第二次世界大戦期日本外務省の情報・宣伝活動と外交政策への影響
Project/Area Number |
22K01311
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
宮杉 浩泰 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30613450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 雄太 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (70584423)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 外務省情報部 / 外務省調査部第六課 / 外務省南洋局 / 南進論 / 在外公館 / シンガポール / 情報局 / 中立国 / ノンキャリア / プロパガンダ |
Outline of Research at the Start |
満洲事変期から第二次世界大戦終結まで、日本の外務省はその実権を大きく軍部に譲らざるを得なかった。しかし、外務省が独自に動く余地も相当程度残されていた。そこで、本研究は近年研究の進展が著しいインテリジェンスや対外宣伝・広報活動(プロパガンダも含めて)の領域で外務省が行った活動を調査する。時期は1931年から1945年に絞り、個々の在外公館の情報活動に着目し、とりわけ情報収集の実際の現場で重要な役目を担ったいわゆるノンキャリアの外務省職員にも力点を置く。同時に、インテリジェンスと実際に採用された外交政策との繋がりに関しても探究する。最終的に、昭和戦前期の日本外交史研究に新たな光を当てる。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は引き続き史料収集に取り組みつつ、前年度に研究報告をした昭和15、16年の時期の南進論と北進論の論文化を目指した。その過程で南進、具体的には南部仏印進駐を積極的に推進した外交官の存在を再認識させられた。具体的には松宮順、斎藤音次、蓑田不二夫などである。 また、国会図書館憲政資料室で新たに公開された「今井武夫関係文書」を閲覧した(今井は陸軍のいわゆる「支那通」の軍人)。その結果、外務省が情報活動で利用し、カヴァーネームを付していた中国人の情報源(エージェント)からもたらされた情報の一部が今井にも渡されていたことが分かった。外務省の対中情報活動と陸軍の繋がりを示している。付言すると、今井文書中にある当該外交電文は、管見のかぎりにおいては、外務省外交史料館にも現存しない貴重なものと思われる。 外務省が陸軍の今井に情報を流していたことでも看取されるように陸軍の影響力は大きい。その陸軍の情報活動については「日米開戦以後の陸軍の情報活動とその影響」と題して防衛省防衛研究所戦史研究センターの戦争史研究会で報告した。 平成21年の拙稿で(「「在外武官(大公使)電情報網一覧表」にみる戦時日本の情報活動」)、駐日スイス公使の本国宛電信がドイツにより傍受解読された後、日本陸軍に渡されていたことを指摘した。更に、その解読情報に登場する軍部批判を展開する氏名不詳の重光葵外相の相談役である外交官を堀田正昭(欧米局長、イタリア大使等を歴任)である可能性が高い、と諭じた。報告では、令和5年に刊行された『駐日スイス公使がみた第二次世界大戦―カミーユ・ゴルジェの日記』などを用い、前記解読情報の匿名の外交官が堀田正昭であることを再確認した。併せて、日本陸海軍が行っていた米国国務省電の解読についても言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は刊行されたものはなかったが、研究報告を2件することができ、それなりに成果を挙げられた。海外での史資籾調査は時間の関係上行えなかったが、国内での調査は継続して行った。 研究最終年にあたる翌年度以降に活字化される予定の論考の準備が大いに進展した。史資料の調査収集にある程度目処をつけ、研究成果をまとめる時期を見極めるに至った。 研究報告は主として日本軍を中心に扱ったものであった。しかし、陸軍の南進政策を扱った研究報告をする過程の史料調査において、外務省の南進論を主張するグループの存在感を改めて確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、南進論を唱えた外交官の動きをより精緻に把握していきたい。 1939年の第二次欧州大戦勃発、翌1940年のナチスドイツによる西方攻勢後、日本国内で南進論が活発化した。その過程で外務省革新派と呼ばれるグループの一部が声高に南進論を唱えたことはよく知られている。先行業績では、比較的、東京の外務本省にいる人物の思想や動向に注目が集まる傾向も見られた。そこで、本省だけでなく出先の外交官がどのような考えを持っていたのか、更には、いかなる情報活動を行っていたのかを調べる。この点は既に束南アジア出張、偵察に赴いた参謀本部作戦課のメンバーがシンガポール総領事と現地で接触し、マレーやシンガポールの軍事情報の報告を受けていたことなどが戦後の回想等の二次史料で指摘されている。シンガポール、パタヴィア等の各地の総領事館(あるいは単なる領事館)によるこの種の軍事情報の収集を可能な限り一次史料で裏付け、軍側の情報関連の史料と付き合わせたい。 本省においては、南部仏印進駐に至る過程で、枢軸派寄りの外交官がどのような動きを見せたかを再検討する。海軍側の史斜にも、昭和16年初頭に南部仏印進駐に慎重な海軍側を非難し、早期の進駐を求める外交官がいたことが示されている。動向を追跡したい外交官は、具体的には松宮順、斎藤音次、東光武三、仁宮武夫などである。これらの人物は一定程度、先行業績でも論じられてきた。しかし、重要人物であるにも関わらず比較的等閑視されてきた外交官としてサイゴン総領事などを務めた蓑田不二夫があげられる。蓑田も対象としたい。 また、当然のことながら、これまでの調査をまとめて論文化する作業を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)