Project/Area Number |
22K01230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西内 康人 京都大学, 法学研究科, 教授 (40437182)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 法の経済分析 / 民法 |
Outline of Research at the Start |
本研究の学術的背景となっているのは、アメリカ法を前提として発展してきた法の経済分析は大陸法と不整合な部分があるため、大陸法に属する我が国の民法に照らして法の経済分析の議論状況のうちどの部分を重視するべきかの指針がうまく組み立てられない状況になっているとの問題意識である。そこで、法の経済分析が発展してきたアメリカ法的な背景事情とはどのようなものか、また、どのような点に注意すれば大陸法系に属する我が国の民法に示唆を与える基礎理論を構築できるか、を明らかにすることが、本研究の概要となる。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究の主たる成果である日本法に則した法の経済分析の分野では、「共同不法行為の法と経済学(上)(中)(下)」を刊行した。ここでは、経済分析から見た因果関係論の意義を明らかにした上で、これが擬制・推定される共同不法行為の経済分析を行った。このうち因果関係については、基準時の問題を扱うほか、大別して二つの因果関係概念を析出した。すなわち、(a)潜在的加害者によって作出された危険が被害に現実化しなかった場合を含めて過失によって増加した費用の期待値を各潜在的加害者に支払わせること、および、(b)潜在的加害者のうち、その危険から被害が現実化した者に対してだけ、被害者からの損害賠償請求権を認めること、この二つである。このうち(a)よりは(b)の方が制度運用費用の面で望ましいが、過少抑止を防ぐために(1)を併用する余地があり、このような分析は日本法の枠組みにも調和しうる点を示した。共同不法行為については、Porat and Steinによる議論を取り上げ、上記(a)や(b)で根拠づけられる部分を超えて、「情報侵害法理」により加害者の帰責性を認めつつ因果関係の推定を拡張する方向を示した。そして、こうした推定は日本法の議論状況にも合致すること、原因惹起力の閾値を設けることには他の加害者の因果関係に関する情報の侵害を理解する上で意味があること、時間的場所的接着性を求めることは情報侵害の最小費用回避者を考える上で意味を持つこと、加害者範囲の特定は情報侵害の最小費用回避者性や情報侵害自体の有無から考えることができること、情報侵害は共同不法行為に限られない意味を持ち得るがなお慎重な検討が必要であること、これらを示した。 以上のほか、「AIと約款規制」でAI時代が持つ約款規制への示唆を経済分析により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法に則した法の経済分析を行うことを目的とする本科研では、法の経済分析の手法を実際の日本法の立法論・解釈論に生かしていくことが重要である。この表れとして、「共同不法行為の法と経済学(上)(中)(下)」を刊行したほか、「AIと約款規制」を刊行した。 また、本科研における副次的成果としてアメリカ法での法の経済分析の動向を明らかにする「論文紹介 情報費用理論に基づくナッジの再検討(Oren Bar-Gill & Omri Ben-Shahar, Rethinking Nudge: Information-Costs Theory of Default Rules, 88 U. Chi. L. Rev. 531-604 (2021))」、法の経済分析に即して民法解釈論を論じる「民法の解釈―紛争解決と社会統制の関係を巡る理解の試み」、その他日本法のありようを考える各種判例評釈を刊行することができた。以上は、アメリカ法に照らして発展してきた法と経済学を、日本法の現実の在り方に照らして考えるという本科研の趣旨を実現するものである。 そして、こうした成果を下敷きに、現在は「法と経済学」の教科書執筆作業を進めている。「法と経済学」の教科書執筆においては、以上のような日本法の分析を下敷きにした法の経済分析の応用が生かされる見込みである。執筆作業はおおむね順調に進んでおり、早ければ今年度中にも成果として教科書を刊行できる見込みである。 さらに、法の経済分析を活かした別の副次的成果として、日本法の判例評釈を法の経済分析に代表される所有権の機能にさかのぼったアプローチから考える論考を執筆中であり、こうした成果も今年度中に刊行できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進行状況でも述べたように、これまで行ってきた日本法に則した法の経済分析の手法を応用しつつ、「法と経済学」の教科書を執筆中である。これは、比較法としての法の経済分析を目標とする本科研にとって、一つの集大成となる業績であり、「共同不法行為の法と経済学(上)(中)(下)」をはじめとして本科研でも実績として刊行してきた業績を踏まえて、これを簡潔な形で一般向け書籍として、とりわけ学部生向け書籍として広く社会に還元できるものになる見込みである。この執筆のための会議を現在は重ねており、また、原稿も出そろいつつあるので、今後は教科書の体裁、図表・グラフの挿入の有無など細かい打ち合わせを重ねつつ、広く社会に成果を還元できるような読みやすい書籍として今年度中に発売することを目指して、打ち合わせと執筆・修正作業を進める予定である。 同時に、日本法の判例評釈を所有権法の経済分析を下敷きにして行う原稿も執筆中であり、これについても今年度中には刊行できる見込みである。 また、上記の判例評釈や教科書執筆作業で調べたことの応用として、所有権の機能に照らして所有権が限界づけられる場面、具体的には権利濫用として物権的請求権が廃除される場面につき、物権的請求権が排除される理由とこうした排除を認定するための具体的な基準を抽出する論文を執筆中である。これは、研究会報告などでブラッシュアップした上で、掲載媒体は決まっていないが、いずれかの媒体で論文として出版する予定である。 さらに、経済分析を導入するために日本法を深掘りして分析していることとの関係で、日本法における問題点、特に寄託における問題点を考える論考を執筆中であり、これは今年度の金融法学会で報告し、論文の形にすることを予定している。
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Report
(1 results)
Research Products
(17 results)