新たな国際取引紛争解決システム構築の必要性と日本の貢献
Project/Area Number |
22K01239
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
伊藤 壽英 中央大学, 法務研究科, 教授 (90193507)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | グローバル・サプライチェーン / ネットワーク / 関係的契約 / 取引費用の経済学 / コントラクト・ガバナンス /  コーポレート・ガバナンス / 国際商事仲裁 / デュープロセス・パラノイア / 国際取引紛争 / 国際的ADR / 国際調停 / サプライチェーン / 企業取引 |
Outline of Research at the Start |
国際的なサプライチェーンを例に、多数の企業間連携取引関係の法的性質を明らかにし、コロナ禍によるサプライチェーン分断から生ずる国際取引紛争の解決において、国際的実体法規範と国際的ADRの実務の双方からアプローチし、現在の問題点の分析と、法の支配確立のための制度構築の必要性について研究を行う。
|
Outline of Annual Research Achievements |
コロナの蔓延やウクライナ戦争を契機とするグローバル・サプライチェーンの分断を例として、サプライチェーン(バリューチェーン)の特質を、自律分散型ネットワークと位置づけ、その特徴を契約法・組織法に当てはめるための基礎的研究を行った。具体的には、ネットワーク構造が相互依存・創発・継続的信頼関係を前提とすること、ネットワークを構成する取引が長期的継続的な信頼を前提とするところから、いわゆる「関係的契約」理論の適用に関する理論的分析を行った。さらに、このような事業形態が、取引費用の経済学にいう「組織と市場のハイブリッド」という性質から、その調整のためのメカニズムが必要となるが(コントラクト・ガバナンス)、いわゆる契約的企業観におけるコーポレート・ガバナンスの議論を参照できることを明らかにした。これらの知見を元に、さらに、関係的契約理論における社会的規範の発見と信義則によるスクーリングについて、日米の比較法的分析を行う予定である。次に、国際取引社会における実務として、紛争解決手段として国際仲裁がポピュラーであるが、近時のいわゆるデュー・プロセス・パラノイアによって、仲裁が訴訟化し、長期化高額化する傾向にあるところ、上記のような性質を持つグローバル・サプライチェーンの分断から生じる取引上の紛争解決には適切でないことを指摘した。この問題は、国際商事調停や国際商事裁判所といった新たな制度の構築をすることに対応すべきであることを指摘し、今後の検討課題を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバル・サプライチェーンの分断を素材に、その分析から、ネットワーク参加企業の結合や長期的継続的取引関係という特徴を明らかにしたが、それらの特徴が、80年代まで批判されていた「日本的取引慣行・日本的経営」に極めて類似しているところから、そこでの問題解決には、日本の経験を参照することが有益であることが示唆される。ただし、そのために、日本が積極的に新たな国際紛争解決制度の構築に貢献すべきであるとの理論的根拠を展開するには、最近の仲裁法・調停法の改正を含め、シンガポール調停条約やアジアにおける実務の状況についてのサーベイが不足していたと評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
サプライチェーンと同様の自律分散型事業形態としてフランチャイズがあり、わが国では、とくに信義則に触れている裁判例が多い。これらを分析し、ウィーン国際売買条約に関する裁判例と比較し、ユニドロワ商事契約原則によるガイドライン形成との比較を試みることによって、たとえば国際商事仲裁に付託された紛争の解決規範を示唆することができる。また、これに対応する紛争解決制度については、訴訟・仲裁・調停あるいは、国家法・非国家法といった縦割りの議論ではなく、国際取引社会における適切な紛争解決制度の構築が、主権国家にとっても必要であることの理論的探究が必要である。この点については、グローバル・ガバナンスの理論を参照して、少なくとも地域経済連合(TPPやINPEFなど)では、国際商事裁判所の設立とそれらの連携が有用であるとの仮説を検証する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(1 results)