Project/Area Number |
22K01288
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05070:New fields of law-related
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
三浦 正広 国士舘大学, 法学部, 教授 (90265546)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 著作者契約法 / 相当報酬理論 / 著作者人格権 / 著作権法 / 文化の創造・発展・多様性 / 著作権契約 / 著作権 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、インターネット上での著作物利用の効率化を図るための方策の1つとして、文化の創造者である著作者(著作権者)と、その文化を享受する利用者との間の著作権契約における相当報酬理論による新たなアプローチを試みる。契約自由の原則を修正し、契約的弱者としての著作者の利益を保護する理論である。 知的財産権としての側面だけでなく、学術の発展、文化の多様性を促進する立場から、情報技術社会のイノベーションとともに変容する著作権制度の将来的な方向性を見据えて、ドイツ著作権法およびEU法を基盤として、著作者契約法における相当報酬理論の日本法への適用可能性について考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ法の著作権契約における相当報酬理論を主たる研究対象としているが2019年に成立したEUデジタル域内市場(DSM)指令(2019/270)において、相当報酬理論に関する個別の規定が設けられたことにより、EU加盟国に一気に拡大されることとなった。具体的な運用方法については明らかではないが、少なくとも形式的には、著作者を契約的弱者と位置づけ、著作物利用の対価としての相当な報酬が著作者に公正に分配されるというしくみが構築されたことになる。これまでEUは、個人情報やプライバシーの保護等について一般データ保護規則(GDPR)を制定するなど、デジタル・ネットワーク社会における新たな法秩序の構築を目指してきたが、このDSM指令も、インターネットを利用したデジタル市場における著作物の流通・取引に関する新たなルールの枠組みを提示するものであるといえよう。 このような動向を踏まえて、ドイツにおいても数多くの研究論文その他の文献資料が公表されており、今年度の本研究は、昨年度に引き続き、最新の情報や議論をベースとして、相当報酬理論の可能性に関する理論的研究を継続し、これらの調査研究および理論的分析に努めた。相当報酬理論は、ドイツ法においても必ずしも確立された理論とはいえず、立法を通じて試行錯誤のなかで具体的な運用が試みられている状況である。これはEU法レベルにおいても同様であり、さまざまな場面で議論が展開されている。 他方、わが国の著作権法の理論状況は欧州と次元を異にしており、相当報酬理論に関する認識は乏しい。ドイツ法およびEU法における理論展開を紹介しつつ、当該理論の導入可能性について考察を加える研究は、実務的な意義というよりは、学術的思想として意義があるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、本課題研究は、当初の目的にしたがい、ほぼ計画どおりに進行している。当初の研究目的および研究実施計画にしたがって、最新の情報に基づく文献資料の分析、新たな立法や判決に合わせて公表される研究論文、コメンタールや判例評釈等の文献調査研究を行なうことによる理論的分析を継続的に行うことでほぼ計画どおりに研究をすすめることができた。 本課題研究は、著作権法関連分野として新しいテーマであり、ICT技術の発達に合わせて大きく揺れ動く領域でもあるので、最新の動向の情報収集を行うことは不可欠である。そのためのフィールドワークの一環として、フランス・パリで開催された国際著作権法学会(ALAI)の年次大会に出席し、学会報告および個別セッションにおいて、国際学会における議論の動向、各国の議論状況について情報交換を行なった(2023年6月)。近年の話題は、生成AI(人工知能)と著作権に関する、世界的に注目されているテーマに傾倒しがちである。わが国の著作権法では、AIデータの機能学習は、著作権の制限規定によって認められているが、このような法制度上のしくみは著作権契約の枠組み、あるいは相当報酬理論のなかで構成することも可能であり、このような理論構成は、本課題研究のテーマと密接に関連するものである。さらに昨年度と同様に翌年3月には、マックス・プランク研究所における滞在研究において、インタビューによる情報収集および文献調査研究を行なった(2024年3月)。 また、これまでの研究成果をまとめた研究論文集『著作者契約法の理論-著作権法の現代化に向けて-』(2023年刊、勁草書房)を公表することができた(JSPS科研費JP22K31288)。本研究課題の成果の一部である。
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Strategy for Future Research Activity |
相当報酬理論に関するドイツ法およびEU法の理論的分析に基づき、日本の法制度への導入可能性、およびこの制度のすすむべき方向性について考察する。昨年度までの研究成果を踏まえ、かつ、当初の研究計画にしたがい、法改正後のドイツ著作権法の状況、および新たに立法されたEU法の状況を踏まえて、相当報酬理論に関する分析的研究を継続的に行う予定である。とくにドイツ法においては、最新の研究論文等の学術文献について解釈論的分析を試みるとともに、改正法にもとづいて蓄積されつつある裁判例について事例研究をすすめる予定である。また、EU法についても、最新のEU司法裁判所の判決について理論的分析を行ないたいと考えている。 これまでの研究実績として、マックス・プランク研究所における滞在研究においては、短期間でありながら極めて効果的な成果を挙げることができたと考えている。当研究所の研究者とのインタビュー調査によって得られる情報は、インターネットを通じて得られる断片的な情報とは異なり、最新の生の情報であり、本課題研究の今後の方向性を示してくれる貴重な情報ばかりであるといえる。今後も可能な限り定期的な滞在研究を継続して行いたいと考えている。 今年度は、本課題研究期間の最終年度であるので、これまでに本研究で得られた知見を研究成果としてまとめる予定である。学会報告において、または研究論文として公表することを予定している。
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