Project/Area Number |
22K01136
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 友也 金沢大学, 法学系, 教授 (80401793)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 立憲主義 / 天皇 / 実質的意味の憲法 / 自由と責任 / 憲法解釈方法論 / 憲法典 |
Outline of Research at the Start |
「簡潔・厳格型憲法典」では,統治者は自らを拘束する規範を発見できず,国民もまた統治者による憲法違反の有無を判別できないという批判がある。この批判に対して,本研究は,「簡潔・厳格型憲法典」による「立憲主義」実現の理論的・制度的諸条件の展開可能性を示す。そのため,下記「研究の目的」①~③に対応した以下の研究方法を取る。①日・独の憲法判例・学説の(再)検討,②日・米・アイルランドの「エリート・プラグマティズム」(エリートによる憲法典解釈により現実と憲法典との乖離を糊塗する思考)の実態分析,③日・仏・カナダの制度研究を通じた,積極的かつ柔軟な違憲審査制度の構想。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、統治エリートによる憲法解釈をいかに統制すべきかという観点から、(前)天皇の「自由と責任」による国民統合に向けた積極的活動を評価する近時の諸学説を批判的に検討する論考を公表した。従来、憲法学説は、「国政に関する権能」(憲法4条1項)を有しない天皇を「ロボット」「虚器」として解し、その政治的影響力を極小化するのが憲法上の要請と解する傾向にあった。しかし、近時の一部学説は、逆に、天皇の国家機関ではなく「人間」としての側面に再び光を当て、「象徴天皇」により積極的な国民統合の役割を認めようとする。 しかし、仮に国民主権の「暴走」があっても、これに対するカウンターバランスを天皇に求めるのは、憲法解釈の限界を超えるというべきである。憲法上一般国民とは異なり、基本権を保障されていない天皇に対して、天皇の「自由と責任」に基づく政治的行動を期待するのは筋違いである。憲法は、前述の通り、天皇に国政権能の行使を禁じる一方で、国事行為「のみを」(4条1項)行うよう命じている。「象徴」規定(憲法1条)とか私人としての「自由と責任」を根拠として、天皇に国政に関するカウンターバランスを取らせる余地は憲法上無いといわねばならない。実際の国政に対する政治的不満を天皇に託すかのような憲法解釈は、かえって現憲法下の国民主権を掘り崩す危険性がある。「人間天皇」による積極的な象徴作用を、内閣から相対的に独立した宮内庁に補佐させようとする提案もある。しかし、同庁は、内閣総理大臣の「管理」の下にある法律上の機関に過ぎない(宮内庁法1条)。戦後、強力な政治的影響力を有する長官を失った同庁が内閣への従属を次第に強めていった現状に照らすと、宮内庁に「人間天皇」に対する自律的な補佐が可能だとは到底解し得ない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天皇による積極的な象徴作用の可否という論点を通じて、統治エリートによる憲法解釈への統制のあり方という研究課題への考察を深めることができた。並行して、憲法典を実質的意味の憲法との相互往復的解釈の形成と限界という本研究課題の当初の問題意識との連関を維持できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究の成果を踏まえて、統治エリートによる憲法解釈の統制と適正化のための具体的な制度構想に踏み込んだ研究を行う。
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