Project/Area Number |
22K01157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (40273560)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 憲法 / 環境法 / ドイツ法 / 環境リスク / 民主主義 / 法治主義 / 環境権 / リスクマネジメント |
Outline of Research at the Start |
環境リスク・マネジメントとは、環境に被害をもたらすリスクの顕在化を防止するため、公的主体が対抗リスクとの衝突を考慮して、環境リスクの発生防止措置をとることをいう。環境リスクの顕在化防止は公的主体の責務であるが、当該防止措置は、同時に人の自由を制限し、負担を課すことになるため、それ自体が対抗リスクの原因を作る。ここにはトレードオフがある。 本研究は、こうしたリスク・トレードオフを視野に収めつつ、環境リスク・マネジメントの規律のため、一方で統治論の視点からマネジメントの組織・手続の法構造を解明し、他方で権利論の視点からマネジメントに関連する権利の法構造を解明しようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境に被害をもたらすリスクの顕在化を防止するため、公的主体が対抗リスクとの衝突を考慮して、環境リスクの発生防止措置をとるといった環境リスク・マネジメントを行う際、リスク・トレードオフ(例えば、個人の自由を制限せざるを得なくなる等)に直面しながらも、それに留意した環境リスク・マネジメントを遂行する場合の規律構造を解明しようとするものである。現行憲法下の環境リスク・マネジメントの規律は、民主主義原理と法治主義原理を前提に、一方で統治論の視点からマネジメントの組織・手続の法構造によって支えられ、他方で権利論の視点からマネジメントに関連する権利の法構造によって支え られる。本研究は、統治論と権利論の両面からの環境リスク・マネジメントの規律構造に焦点を当てている。 本年度も昨年度に引き続き権利論に重点をおいて研究を進めたが、権利の法的構造を抽象的に取り扱うのではなくて、気候変動という特定の環境問題に焦点を当て、この問題と密接な関連を有する権利論を検討した。特に、ドイツの気候変動訴訟の一環で、憲法論としても大きく取り上げられ、現在でも議論が継続している「異時点の自由保障」の問題を考察し、これについて学会で報告するとともに、論説を執筆した。 また、気候変動問題を分配的正義の観点から検討し、学会のシンポジウムにおいて研究報告を行い、フロアとの間で意見交換を行った。 昨年研究に着手した自然の権利についても、環境権との接点を意識しつつ、本年度も引き続き検討したが、その成果をまとめるのはなお今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境リスク・マネジメントに関連する権利の法構造を具体的に考察するため、本年度はとりわけドイツ連邦憲法裁判所が展開し、学説において大いに議論され物議を醸した「異時点の自由保障」を検討することによって、公益としての環境保護の権利構成の可能性をさらに探究した。世界各地で提起されている気候変動訴訟は、ドイツのものも含めて、環境保護の権利構成の発展可能性を期待させてくれるが、近年も欧州人権裁判所が注目すべき気候変動訴訟で判決を下したため、これらの動向と併せて、上記発展可能性を引き続き探究したいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
環境リスク・マネジメントの権利論については、ドイツの「異時点の自由保障」の可能性を引き続き探るともに、近時公表された欧州人権裁判所の気候変動訴訟の重要判決を取り上げて検討に付したいと思っている。また、自然の権利と環境権の関係など、まだ十分にまとめ切れていない重要な権利論についても、引き続き考察し、一定の見解を得たいと考えている。さらに、権利論にとどまらず、環境リスク・マネジメントの統治論にも着手し、統治論と権利論の接点を探る作業にも着手したいと思う。
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