Project/Area Number |
22K01228
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
栗田 晶 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30547336)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 弁護士の裁量 / 指図遵守義務 / 役務提供契約 / 医師の裁量 / 治療方法の決定 / 委任契約 / 専門家 / 指図 / 裁量 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、事務処理方法の特定に向けた委任者の要求のうち受任者を拘束する意思が明確なものを「指図」とする。専門的受任者との委任契約では、専門性の故に委任者は当初から明確な指図を行い得るわけではなく、委任者の要求を契機として、受任者が委任者意思を確認し、要求を「指図」へと明確化する過程が必要となる。 本研究は、「指図」へと明確化される以前の「要求」に着目し、委任者の要求が受任者の裁量に及ぼす影響を明らかにする。医師及び弁護士を素材に、両者を比較しつつ考察を行う。委任事務処理過程における委任者意思の重要性を明らかにする一方で、事務処理方法の決定を指図に委ねる枠組みの限界についても明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、弁護士及び医師との委任契約を素材として、専門的受任者との委任契約において事務処理方法の特定に向けた委任者の要求が受任者の裁量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。医師と弁護士とではその裁量の枠組みにいかなる違いがあるのかを考察の対象とする。前年度に実施した診療契約上の治療方針の決定における医師の裁量と患者の要求に関する考察を踏まえ、2023年度は、弁護士との委任契約を素材として、特に事件処理方法の決定における弁護士の裁量と依頼者の要求との関係に関する考察を行った。 診療契約においては包括的な契約を前提に個別の診療方針の決定は医師の裁量に委ねられる。これと関連して、インフォームド・コンセントにおける患者の意思決定も医師が裁量により決定した治療方法を自己の身体に受入れるか否かの点に向けられることになる。これに対し、弁護士との委任契約では、個々の事件処理方法ごとに個別に契約が交わされることが多く、事件処理方法に関する複数の選択肢の間での決定も(弁護士の裁量ではなく)依頼者の意思決定に委ねられることになる。 そのうえで、本研究では、個別契約の枠内で、依頼者が技術的な事項について弁護士に一定の措置をとることを要求した場合、弁護士はこれを遵守する義務を負うか否かについて考察した。近時、訴訟手続における主張・立証について依頼者が指示を行った場合に弁護士がいかなる範囲でこれを遵守する義務を負うかが問題となった事案が2件現れており(東京地判平成29・2・24平成27年(ワ)第23075号、大阪地判令和4・9・20令和3年(ワ)第2356号)、いずれも主張内容の構成を弁護士の裁量に委ねているが、こうした枠組みを理論的にどのように基礎づけることができるかについての考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで訴訟手続における主張・立証について依頼者が指示を行った場合に弁護士がいかなる範囲でこれを遵守する義務を負うかが問題となった事案は乏しかったが、2023年度には、そうした問題について判示した裁判例(大阪地判令和4・9・20〔令和3年(ワ)第2356号〕)についても分析することができ、本研究との関係における重要な検討材料を得ることができた。もっとも、検討材料を得るためにさらに聞取り調査を行う必要があり、この点でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、聞取り調査も行いつつ、弁護士との委任契約における依頼者の要求と弁護士の裁量との関係についての考察の成果をまとめる。その後、医師と弁護士とを比較しつつ、専門的受任者との委任契約において依頼者の要求や指示との関係で受任者の裁量はいかなる範囲で確保されるべきかについて考察を行う。税理士や司法書士など他の専門的受任者との委任関係に対する影響も考慮しつつ、専門的受任者のもとに裁量を生じさせる理論の構造について、そのモデルを明らかにする。
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