「司法積極的グローバリズム」の意義と課題に関する比較法研究
Project/Area Number |
22K01165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
手塚 崇聡 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (30582621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 啓吾 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (70453694)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 公法学 / 憲法学 / アメリカ憲法 / カナダ憲法 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、グローバル化がもたらす憲法的課題に対して、司法がどのようなスタンスで挑み、またいかなる機能を果たすべきかを検討するものである。アメリカやカナダの状況を鑑みると、グローバル化に司法が積極的に対応している側面を垣間見ることができ、司法の国際交流や裁判管轄権など、司法自身がグローバル化の波に飛び込んでいくような「司法積極的グローバリズム」ともいえる状況を看取することができる。そこで本研究では、アメリカとカナダの憲法解釈方法、条約の国内的効力、司法の国際交流機能、裁判管轄権を素材に、司法積極的グローバリズムの姿を明らかにし、その意義と課題を検討したうえで、日本の司法のあるべき姿を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目である2023年度は、「司法積極的グローバリズム」の射程及び課題について、特に裁判官の能動的対応に関する検討を行った。代表者は、6月にニュージーランド(ウェリントン)で開催された国際学会(The International Society of Public Law Conference (ICON-S))に参加しカナダの中絶について報告等を行った。その際、各国の各研究者らと交流し、各国の司法の動向について意見交換を行い、国際交流機能に関する知見を得た。さらに、日本公法学会などの国内学会においても報告を行い、関係する研究者と情報交換を行った。分担者はアメリカの司法動向に照準を合わせ、特に表現の自由の場面において積極的な判断を行っていることを明らかにし、世界的にみると、それが特殊アメリカ的な状況になっていることを示した。そのことは、アメリカが司法積極主義的姿勢をとり、かつグローバルな流れの軸になろうと試みながらも、それがうまくいっていない点があることを浮き彫りにしたといえる。また、代表者と分担者は何度か研究会を開き、司法の国際交流機能には組織的交流と個々の裁判官によるものがあり、前者には、たとえば裁判所間の制度的交流、司法管轄権に基づく水平的交流、国際機関との相互作用である垂直的交流などがありうることを明らかにした。他方で、個別の裁判官の国際的な交流としては、裁判官セミナーや個別訪問などがあり、時には論文や判決を送りあうことなどもなされており、組織的交流では培われないより深い対話をもたらしうることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は海外で1回、国内で2回の会合を開き、研究者間での情報共有や課題の確認などについて、合計して3回の会合を行った。当初の予定では、「司法積極的グローバリズム」について、アメリカ、カナダ両国の議論状況などから分析を行い、その射程と課題を明らかにすることとしていたが、おおむね順調に進んでいる。また、必要に応じて類型化を試みることを予定していたが、本年度までにおいて、組織的交流と個別の裁判官ごとによる交流それぞれについて、交流の方法や具体的な内容などの類型化を行うことはできている。しかし、国ごとの特徴を明らかにして、それぞれの特徴を踏まえた上での完全な類型化を行うことはできていない状況にある。もっとも、研究実績の概要でも示した通り、「司法積極的グローバリズム」をもたらす対応策として、各国における裁判官が実際の交流方法などについては明らかにすることができており、この点を明らかにすることができたことが、今年度の研究の成果である。この成果をもとに、次年度の検討課題である、日本の今後の司法のあり方を「司法積極的グローバリズム」から導き、新たなモデルを提示することは十分に可能であると考えている。そのため、最終年度においてモデル提示を行うための基盤は形成できており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、「司法積極的グローバリズム」に関するこれまでの研究を整理し、日本の新たなモデルを提示することを予定している。具体的には、初年度の研究成果であるアメリカ、カナダにおける状況の整理と、本年度の研究成果である能動的対応の類型およびその内容を踏まえて、日本における「司法積極的グローバリズム」のあり方を検討する予定である。そのための方法としては、まず海外の憲法研究者を日本に招聘して知見を得ることも予定している。さらに、そこで得られた知見とこれまでの研究成果を踏まえて、研究者間で情報共有等を行う予定である。そして、こうした情報共有だけでなく文献調査も引き続き行うことにより、当初の予定の通り、日本における「司法積極的グローバリズム」の意義を提示し、そこから導かれる新たなモデルを提示を検討する予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)