに追加した砂・土試料を磁選して砂鉄を取り出し、蛍光X線法やX線回折法などで測定する。併せて、鉄滓18点や褐鉄鉱5点も同様に分析し、前述の散布図で比較する予定である。 さらに、鉄の錆が分析に与える影響も検討したいと考えている。鉄製品は埋蔵の過程で表面が錆で覆われるが、歴史資料の場合、破壊分析が困難な場合がほとんどなので、蛍光X線法による非破壊分析を実施することが多い。錆で覆われた鉄製品を用いて、錆除去前後の化学組成の違いが、指紋元素を使った散布図の傾向にどのような影響を与えるのかを検討する。なお、試料は、福岡県筑紫野市の畑地で採集した鉄鎌および長崎県松浦市の海岸で採集した鉄片であり、いずれも錆で覆われている。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)